LOGIN私と親友は同時に天界の皇子のお気に召し、世妃として宮殿に迎えられた。 親友の彼女は上の皇子景河の妃になって、籠の鳥となった。 一方で、私は下の皇子景山の憧れだけの存在の身代わりとなった。 よりによって、皇子二人の心の中で潜んでいる高嶺の花は同じ人物だった。 人間である私たちが、天界の王子様に気に入られ、誰しも憧れの暮らしができたことは、天界の人々に羨望された。 しかし、このような暮らしが続いていたのは僅か三年の歳月だった。本物の高嶺の花が戻ってきたのと共に、私と親友の倖せな暮らしが終わりを告げた。 「我が先に仮死する。和葉もその後いい折で仮病して死んだふりをするのじゃ」 私は親友の提案に頷き、彼女と共に自分の死を偽って、人間界へ戻ったのじゃ。 高嶺の花がその連れと一緒に私たちの仮死事実を暴いた瞬間、従来冷静で自分の感情をうまく抑えてきた景河皇子は、親友を抱きしめていた。 そしてそっけなくて、感情の薄かった景山皇子は、私を宮殿に閉じ込め、毎日にように側についてくれた。 けれど、私と親友の彼女がその芝居を三年も待ち続けていたことを、彼らは知らなかった。
View More私は景山の懐に転がり込んで、衰弱に彼に微笑んだ。「そなたらが綾夏の仇を討ってくれぬ。ゆえに我がやるしか」「烏森殿は魔族と内通した。景山殿は、我を信じてくれぬか」血を吐き出した私の耳元に、烏森の悲鳴が響いた。「景山殿!其奴を信じてはならぬ!其奴は腹黒の悪女じゃ!景山殿を利用しておったのじゃ!景山殿を愛してなどおらぬ!」私は必死に景山の召し物を握りしてめ、再び血を吐いた。寝殿内で漂っていた微かな香りがの鼻に入ってきた。景山の見えていない隅で、私は烏森に一抹の笑いを見せた。寝殿ないで閉じ込められていた烏森は、ただでさえ苛立っていた。今になって、天界のものも皆、彼女が昔のあの洒落者の天女ではなくなり、落ちぶれたのを見破った。彼女の身辺の侍女を買収するのも、ちょろかった。嗅がせていれば、彼女が我を失われるようなお香を焚いていれば、彼女が確実に血迷う。烏森は再び、私のほうに飛びついたが、途中で景山に突き飛ばした。彼は嫌悪の表情で、顔を潰された彼女を見て、冷たく言った。「悪女め」「魔族と内通するのは、死に値する重罪じゃ」景山の緊張に満ちた呼吸音を耳にして、私は完全に気を失っていた。......再び目を覚ましたら、綾夏はすでに私の牀榻の前に座っていた。彼女の目は泣きすぎたせいか、ひどく赤かった。私が目を覚ましたのを見て、彼女を慌てて声に出て聞いた。「どう?具合は?」私は笑いながら、彼女の手を軽く撮んだ。「大事ない」綾夏が泣き止んだらと思えば、すぐに笑い出した。「成功したのじゃ」「烏森の寝殿から、魔族と内通した証の文が出てきて。其奴はもう牢屋に放り込んだのじゃ」「そして、王妃を刺し殺そうとした罪も、まとめて、咎められるそうじゃ」「天君の勅命によると、其奴は畜生として生まれ変わり、未来永劫、輪廻の苦しみを繰り返すのじゃ」私は頷きながら、ほっとした。脳天にぶら下がっている幔幕を見ながら、私は小声で言った。「綾夏、ここを離れようよ」「揚州に戻って、我らに相応しい暮らしをするのじゃ」綾夏はなんとなく躊躇っていた。「彼らは我らを見逃してくれまい」私はゆっくりと座り上がって、彼女の手を取った。「くれるのじゃ」......その夜、ことを全て処理済みの景山が
私は景山の寝殿内で軟禁され、外へ一歩踏み出すことも許されなかった。綾夏は自由に動けるが、景河が彼女の周りに見張り役をつけておいた。景河のそばにいる綾夏は昔のように笑顔を見せることがなく、引き換えに、日々愁容でいた。景河はもはやこの世に全ての最上級のものを綾夏に捧げる勢いで、彼女の愛情を蘇ろうとしたが、何の響きもなかった。一方で、景山はまでる新婚した頃のように、毎日私のそばにいてくれた。外出禁止の暮らしは天君の誕生会の暇で続いて、景山はその日で、稀なことに、我を連れて出かけた。烏森は痩せてしまって、彼女の顔色はさらに悪くなった。明らかなことに、彼女も自分はもう景山や景河がいつもそばで、守ってくれる存在ではなくなったことに気付いたのだ。そんなことに気付いた烏森の危機感がとびきり高まった。緊張感につられて、人は正気でないことをしでかす。たとえ神々であっても、例外はないのだ。烏森が再び私と綾夏の目の前で、水に飛び込んで私たちに濡れ衣を着せようとした時、私たちはただ冷静に彼女を眺めていた。烏森が水の中でもがいていたのを見て、綾夏はつい笑い出してしまった。「烏森藍璃殿、同じ手口はなんかも繰り返されて、観客はやがて飽きてしまうのじゃ」私は何も言わずに、何の迷いもせずに、蓮華の池に飛び込んだ。次の瞬間に、誰かが私の体を引き上げたのを感じた。私を岸辺に運んだのは景山だった。彼は緊張そうに、私を心配しているような口調で聞いてくれた。「大事ない、和葉?」私は頭を振って、沈黙を選んだ。池に沈んでいた烏森がやっと、侍女や衛兵たちに引き上げて、救われたのは溺水で死にかけていたところだった。彼女は猛烈に咳をして、水を吐き出した後、震えたいた指で私と綾夏を指した。彼女が何を言い出すのを待たずに、景山の顔色がすっかり曇った。「烏森殿、そなたが自省して収斂するのを余は期待しておった」「和葉は余の妻じゃ。変なちょっかいを出されて、濡れ衣を着せられては困る」「余は烏森殿の思っておるほど、愚かではあるまい。そなたの手の内をよく知っておる」そう言いながら、彼はついでに側近に命令を下した。「烏森藍璃は王妃を陥れ、池におちらせた。そのものを捉えて、寝殿に閉じ込め!一歩でも外に出ることは許さん!」景河が駆け
