悪女の指南〜媚びるのをやめたら周囲の態度が変わりました

悪女の指南〜媚びるのをやめたら周囲の態度が変わりました

last update최신 업데이트 : 2025-03-03
에:  結城 芙由奈참여
언어: Japanese
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20歳の子爵家令嬢オリビアは母親の死と引き換えに生まれてきた。そのため父からは疎まれ、実の兄から憎まれている。義母からは無視され、異母妹からは馬鹿にされる日々。頼みの綱である婚約者も冷たい態度を取り、異母妹と惹かれ合っている。オリビアは少しでも受け入れてもらえるように媚を売っていたそんなある日悪女として名高い侯爵令嬢とふとしたことで知りあう。交流を深めていくうちに侯爵令嬢から諭され、自分の置かれた環境に疑問を抱くようになる。そこでオリビアは媚びるのをやめることにした。すると徐々に周囲の環境が変化しはじめ――

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1화

1話 オリビア・フォードの憂鬱

婚約者である藤原和也(ふじはら かずや)は、融通の利かない杓子定規な男で、何よりも原則を重んじていた。

母の心臓発作が起きたあの日、彼は自ら車を運転して母を病院へ送ると言ってくれた。だが、道中は歩行者を優先し、車線変更も割り込みも一切せず、のろのろと病院へ向かった。

私がたった一言急かしただけで、彼は怒りに任せてハンドルを叩き、自分の信念を曲げるような真似をさせないでくれと喚き散らした。そして、私と母を車から降ろすと、そのまま走り去ってしまったのだ。

治療の最適なタイミングを逃した母が帰らぬ人となったその時、彼の秘書はSNSで新たな報告を投稿していた。

【親から結婚を急かされて大喧嘩しちゃった。勢いで、市役所に一番乗りで来てくれた人と結婚するって言ったら、なんと社長が時速百八十キロで車を飛ばして、十分で駆けつけてくれたの!免許取り消しになっちゃったみたいだから、結婚で報いるしかないよね!】

投稿された写真には、市街地での速度超過による反則金の通知画面が大きく写し出され、私の身の程知らずを嘲笑っているかのようだった。

私が夜通し帰らなかったことに気づき、ようやく彼から慰めの電話がかかってきた。

「雪菜、SNSを見たんだろ。お母さんの病気は医者が治せるが、琴音が間違った相手と結婚したら一生を棒に振ることになる。優秀な人材が道を踏み外すのを、黙って見ていられるわけがないだろう?

俺が気づいていないとでも思っているのか?お母さんが仮病を使って結婚を急かしていることくらい分かっている。後で琴音の親をきっちり説教して、間違った考えを正したら離婚する。それからお前と結婚すれば、お母さんも計画通りになって、病気なんて綺麗さっぱり治るはずだ」

私は火葬場の炉の中で燃え盛る炎を見つめていたが、その瞳からはすでに光が失われていた。

彼は知らない。私がもう二度と、彼を必要としないことを。

火葬炉の中で揺らめく炎が、まるで私の心臓を焼き焦がしているかのようだった。

私は手を振り上げ、力任せに自分の頬を張り飛ばした。

もし私に免許があれば。もし和也を信じたりしなければ。母は死なずに済んだかもしれないのに!

電話の向こうで乾いた破裂音を聞いた和也は、私が癇癪を起こしてスマホを投げつけたのだと勘違いし、苛立たしげに言った。

「いい加減にしろ。琴音はお前が思い詰めるんじゃないかと心配して、わざわざ俺に電話をかけさせたんだぞ。お前たち、仲良くできないのか?」

仲良く、だと?

