街頭ビジョンに映るVTuber達に憧れた一人の少女がいた。お世辞にも良いとは言えない彼女の家庭環境では憧れに手を伸ばすことすら叶わない。 しかし、それは彼女が諦める理由にはならない。家を出て就職し、プライベート全てを憧れに近付くための自己鍛錬に費やした。 いくら彼女に才があろうと努力をしようと両親から逃げ続けている以上は表舞台には上がれないし、憧れ続けたVTuberにもなれない。彼女は最期までVTuberにはなれず、来世を夢見て死んでいった。 これは、そんな彼女の来世が舞台のシンデレラストーリー。 ※#〇.5の回は本編に直接的には関わりません。でも、読むとキャラ達のいる世界のことをもっと知れます。
View More当時はまだ幼稚園児だった私は、街頭ビジョンの中の彼らの輝きに心を奪われてしまった。恋焦がれてしまった。
ある者は圧倒的な歌唱力で他者の心を揺さぶった。ある者は七色の声を駆使してありとあらゆる魅力的なキャラを演じた。ある者は自らVTuberとしての身体を作成し数多くのVTuberの生みの親にもなった。
彼らはある種の劇物だった。まだ純粋で未熟な一人の少女の行く末を容易く狂わせてしまうほどの。彼女は天に手を伸ばし、止まることなく歩み続けた。
だが、過ぎたる望みはその身を亡ぼす。それでもかつて憧れ、好いた彼らが熱中するものを少しでも知るために彼女は進む。
好きな人の好きなものを知りたい。自分もそれを好きでいたい。そんな乙女心が彼女の原点なのかもしれない……。
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私はいつかVTuberになることを夢見て、自らの人生の全てを推したちがしていた数多くのことを極めるためにプライベートを費やしてきた。楽器に作詞作曲、小説、ダンス、歌。数え切れないほど多くのことに挑戦し続けた。推し全員の真似をしたいっていうのはちょっと欲張りだったかなぁ……。いや、ファンたるものそのくらいの気概がないといけないよね!そんな自分の人生に後悔はない……と言ったら嘘になる。私はこれまでいろんなものを犠牲にしてきたから。好きな人と出会い、交際し結婚して子供を産み、夫婦で力を合わせて育て上げる。そんな人並みの幸せというものにも触れてこなかった。そんな幸せの中にはこの憧れを超える何かとの出会いはないにしても人として成長する機会があったかもしれない。表現の糧になったかもしれない。
でも、ここまで来れば後戻りは出来ない。そもそも死ぬ間際にこんなこと考えたってしょうがない。あとは来世までこの記憶を持ち越すのみ!魂に思いを刻め!この人生を無駄にしてなるものか。
文字通り人生を懸けた修行回が今日、終わる。
あぁ……楽しみだなぁ。来世はどんな人と出会えるだろう。VTuber……なれるといいな。
私はこの目標のために人生をかけてきたんだもん。この経験を、磨いた技術を、想いを忘れるわけにはいかない。
私の目標を応援してくれる人もたくさん……かは置いといていてくれた!
だから私はこの意志を、記憶を来世に繋げて絶対に夢を……
叶えるんだ!"ブーーブーーブーーブーー" ん?なんかまた電話かかってきたな。ん?社長からじゃん。どしたんだろ……「社長〜どうしたんですか〜?」『いやおい!電話切るなよ。何を裏でコソコソ計画してるのかを話せって言っただろ?逃げるんじゃあない!』 あぁぁぁぁぁぁ!!や〜べっ!完っ全に忘れてた!そういやそのための電話だったじゃん!そりゃあ怒られますわ。だって客観的に見たら私、言いたくなくて逃げたやつだもん。「あ!いや〜なんか忘れてるなぁとは思ってたんですよ。その何かが思い出せなかっただけで……」 頼むしゃっちょ!ほんとなんだって!見てよこの曇りなき眼を!あ、これ通話だから見えないんだったわ。『そうかそうか……その引っ掛かりを無視して電話切って今があると。なるほどなるほど、いや忘れんなよ。それが本題だぞ?私はそれを聞き出すために君に電話をかけたんだ。それを何勝手に電話切ってんだよ休暇取らすぞ。』 恫喝だ恫喝!パワハラだパワハラだー!いや待てよ?いつまで経っても休まないやつに休めと強く言うのはパワハラなのか?うーん……どうなんだろう。労基になんて言えばいいの?休みたくないのに休暇取れって言われましたって?ダメだ!まともに取り合ってくれる気がしない!「ひぇっ!す、すいませんでした!以後気を付けます!」 くっ……ここは屈するしかないのか!だけど覚えとけよ!必ずどこかでやり返してやるからな!不意打ち名指しASMRとかで尊死させてやんよ!フハハハッ!『で?さっさと企んでることゲロって楽になっちまえよ。』 いや、ゲロるとかヤのつく人かよ……「なんでそんなの今日口悪いんですか?元々次事務所行った時に言うつもりではあったので普通に言いますけども。」
