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第8話

Auteur: 陸小白
俺がカイメイの社長だと知った途端、星司は以前の態度を一変させ、電話を何度もかけてくるようになった。

だが、俺はそのすべてを無言で切った。

それでも星司は諦めず、熱心にこう伝えてきた。

「兄さん、父さんも母さんも君がカイメイ社の社長だと知って、本当に喜んでるんだ。それでね、家でお祝いのパーティーを開こうって話になったんだ。

一つは兄さんがカイメイ社を率いていることへの祝賀会、もう一つは天川グループとカイメイ社の新しい契約を記念するためだよ」

俺は指で机をトントンと叩きながら、一瞬考え込んだ後、静かに答えた。

「分かった。そのパーティー、出席してやるよ」

もちろん行くつもりだった。行かない理由がない。特等席で「一番の見もの」を観るには、絶好の機会だったからだ。

天川家の祝賀パーティーは、屋敷ではなく、豪華な五つ星ホテルで開かれることになった。多額の費用をつぎ込んだらしく、会場の扉が開くやいなや、招待客たちが次々と俺の元に集まってきた。

だが、俺の目はすぐに遠くの車椅子に座っている舜を見つけた。

彼の顔には怒りが浮かんでいる。それもそのはずだろう。

舜は、元々自分のものだと思い込んでいたものすべてを、今や俺に奪われたと感じているのだから。

だが、舜には理解できていない。奪われたのではない。最初からそれは、俺のものだったのだ。

俺はそのまま舜のいる方へ歩み寄った。彼の傍らには見覚えのある男が立っている。

以前、俺を歓迎するパーティーで侮辱してきた男だ。

「いやあ、驚きましたよ。天川家の長男がこんなに隠し持っているとはね。さすがに見た目じゃ分からないものだ」

男は皮肉な笑みを浮かべながら続ける。

「でもまあ、残念ですね。舜がこんな状態にならなければ、今日の主役も君一人だけじゃなかっただろうに」

俺は彼に軽く視線を向け、眉をわずかに上げた。

「それは同感だね。じゃあ、せっかくだから今日はみんなの前で弟にちょっとした『補償』をしてあげようか」

俺の言葉に、周りの人々が一斉に困惑の表情を浮かべる。

その中で俺は舜の車椅子をつかむと、そのまま彼を壇上へと押しやった。

壇上で簡単に事情を説明した後、俺はスマホを取り出し、動画を再生した。

その動画には、あの日リビングで起きた「真相」が記録されていた。俺が舜
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