庭の外にいた侍衛の瀬戸茂は、物音がしたので駆けつけた。景河や景山を見た突端、彼はなんの迷いもせずに刀を抜いた。茂は元々私と綾夏が路頭で拾った乞食の若造だった。飯をやる口実として、布地の店で働かせてもらった。けど、その一年半で、彼は凄まじい武芸を披露してくれた。そのため、私と綾夏は一層のことに彼を側近の侍衛にした。茂は眉を顰めて、景山と景河に刀を向けた。「そなたたち、何者じゃ?主様を離せ!」景河は鼻で笑った。「人間如きに、名乗る名がない」茂も駄弁が嫌いなもので、彼らに刀を刺した。景山は一撃で、かかってきた茂を飛ばした。倒れた茂は、血を吐き出した。私は心配で、思わず声に出た。「茂!」景山は私の手首を取った。彼の口振りには、何となく怒りが潜んでいた。「和葉はその男が心配か」私は冷たくを景山を一瞥した。「当たり前じゃろう?瀬戸茂は我の侍衛じゃ。心配して当然じゃ」手首を締めていた力がどんどん強くなっていくを感じて、私は声をあげるのを忍耐強く我慢した。一方で景山は怒りのあまりにかも知れぬ、笑い出したが、その笑い方は実に気味悪かった。「そうか。月島和葉、そなたはなお余の王妃じゃ!それだかはくれぐれもお忘れないように」そう言って、彼はもう一度術で、茂に一撃を打った。気を失った茂を見て、私は必死に景山の手を握った。「茂を見逃してやってくれ!」景山は伏し目で私のほうを見た。「余と戻れば、其奴は死なないのじゃ」私は力を少し入れて唇を噛んで、話そうとした突端、側にいた綾夏は再び逃げようとして、景河に気絶させた。綾夏のところへ行こうとした私に、景山は意味深な口調でそう言った。「余と戻ろう」「さもなくば、そなたはこの一生、再び綾夏殿に会うことはなくなりましょう」体中の力を完全に抜かれたように、私は項垂れて、景山に私の手を握らせた。前に歩いていた景山の後ろ姿を見ながら、私は苦笑した。「景山殿、そなたは何故かようなことを?」「景山殿にとっての我は、身代わりにすぎまい。烏森藍璃殿こそが、日夜恋しがっておるお方なのでは?」「なれど、何故我にさように拘っておるのじゃ?」景山は足を止めて、少々間をおいた。そして、振り向いた彼は、横から私はお姫抱っこで持ち上げた。温もり
腹一杯食べて、遊び三昧の日々が一年半ぐらい続いたそんなある日のことだった。私は久ぶりにあの夢を見た。夢の中での私と綾夏は、まだまだ戦塵で蓮華の村まで流浪してきた二人の孤児だった。幼い頃から、私と一緒に育てられた綾夏は、私と血の繋がりのある身内ではなかったが、まるで家族のよう存在だ。私は彼女を連れて、ここまで逃げてきて、最後には村の前で気を失って、倒れていた。再び目を覚ましたら、私たちは村の者たちみんなに世話をしてもいながら大人になった月島綾夏と月島和葉となった。幸せで平和な暮らしは、私と綾夏が’十九歳になる日まで、続いていた。その時、山に薬狩りをしに行った村人が、体中傷だらけの女子を拾ってきた。その女子と言うのは、紛れもなく烏森藍璃だった。村人たちは、珍しい薬や体の栄養になれるものを無数に潰して、やっと彼女を蘇った。そして、死を逃れた彼女に衣食住を与え、暖かく接してあげた。けど、そんな村人に対す彼女の恩返しと言うのが、こんな一言だった。「卑しきものは、天女の落ちぶれた姿を見てはならぬ」そんな一言のために、村人の全ては一夜で変死した。全部合わせて、合計五十八人の命だった。私と綾夏は、村での最年長者楓婆ちゃんに守られ、寝床の下に隠され、一命を取り留めた。全てを整えた烏森は、合図を送って天界のものを引きつけた。綾夏は外に出て、天界のものに全てを告げて正義を侍してもらおうとした。私は必死と彼女を止めた。そして、烏森の潤んだ声が耳元で響いた。「この愚かな人間どもは実に不憫で忌々しいのう。妾の一命を助けた恩返しとして、金銀財宝を与えてやったものを、村人はそれだけで満足できず、妾から手持ちの全てを奪おうとした......」「ここをさって、妾は今宵で村人に災いが下されるのを感知して、救えようと駆けつけたが、手遅れのようじゃった......」寝床の下にあった隙間越しに、私は誰かが烏森を慰めたのを見た。「思い煩うことはございませんぬ。人間の命数は定められたものじゃ。藍璃天女様が自分を責めることなどおりませんぬ」「天女様からの金銀財宝をもらえただけで、もう至高の福なんじゃ」もう一人の男の人も憤慨しながらこういった。「欲張りしすぎた村人の報いじゃ」「自業自得だけじゃ」「この村人たちも所詮