"ブーーブーーブーーブーー"「ん?あぁ電話だ誰からだろ……って社長!?え?私なんかしたっけ?いやでも配信事故なんてまだやらかしてないし……まさか炎上!?でも心当たりないし。いやでも悪い話とは限らないし、とりあえず出るかぁ……」"ブーー……"「はい、神崎由良です。」『やぁやぁやぁ、由良さんこんにちは。私はピオーネ社長の葡萄拓実です。いつも配信見てますよ〜?いや〜安心しましたよ。」 あれ?私の勘が正しければなんだけど……もしかして社長怒ってます?「いや、すいませんなんだか心配かけちゃった見たいで……」『いやね?中々電話に出ていただけないのでこのまま居留守使われちゃうかな〜って心配していたんですよ。実は心配ごとは他にもいくつかありましてね。それじゃあ……何を裏でコソコソ計画してるのかをぜーんぶここで話してもらいましょうか?』 うーわっ完っ全に怒ってらぁ。しかも夜遅く家に帰って来た時に心配したのよ!って叱られる時のあれだ!ていうかなんでバレた?どこからだ?今度事務所行った時に直接言おうと思ってマネちゃんにもまだ言ってないのに。とりあえず一回知らん顔しとこ。「ちょ〜っと何の話かよくわかんないっすね。」『いやいやいや、誰にでもわかるような簡単な話ですよ。最近、作業量……増やしてますよね?見たら分かるんですよ。忙しそうにしてるのも。疲れ溜め込んで本調子じゃなさそうなのも。君の初配信の時のもそうだけどさ、バレてるからね?』 はい、その節は誠に申し訳ございませんでした。「あの……そういうのって普通マネージャーとかから言われません?」『普通?そんなの関係ありませんよ。この会社じゃ私がトップなんですから。もちろん裏でマネージャーとこの件について軽く話しましたよ。そしたら彼女は私から言われ前に自分が真っ先に気付いて止めるべきだったと言ってました。私の話が終われば彼女からも話があると思います。』 え?私、この後もう一回怒られるの?いや、マネちゃんならきっと怒らない。怒らずなたぶん泣かれる。正直そっちの方が私的に効く。前世の年齢込みだと孫くらいの年齢の子に泣かれるのめっちゃ効く。「じゃ、じゃあ私はなんで社長直々にお説教されてるんです?マネちゃんからだけでいいじゃないですか。」『それは私が由良さんをこの事務所に誘ったからです。私の誘いでうちの事務所に所属した由良
「血迷ってないよ?あれしようかなって!色んな声出せる人……いわゆる多声類さんがショート動画で一人合唱してるやつ。それをね、VTuberとしての名義を分けてやってみようかなって思ってるんよ。」「それはさすがに転生のようで転生じゃない。なんというかその……イロモノ枠過ぎない?」「……そ、それはちょっと否定できないね。でもさ、問題点と言えばそのくらいじゃない?」「ちょ〜っといいかな、個人VTuberさん呼んじゃダメなの?」「クリエイターが名義分けるのなんてありふれてるしね。ライブでハモるのは無理だけど、パート分けすれば数人で歌ってる風にできるしね。ハモリたければ動画でやればいいし。割と完璧では?」「あの〜もしも〜し!」「ん?どしたの?」「普通に個人勢さん呼んでやれば良くないかなって。ていうかVTuber夏祭りとかに応募すればいいじゃないですか。なんでそんなよく分からない方向に突っ走るんです?」「あぁ……なんで初手で主催者想定だったんだろ。タレントが一人でVTuberの事務所としては弱小も弱小なのに。」「んじゃ、とりあえずV祭に応募するってことで〜。伝手もそこで手に入れよう!最悪時間さえ稼げば事務所がなんとかするでしょう!そんじゃかいさーん!」「「「「「「ういーっす。」」」」」」「なんか増えてね?」
「これについて考える上での大前提として共有したいのがさ、うちの事務所ってVTuberメインの事務所じゃないのよ。部門はあるけど、現状私専用の箱と化してる現状なわけよ。」「というと?」「わかんない?つまりさ、VTuberとしての後輩が事務所に入ってこない限り必然的にソロライブになるってこと。」「でも普通に先輩方と一緒にライブすればよくない?」「見たことあるでしょ?そういうことやってVTuberと主催が燃えてるの。今の世間の認識じゃまだ難しいんよ。活動の中手間知り合った個人VTuberさんを呼ぶ方がまだ現実的かなぁ……。」「いやいやいや、そうじゃなくてね?別にVTuberとしてじゃなくて、生身で一緒にライブすりゃいいじゃん!顔は……完熟マンゴーの箱で隠せば?ほら!某ガールズバンドアニメリスペクトで!」「たしかに芸能事務所だしね、うちって。芸能事務所に所属してる顔出しナシの配信者一人が顔を出したところでとやかく言われる筋合いないしね。それに私可愛いし!V体もまんま私だし!うん、コスプレで出ようライブ!フハハハッ!私こそが事務所公式コスプレイヤーだー!」「中の人が公式コスプレイヤーとか強すぎる。でもまぁ、これで解決かな?」「いやダメだ!解決してない!VTuberとしてもライブしたい!」「欲張り言うな!それは私たちが境目をぶち壊していけばそのうち行けるって!そうだなぁ……あの人ってVTuberだったの?って言われるくらいになれば許されるよ!」「あの……それは果たしてVTuberと言えるんですかね。」「有名人がVTuberになったよくらいのノリじゃないですかー!最近よくあるノリじゃん!違うんだって!そういうのじゃないの!」「欲張りでこだわり強いやっちゃのぉ……じゃあ後輩を錬成する?でも人体錬成はコストがなぁ……。てか真面目な話、現状うちの部門にスタッフ全然いないからたぶん無理だよ?」「そ、そうだ!私が増えればいいんだ!」「何言ってんだこいつ血迷ったか……」