頬の熱い痛みが、私の意識をこの上なく鮮明に引き戻した。

一年前、和也は高校中退の藤原琴音(ふじはら ことね)を異例扱いで会社に採用した。私が少し疑問を呈しただけで、琴音は私を憎むようになった。

私が出張で八万円使ったのに八千円しか経費を落とさなかったり、私のプロジェクト企画書をわざと改ざんしてクライアントを激怒させ、私にその後始末をさせたりした。

そのたびに和也に訴えたが、彼は私が大げさだ、わざと難癖をつけているとしか思わなかった。琴音は真面目に仕事をしている、せいぜい善意が裏目に出ただけだ、と。

だが今日、琴音は嫌がらせのように、百枚もの結婚式の招待状の束を送りつけてきた。

新郎新婦の欄には、堂々と和也と琴音の名前が連名で記されており、それを見た母はショックのあまり心臓発作を起こしたのだ。

なのに和也は、どの口で私と琴音に仲良くしろなどと言えるのだろうか。

私は掠れた声で問い返した。

「私の母の命は、命じゃないの?」

電話の向こうは一瞬沈黙したが、和也は最後まで彼女を庇うことを選んだ。

「お母さんが仮病で結婚を迫ってきたのを、俺が承諾しただけでも十分顔を立ててやってるだろう。琴音が気を利かせて招待状の準備をしてくれたのに、ちょっとしたミスをいつまでもネチネチと責めるつもりか?名前を書き直せば済む話だろ」

