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第2話

Author: 金沢順子
再び目が覚めたのは病院だった。

通りかかったおばさんが私をここに運んでくれたのだ。

医者は私の状態が非常に悪いと言い、どうして家族の付き添いがいないのか尋ねた。

「すみません、私には家族がいないんです」と答えると、

医師の目には一瞬、同情の色が浮かんだ。

思わず苦笑がこぼれた。顔も知らない通りすがりの人がこうして善意を示してくれるのに、私は七年も心を尽くしてきた光流と亮祐には、これほどまでに冷たくされるとは。

こんなにも無駄な年月だったと、初めて実感した。

点滴を数本受けて熱が下がったところで、私は病院を出た。

心のリフレッシュに思い切って旅行にでも出かけたいと思ったが、

現実はそう甘くない。ここ数年、私は仕事もせず、光流からは少しばかりの食費しかもらっていなかったので、まとまった貯金などあるはずもない。

ひとまずホテルに泊まり、翌日、昔のテレビ局の上司に電話をかけた。

結婚する前、私はテレビ局の気象コーナーで一番人気のアナウンサーだった。

辞職を決意したとき、多くの上司がもったいないと言ってくれたものだ。

でも、私は光流のために全てを投げ打ち、将来を諦めた。

若さゆえの勢いだった。真心を捧げれば、同じように真心が返ってくると本気で信じていた。

けれど、その結果がこの有様だ。

七年ぶりにカメラの前に立った。正直、あまり期待していなかった。

ところが、上司は何も言わず、すぐに私を局長と引き合わせてくれた。

この七年、私は彼ら父子の世話に忙しかったが、それでも時間を見つけてトレーニングを続けてきたおかげで、体型はしっかり保てていた。

加えて、以前の業務能力が評価されていたため、上層部は話し合いの末に、もう一度チャンスを与えることを決めてくれた。

私は荷物を持って局長が用意してくれたアパートに引っ越し、新しい生活を始めた。

一週間の研修期間を経て、順調に復帰を果たした。

再び番組に登場した初日に、私が去ってからの七年間の最高視聴率記録をあっさり更新してしまった。

局長は大いに喜び、そのお祝いとして祝賀会を開いてくれた。

後輩が私にお酒を勧めてきた時、私は無意識に断った。「すみません、私はお酒は飲まないんです」

言い終わってから気づいた。私はお酒が飲めないわけではなく、光流が「酒を飲む女が嫌いだ」と言ったからやめていただけだったのだ。

今はもう離婚したし、彼がどう思うかなんて気にする必要はない。

私は笑って杯を受け取った。「冗談よ、飲めます!」

そう言って、ぐいっと一気に飲み干した。

酒が三巡する頃、少し酔いが回ってきた。その時、携帯電話が鳴った。

それは警察からの電話だった。

「中川杏樹さん、お甥さんが見つかりました」

その一言で、一瞬にして酒が冷めた。私はすぐにタクシーに飛び乗り、警察署へ向かった。

警察署であの小さな子に会った瞬間、目が赤くなり、涙がこみ上げてきた。

血縁というのは、本当に不思議なものだ。

この子はまるで弟の小さな写しのようだ。

警察は私に、弟と義妹のDNA鑑定結果と照らし合わせて、この子は間違いなく彼らの行方不明になっていた息子・颯楽だと伝えてくれた。

あの頃、義妹は颯楽を連れて公園に行き、綿菓子を買いに行ったほんの一瞬の隙に、颯楽は姿を消してしまった。

義妹は自責の念と悲しみから精神的に崩壊し、颯楽が行方不明になってから十日目には、耐えきれずに命を絶ってしまった。

妻と子供を次々と失い、弟は一夜にして十数年も年を取ったかのように見え、子供のように泣きじゃくった。

弟の姿を見ていると、本当に胸が締めつけられるようだった。あの時、亮祐はまだたったの3歳で、私にべったりだった。私が抱きしめている時だけは泣かなかった。

でも、弟のために颯楽を探すためには、痛みをこらえて亮祐をおばあさんに預けるしかなかった。

それから1ヶ月後、町で似たような子供の目撃情報があった。

弟はすぐに向かったが、行ってみると性別さえ違っていた。

絶望した弟は心を痛め、うわの空で川に落ち、不幸にもそのまま溺れて亡くなってしまった。

それからしばらくして、警察から人身売買をしていた犯人が子供たちを連れてアメリカへ密航しようとしたが、その船が転覆し、沈没したとの連絡があった。

「船に乗っていた全員が遭難しました。お甥さんもその中にいたはずです……」

これで全ての手がかりは完全に途切れた。そして、私にはもう光流と亮祐、この二人の家族しか残されていなかった。

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