「前世の私はいつかVTuberになることを夢見て、自らの人生の全てを推したちがしていた数多くのことを極めるためにプライベートを費やしてきた。」「いつかって今さ!」「はぁ……で、私たちは事務所にも所属して活動の幅が広まったでしょ?となると事務所を余すとこなく有効活用するべきだと思うんだよね。やりたいと思ってることを改めて整理して自力で何とかなること、要相談なこと、事務所にガッツリ任せちゃうことを分類しようってのが今回の会議の目的なわけ。みんなここまで理解できた?」「なんと……なくはみたいな?」「私も大丈夫だよ!」「俺わかったぜ!一回自分の中でやりたいことを整理してから事務所と打ち合わせするんだろ!」「僕は当然問題なしさ。」「なんか知らん一人称のやつといるはずねぇ方がいらっしゃるけど今はスルーでいいよね。」やりたいことリスト・楽曲制作・歌い手活動・俳優活動・声優活動・モデル・同人活動・ダンス・イラスト制作・ライブ・オフイベ「とまぁざっとこんな感じ?」「パッと見た感じだと抜けはない〜かな?」「楽曲制作と歌い手活動に関しては各種媒体で配信するかとか色々あるし事務所に話を通しておこうかな。」「はいはーい!うちのリスナーのぬなめさんにも相談したらいいと思いまーす!一人のVTuberとしてだけじゃなくてさ、創作者としての繋がりもしっかり維持できれば後々やれること広がるじゃん?それって最高だよね!」「あぁ〜それなぁ……。私も一応それも検討したんだけも今はまだ無理かなって。あの人枠ではあんなだけど、れっきとしたプロなわけじゃん?フリーだからある程度融通は効くと思うけど仕事も私生活も結構忙しそうなんだよね。うちの事務所所属でもないし、一旦私と事務所とで話してある程度落ち着いてからになると思う。」「なるほどね。じゃあ次は俳優、声優、モデルか。これは事務所ぶん投げで大丈夫そうだよね。レッスンとかの手配もマネちゃんがスケジュール調整しながら上手いことやってくれるだろうし。同人とイラスト制作はまぁ個人的に勝手にやるじゃん?ダンスもレッスンを予定に入れてもらうだけだしね。問題は……」「「「「ライブとオフイベかぁ……」」」」
ちょっと待ってほんとに思い出せないんだけど!二ヶ月前の私ならいけたけど今の私じゃ無理だ!「え〜っとですね、それじゃあここら辺で配信を終わろうかなと思います。ちょっと待って普段配信をなんて言って終わってたっけ!まぁいいや、おつゆら〜!」――終わるの早くない?まだ配信始めてから……え!?3時間!?時間経つの早くない?――だってたったの二話分だよ?絶対短いって!3時間とかそんな長いこと配信してるわけないじゃん!――そう言ってやるなよ。きっとほんとにド忘れして終わりどころを見失ったから強引に〆に入ってるんだ。――なんだお前↑は!枠主の回しもんか?――ふっ……バレてしまっては仕方n…… この配信は終了しました。◇◇「毎度恒例脳内会議のお時間でーす!いぇーい!パチパチパチ〜!」「由良1、質問です!」「なんだね由良3。」「全開の脳内会議っていつやったっけ。」「う、うおぉぉぉぉぉぉぉお!!!オラの力を全部持ってけぇ!!これで、全けぇだァ!!」「由良5は黙ってて。」「うっす。」「前回はそうだなぁ……あれじゃない?#8とかだと思うぞ。みんな忘れてると思うし、暇なときにでも遡って見てくれ。」「わ〜おダイマ!いっそ清々しいな!」「え〜改めまして、私の第2の人生の脳内会議の司会進行はですね。私、天才アイドルの由良ちゃんが勤めさせていただきます!」「わぁ〜懐かし!なんかやったねこんなの!でもあの時はたしか脳内実況だったかな。」「わお!有料話故になかなか遡れない人への優しい配慮!流石です!」「おいコラやめろ!ていうかそろそろ真面目な話に移っていこうじゃないか。本題の……今後の活動の方針についてだ。」「まぁたしかに現状でもそれなりに目標は達成出来るだろうし、新たに目標というか指針を決めないとこのままズルズル私の人生という一つの物語がダレちゃうよね。」「そういうこと!私は前世での全てを今世に賭けたわけだ。それなのになんだこの体たらくは。もっと必死になれよ私!」
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