私は自嘲気味に笑った。

「ええ、分かったわ。もう二度と彼女とは喧嘩しない」

琴音と和也を取り合い、何度も尊厳を踏みにじられる日々には、もううんざりだった。

彼は安堵の息を吐いた。

「ああ、物分かりが良くて何よりだ。早く帰ってこい。そのうち一緒に、お母さんの様子を見に行ってやるから」

機嫌を直せたと思ったのか、彼は電話を切った。

だが私はすぐさま、国際電話をかけた。

「もしもし。私、そちらに転職します」

電話の向こうで、人事担当者は驚きと喜びに声を弾ませた。

「本当ですか!雲川さん、我が社はいつでもあなたを歓迎いたします!」

大学を卒業した時、この海外の大手企業から内定をもらっていた。

だが和也が私の腰にすがりついて泣きながら、遠距離恋愛は耐えられないと懇願したため、私は歯を食いしばって残り、彼の起業を支える道を選んだのだ。

その後も大手企業から何度も誘いを受けたが、ずっと丁重に断り続けてきた。

今なら、何の未練もなく離れることができる。

ずっしりと重い骨壺を抱えて家に帰った頃には、すでに午前四時を回っていた。

家の中は煌々と明かりが点いており、眩しさに思わず手をかざして目を細めた。

和也はソファに深く沈み込み、スマホをいじりながら誰かとメッセージをやり取りしていた。持て余すほど長い脚が、窮屈そうに投げ出されている。

私の姿を認めても、その口元の緩みは収まらないまま、機嫌よさそうに声をかけてきた。

「遅かったね。お母さんの具合はどう?」

彼はよほど機嫌がいいのか、気前よくアプリで二千円を送金してきた。

ふと何かに気づいたのか、いつもの癖で「貸付金」とメモを添えた送金を取り消し、再度送り直してきた。

「今回は貸しじゃないよ。お母さんに何か栄養のあるものでも買ってあげて。俺からの気持ち」

胸がぎゅっと締め付けられ、ひどく苦いものがこみ上げてきた。

和也は昔から「金銭感覚はきっちり分けるべきだ」と言って、私との間でも一円単位で計算し、送金のたびに必ず「貸付金」という名目をつけていた。

交際して七年、気づけば私は彼に多額の借金を背負わされていることになっていた。

昔はそんな彼の几帳面さも面白いと思っていたけれど、今ならはっきりと分かる。彼は一度だって、私を家族として見てくれたことなどなかったのだ。

私は送金の受け取りを拒否して、静かに口を開いた。

「今日帰ってきたのはね、別れようって伝えるためよ」

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蘇枋美郷
蘇枋美郷
面白かったー!頭の良い女性がクズ家族とクズ婚約者を成敗して、最後に一人勝ちするお話。そこに辿り着くまでに、女の友情や偶然出来た男友達の知恵や力も借り、媚を売るのをやめて自分で道を切り開いていく様は痛快だった。(媚を売らなくなった後のクズ達の変わり方も面白かったわw) マックス君は頑張れ!(笑)
2025-10-19 08:57:43
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79 챕터
1話 オリビア・フォードの憂鬱
 20歳の子爵家令嬢――オリビア・フォード。背中まで届くダークブロンドの髪に、グレイの瞳の彼女は貴族令嬢でありながら地味で目立たない存在だった――――7時半いつものようにオリビアはダイニングルームに向って歩いていた。途中、何人かの使用人たちにすれ違うも、誰一人彼女に挨拶をする者はいない。 使用人たちは彼女をチラリと一瞥するか、これみよがしにヒソヒソと囁き嫌がらせをする者たちばかりだった。「いつ見ても辛気臭い姿ね」突如、オリビアの耳にあからさまな侮蔑の言葉が聞こえてきた。思わず声の聞こえた方向に視線を移せば、義妹のお気に入りの2人のメイドがこちらをじっと見つめている。「あー忙しい、忙しい」 「仕事に行きましょう」目が合うと2人のメイドは視線をそらし、そのまま通り過ぎて行った。「ふん、この屋敷の厄介者のくせに」一人のメイドがすれ違いざまに聞えよがしに言い放った。「!」その言葉に足が止まりメイド達を振り返ると、楽しげに会話をしながら歩き去っていく様子が見えた。「はぁ……」小さくため息をつくと、再びオリビアはダイニングルームへ向った―― ダイニングルームに到着すると、既にテーブルには家族全員が揃い、楽しげに会話をしながら食事をしていた。「そうか、それでは騎士入団試験に合格したということだな?」父親が長男のミハエルと会話をしている。「はい。大学卒業後は王宮の騎士団に配属されることが決定となりました」「そうか、それはすごいな。私も鼻が高い」「お兄様、素晴らしいですわ」ミハエルとは腹違いの妹、シャロンが笑顔になる。 そこへ、遅れてきたオリビアが遠慮がちに声をかけた。「おはようございます……遅くなって申し訳ありません」しかし彼女の言葉に返事をする者は誰もいないし、椅子を引いてくれる給仕もいない。テーブルの前には既に食事が並べられており、オリビアは無言で着席した。 食事の席に遅れてくるのには、理由があった。それは彼女だけが家族から疎外されていたからだ。 父親からは疎まれ、3歳年上の兄ミハエルからは憎まれている。義母からは無視され、15歳の異母妹からは馬鹿にされる……そんな家族ばかりが集まる食卓に就きたいはずはなかった。 そこで出来るだけ遅れて現れるようにしていたのである。オリビアが静かに食事を始めると義母がよく通る声で自慢
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2話 オリビアの現状
「それでは失礼いたします」朝食を終えたオリビアが席を立っても返事をするものは誰もいない。これもいつものことだ。オリビアは軽く会釈すると、そのままダイニングルームを後にした。廊下を歩くオリビアにすれ違う使用人たちは挨拶どころか、目を合わそうともしない。何故、彼女1人がこのような状況下に置かれているのか……それは彼女が、この屋敷では厄介者だったからだ――****オリビアの母は彼女を出産と同時にこの世を去った。愛する人を失った父と母親が大好きだった兄の喪失感は計り知れず、亡くなった原因をつくった怒りの矛先がオリビアに向けられたのだ。2人はオリビアと関わることを極力避け、彼女はメイドの手によって交代で育てられた。まだ幼かったオリビアは自分が何故父からも兄からも嫌われているのか理解できなかったが、心無いメイドの言葉で理由を知ることになる。『オリビア様のお母様は、あなたを産んだことで、亡くなってしまったのですよ』母が死んだ理由を知ったオリビアは少しでも自分を好きになってもらうために、父と兄に一生懸命愛嬌を振りまいた。絵のプレゼントや、花壇から花を摘んで花束にして渡そうと試みたが、2人は冷たい視線を投げつけるだけで受け取ってくれることは無かった。結局オリビアはプレゼントを渡すことは諦め、せめて2人と話をするときは笑顔になろうと決めた。たとえ相手にされなくても笑顔でいれば、いつかきっと2人は私を好きになってくれるはず――!そんな未来を思い描いていた矢先、父の再婚話が浮上したのである。相手の女性は当時まだ20歳になったばかりの男爵令嬢。父は彼女と再婚し……2年後、オリビアが5歳の時に異母妹となるシャロンが誕生した。 オリビアは妹の誕生に喜び、仲良くなるためにシャロンに近づいた。しかし、元からオリビアを良く思っていなかった義母がそれを許すはずなど無かった。徹底的にオリビアを遠ざけ、シャロンの前で罵倒する。そして見て見ぬふりをする父と兄。当然。シャロンもオリビアを馬鹿にするようになってしまったのだった――****「ふぅ……やっぱり自分の部屋は落ち着くわね……」部屋に戻ってきたオリビアはため息をつくと大学へ行く準備を始めた。彼女は現在、エリート貴族のみが通うことの出来る大学へ通っている。この大学は兄のミハエルすら通えなかった名門大学であり、そ
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3話 親友
 石畳の町並みを赤い自転車に乗って、颯爽とペダルをこぐオリビア。大学までの道のりは自転車で片道30分。決して近い距離では無かったが、御者の顔色を伺いながら馬車に乗せてもらうよりも余程気が楽だった。何より風を切って自転車をこぐのは気持ちが良い。いつものように正門を自転車で通り抜けると、学生たちの好奇に満ちた視線が向けられる。はじめはその視線が気まずかったが、今ではすっかり慣れてしまっていた。正門の隅の方に自転車を止めると、前方から友人のエレナが手を振って近づいてきた。彼女はオリビアの自転車に興味を持ったことがきっかけで友人になれた一人でもある。「おはよう、今日も自転車で通学してきたのね?」「ええ、だってとても良い天気じゃない。多分、この様子だと雨は降らないはずよ」空を見上げれば、雲一つ無い青空が広がっている。「それじゃ、教室に行きましょう」「ええ、そうね」エレナに誘われ笑顔で返事をすると、2人で校舎へ向って並んで歩き始めた。「あのね、オリビア。私も実はあなたにならって自転車を買ったのよ」「え? そうなの? それは驚きだわ」「これも全てあなたの影響ね。ようやく少しずつ乗れるようになってきたところなの。やっぱりいつまでも、どこかへ行くのに、御者に頼るのっていやだったのよね。少しは自立出来るようにならないと」「……そうね」オリビアは曖昧に返事をした。家族関係が良好なエレナには自分の置かれた境遇をどうしても言えなかったのだ。(家族や使用人たちから冷遇されているので、馬車にも乗りづらくて自転車を使っているなんて絶対エレナには言えないわ。もしそのことを知れば、きっと気を使わせてしまうもの)「そう言えば、来月は秋の学園祭ね。後夜祭はダンスパーティーがあるけれど、パートナーはギスランと参加するのでしょう?」不意に話題を変えてくるエレナ。ギスランは同じ大学に通う同級生であり、親同士が決めたオリビアの婚約者でもあった。「ギスランがパートナーになってくれるかどうかは……まだ分からないわ」オリビアの顔が曇る。「あら? どうしてなの?」「それ……は……」オリビアはそこで言い淀む。なぜならギスランはここ最近、急激に大人っぽくなった異母妹のシャロンに夢中になっていたからだ。オリビアに会いに来たと言っては、シャロンと2人だけでお茶を楽しむような関
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4話 悪女? の登場
「何を怒ってらっしゃるのですか? ディートリッヒ様」侯爵令嬢アデリーナは真っ直ぐにディートリッヒを見つめている。「お前は俺が何故怒っているのか分からないのか!?」ディートリッヒはアデリーナを指さした。「ええ、分かりませんから尋ねているのです。それはさておき……ディートリッヒ様」キッとアデリーナはディートリッヒに鋭い目を向ける。「な、何だ?」「いくらなんでも、人を指差すのはどうかと思いませんか? 礼儀という言葉を、もしやご存じないのでしょうか?」「何っ! おまえ、誰に対してそんな口を叩くんだ! 仮にも俺は……!」「ええ、ディートリッヒ・バスク侯爵。私の婚約者ですわよね? それなのに何故でしょう? 私よりも、そちらの令嬢と親しげに見えるのですが」そして栗毛色の女子学生を見つめた。「こ、怖い! ディートリッヒ様!」女子学生は咄嗟にディートリッヒの背後に隠れた。「大丈夫、俺がついている。サンドラ」サンドラと呼ばれた女子学生を慰めるように髪を撫でると、再びアデリーナを指さすディートリッヒ。「そんな目付きの悪い目で睨みつけるな! サンドラが怖がっているだろう!」「別に睨みつけてなどいませんわ。私は元々このような目つきですから。ですが先ほども申し上げましたが、あまり2人きりで学園内を歩き回られないようにお願いいたします。一応、私とディートリッヒ様は婚約者同士なのですから」「な、何だと……大体、お前と俺は親同士が勝手に決めた婚約者なだけであって、お前のことなんか認めていないからな!」「別に認めていただかなくても、私は一向に構いませんが?」「な、何だって!? 全く本当に可愛げのない女だ。サンドラ、あんな女は放っておこう」「はい、ディートリッヒ様」ディートリッヒはサンドラの肩を抱き寄せると、去っていった。「……全く、呆れた男ね。私達の婚約は覆すことなど出来ないのに」アデリーナは気にする素振りもなく、踵を返し……。「あら?」ことの一部始終を物陰から見ていたオリビアとエレナに鉢合わせしてしまった。「「あ……」」3人の間に気まずい雰囲気が流れる。「あなたたちは……?」怪訝そうに首を傾げるアデリーナ。すると――「た、大変申し訳ございませんでした! 中庭で大きな声が聞こえたので、つい何事かと思って……決して覗き見をしようとしていたわけ
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5話 婚約者ギスラン
 その日の昼休みのこと――オリビアとエレナが大学内に併設されたカフェテリアで食事のお茶を飲んでいるときのことだった。「え? 何て言ったの? オリビア」ココアを飲んでいたエレナが首を傾げる。「だから、アデリーナ様とお近づきになるにはどうしたらいいのかと相談しているのよ」オリビアは紅茶を口にした。「お近づきになるなんて……あの方は4年生で、しかも侯爵令嬢なのよ? 私達みたいな子爵家の者が迂闊に近づけるような方じゃないわ。しかもね……」エレナは辺りをキョロキョロ見渡し、オリビアに顔を近づけてきた。「アデリーナ様って、気が強いことから……一部の女子学生たちから恐れられているの。どうやら悪女って言われているらしいわ」「悪女ですって!」驚きでオリビアの口から大きな声が飛び出す。その言葉に周囲に座っていた学生たちが一斉に2人に注目する。「ちょ、ちょっと! 声が大きいわよ! 周りに聞こえるじゃないの!」エレナが小声で注意した。「ごめんなさい。ちょっと驚いてしまって……でも、何故悪女と呼ばれるのかしら。自分の婚約者が他の女性と一緒にいれば注意するのは当然だと思うけど……」オリビアは婚約者と妹の仲が良いのに、咎めることが出来ない自分と比較する。「そう言えば、オリビア。今朝、ギスランが後夜祭のダンスパートナーになってくれるか分からないと言ってたけど……最近、どうしてしまったの? 以前は大学内で時々一緒に行動していたのに、最近はさっぱりじゃないの。もしかして何かあったの?」「それは……」エレナに今の自分の現状を説明しようか、迷ったそのとき。「あれ? その後ろ姿……もしかして、オリビアじゃないか?」不意に背後から声をかけられた。「え?」振り向くと、婚約者のギスランが友人たちと一緒にいた。「ギスラン!」婚約者から声をかけられたことが嬉しくてオリビアは立ち上がり、笑みを浮かべる。「ちょうど良かった。今度の休みに、またお邪魔しようかと思っていたんだ。都合は大丈夫そう?」「そうだったのね? ええ、勿論大丈夫よ」笑顔のままオリビアは頷き……次の瞬間、凍りつくことになる。「そうか、ではシャロンによろしく伝えておいてくれ」「!」オリビアの肩がビクリと跳ね、エレナの息を呑む気配が伝わってくる。「え、ええ。あなたが来るから家にいるようにってシャロン
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6話 婚約者との関係
――16時本日全ての講義が終わって帰り支度をしているオリビアに、エレナが声をかけてきた。「それじゃ、オリビア。また明日ね」「ええ、また明日」エレナは手を振ると、急ぎ足で去って行った。教室の入口には彼女の婚約者、カールが待っている。「……2人で一緒に帰るのね。デートでもするのかしら?」ポツリとつぶやき、ギスランの顔を思い浮かべた。オリビアとギスランは子供時代から婚約者していたが、一度も一緒に登下校したこともなければ2人きりで出かけたこともない。ただ月に数回、学校が休みの週末にだけ顔合わせという名目でどちらかの屋敷で会うだけだった。その際、特に会話をするわけでもない。同じ空間にいれば良いだけなので、ギスランはいつも持参した本を読み、オリビアを相手にしようとはしない。そこでオリビアは出来るだけ読書の邪魔にならないように、気を使って静かに刺繍をして過ごし……時間になるとギスランは帰って行く。そんな関係がずっと続いていた。本当はもっとギスランと仲良くなりたいと思っていた。しかし、相手がそれを望んでいない以上どうすることも出来なかった。どうせいずれは結婚するのだから、2人の関係もそのうち変わって来るだろうとオリビアは割り切ることにしたのだが……シャロンが15歳になった頃から変化が起こり始めた。気づけばギスランとシャロンが急接近し、オリビアとの距離が遠のいていたのだ。2人はオリビアが気づかない間に親密になり……今では隠すこと無く堂々と一緒に過ごすようになっていた。それが、たとえオリビアの眼の前であろうとも。「……仕方ないわね。シャロンは私と違って、可愛らしくて魅力的だもの……」ポツリとつぶやき、自分のダークブロンドの髪にそっと触れる。シャロンの髪はオリビアと違い、眩しく光り輝くようなプラチナブロンドだった。瞳は深い海のような青い色。容姿だけでは、どれもオリビアには敵わない。ただ、シャロンより秀でていることがあるとすれば頭の良さだけだったろう。オリビアは才女だったが、シャロンはそれほど賢くは無かった。だが、頭の良い女性は男性からは敬遠されがちだった。「婚約解消されるのも時間の問題かもしれないわね……そして代わりにシャロンと……」ため息をつくとオリビアは立ち上がり、教室を後にした――**** オリビアは大学の図書館を訪れていた。家
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7話 憧れの人
(どうしてアデリーナ様がここに……? 今まで一度も図書館で出会ったことがないのに)躊躇っているとアデリーナがオリビアの姿に気付き、声をかけてきた。「本を借りに来た方ですか? どうぞ」「は、はい……」オリビアは呼ばれるままに貸出カウンターに来ると、自分の借りようとしている小説が何だったかを思い出した。(そうだった……! この本は恋愛小説だったわ。アデリーナ様のように知的な女性の前でこんな本を借りるなんて……軽蔑されてしまうかも!)「では、貸出手続きを行うので本を貸していただけますか?」アデリーナは笑顔で話しかけてくる。こんなことなら歴史小説でも借りれば良かったとオリビアは後悔したが、今更引き返すことなど出来ない。「お願いします……」恐る恐る抱えていた本をカウンターに置いた。するとアデリーナは笑顔になる。「まぁ、あなたもこの本を借りるのですか? 私も以前読んだことがあるのですよ。とてもロマンチックな恋愛小説でした。お勧めですよ?」「え? ほ、本当ですか?」まさか借りようとしていた本をアデリーナが読んでいたことを知り、オリビアは嬉しい気持ちになった。けれど、自分のことを全く覚えていない様子に少し寂しい気持ちもある。「ええ、夢中になって頁をめくる手が止まらずに、3日で読み終わってしまいました。では、貸出カードに名前を書いて下さい」「はい。分かりました」オリビアは卓上のペンを手に取ると、名前を書いた。「お願いします」貸出カードに名前を書いて、アデリーナに差し出した。「オリビア・フォードさんですね? 貸出期間は2週間になります。では、どうぞ」アデリーナから本を受け取ったものの、オリビアはまだ話がしたかった。「あ、あのアデリーナ様!」「え? どうして私の名前を?」「私のこと、覚えておりませんか? 今朝、友人と中庭でお会いしたのですけど」その言葉に、アデリーナはじっとオリビアを見つめ……。「あ、思い出したわ! 何処かで会ったような気がしていたけれど、今朝会っていた人だったのね?」「はい、そうです。私のこと思い出していただき、嬉しいです」「今朝はお恥ずかしいところを見せてしまったわね。ただでさえ私はこの赤毛のせいで悪目立ちしているのに。本当にいやになってしまうわ」アデリーナは自分の髪を見つめて、ため息をつく。「あの、アデリー
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8話 誘い
 その日から、オリビアは放課後毎日図書館に通うようになった。試験期間中以外は放課後に図書館に来るような学生は滅多にいない為、アデリーナとオリビアの2人きりの空間になっていた。はじめの頃はアデリーナと本について話をするようになっていたが、2人の親交が深まるに連れ、徐々に踏み込んだ話へ変わっていったのだった……。――放課後、帰り支度をしていると隣の席のエレナがオリビアに声をかけてきた。「オリビア、今日一緒に途中まで帰らない? 私、実は自転車で通学してきたのよ」「え? エレナ……もう自転車を乗りこなせるようになったの? 驚いたわ」「フフフ。自転車に乗る練習にはカールに付き合ってもらったわ。彼のおかげね」「そうだったのね? でももう自転車で通学してくるなんてすごいわ」「でしょう? 自転車って気持ちいいわね。風を切ってスイスイ走る爽快感は素敵だわ。だから2人で自転車に乗って帰らない? 途中、どこか喫茶店に寄りましょうよ」それは、とても素敵な誘いだった。けれど……。「ごめんなさい、エレナ。実は今日、約束があるの」今日、アデリーナは図書委員が休みの日だった。そこで、2人で大学構内に設けられたカフェテリアでお茶を飲むことにしていたのだ。「そうだったのね……あ、もしかしてギスランと約束しているの? 良かったじゃない」「いいえ、違うわ。アデリーナ様とよ」「そう、アデリーナ様と……ええっ!? そ、その話本当なの!?」エレナは大げさに驚く。「ええ、本当よ。そんなに驚くことかしら?」「もちろん、驚くことに決まっているでしょう? だって、あのアデリーナ様よ? 侯爵令嬢であり、あの……悪女と名高い」「悪女というのは誤解よ。それはね、婚約者のディートリッヒ様があらぬ噂話を広めているだけに過ぎないのよ。何しろディートリッヒ様は他に想い人の女性がいるから」「それは、そうかもしれないけれど……でも……」「エレナ……」オリビアがじっと見つめると、エレナは頷いた。「分かったわ、他ならぬ親友のオリビアの話だから信じるわ。約束があるなら仕方ないわね、カールと帰ることにするわ」「ごめんなさい、エレナ」「いいのよ、それじゃまた明日ね」「ええ、また明日」エレナは手を振り、教室を出て行った。「私もアデリーナ様との待ち合わせ場所に行かなくちゃ」そしてオリビアも待ち
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9話 何故、我慢しなければならないの?
「ところで、アデリーナ様。もうすぐ学園祭ですけど、後夜祭には参加されるのですか?」オリビアはミルクティーを飲みながら尋ねた。「ええ、今年最後の後夜祭だから参加するわ」「それでは、パートナーはどうされるのですか?」オリビアは自分自身もパートナーのことで悩んでいたのでアデリーナのことが気になったのだ。「一応、婚約者がディートリッヒだから彼がパートナーになる予定なのだけど……恐らく無理かもしれないわ。それに何だか嫌な予感がするし……」「嫌な予感? それって……」「いいえ、何でもないわ。それより、オリビアさんはどうなの? 確か婚約者がいたはずよね?」アデリーナには婚約者がいる話はしていたが、詳しい事情はまだ説明したことは無かった。「は、はい。そのことなのですが……実は……」ついにオリビアは全てを告白することにした。婚約者のギスランは15歳の異母妹に夢中なこと。 父親からは疎まれ、3歳年上の兄ミハエルからは憎まれている。義母からは無視され、15歳の異母妹からは馬鹿にされていること。その為、使用人たちからも無視をされている……それら全てを告白したのだ。アデリーナはその間、一度も口を開くこと無く黙って聞いていたが……やがて話が終わるとミルクティーを一口飲み……。カチャッ!乱暴にティーカップを皿の上に置いた。「ア、アデリーナ様?」今まで一度も見せたことのない態度にオリビアは戸惑う。「……信じられないわ……一体、その話は何なの!? オリビアさんにそんな態度をとるなんて……許せないわ!」アデリーナの声が店内に響き、中にいた数人の学生客たちがギョッとした様子で2人を見つめる。「アデリーナ様。私の為に怒ってくださるのは嬉しいですが、私なら大丈夫ですから」「いいえ、少しも大丈夫じゃないわ。いい? オリビアさん。あなたのお母様が亡くなったのは、あなたのせいではないわ。こういった言い方はあまり良くないかもしれないけれど、そうなる運命だったのよ。それをあなたの家族たちは何て酷いことをするのかしら。こんなにオリビアさんは優秀なのに」憤慨した様子でアデリーナは続ける。「あなたのお兄様は、この学園に入学することすら出来なかったのでしょう? でもオリビアさんは入学し、学年で上位の成績を修めている。もっと誇るべきよ。なのに、何故そんな窮屈な思いをしているの?」
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10話 媚びを売るのは、もうやめます
「アデリーヌ様……私、我慢も媚びを売る必要もないってことでしょうか?」「ええ、当然よ。だって、あなたは家族よりも婚約者よりも優れているのだから。もっと自分に自身を持つのよ」アデリーヌはオリビアの手をしっかり握りしめた。「分かりました、私自分に自身が持てそうです。もう今日から家族にも婚約者にも、そして使用人にも媚びを売るのはやめることにします!」「ええ、そうよ。オリビアさん! 頑張るのよ!」「はい!」そして、2人は店内にいるすべての人々の注目を浴びながら、固く手を握りしめあうのだった――**** 18時を少し過ぎた頃、オリビアは屋敷に帰ってきた。 自分の部屋目指して歩いていると、前方から義母のゾフィーがメイドを連れてこちらに歩いてくるのが見えた。いつものオリビアなら挨拶をする。しかし、義母からは一度たりとも挨拶を返されたことなどない。完全無視をされているのだ。(どうせ挨拶しても無視されるのだもの)媚びを売るのをやめると心に誓ったオリビアはそのままゾフィーに視線を合わせることもなく歩いていき……通り過ぎた途端。「待ちなさい」ゾフィーに背後から声をかけられた。しかし、オリビアはそのまま無視して歩いていると先程よりも大きな声で呼び止められた。「オリビア! お待ちなさい!」そこでオリビアは足を止めて振り返った。「何でしょうか?」「何でしょうかじゃないわ。私に挨拶をしないとはどういうつもり? しかも最初の呼びかけで無視をしたでしょう? 理由を説明しなさい!」険しい視線でゾフィーはオリビアを睨みつけている。そして何故か背後にいるメイドも一緒になってオリビアを睨んでいる。「どうしていつも私を無視する人に挨拶をしなければいけないのですか?」「な、何ですって!?」まさか反論されるとは思わなかったのだろう。ゾフィーの顔が一段と険しくなる。「それに、一度目の呼びかけに返事をしなかったのは名前を呼ばれなかったからです。『お待ちなさい』だけでは誰に呼びかけているのか分かりませんから」オリビアはため息をつきながら大げさに肩を竦めると、ゾフィーはヒステリックに喚いた。「な、なんて生意気な……!とにかく挨拶は基本よ! それぐらい常識でしょう!?」「これは驚きましたね。まさか、お義母様から常識と言う言葉が出てくるとは思いませんでした。今まで一度も私
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