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第289話

Auteur: 小春日和
「分かりました」

真奈はそう答えたものの、心ここにあらずだった。廊下から視線をやると、自分の部屋の中で動き回る黒澤の姿が見えた。彼は机の上に置かれた彼女の幼少期の写真を眺めていた。

「黒澤!」

真奈は駆け込み、机の上の写真を全て伏せた。

その中には、彼女と冬城の結婚写真もあった。

その瞬間、黒澤の瞳から温度がすっと消え、声音も冷えたように淡々としていた。「結婚写真まで額に入れて机の上に飾ってるなんて……そんなにあいつのこと、愛してたのか?」

「これは……」

真奈はどう説明すればいいかわからなかった。

これは彼女と冬城が結婚したばかりの頃のものだった。

二人は結婚式を挙げなかったため、ほとんど一緒の写真がなく、この赤色の背景の結婚写真が唯一の一枚だった。かつて冬城を好きだった頃、彼女はこの唯一の写真を大切に飾っていた。

しかし、今となっては、まるで皮肉な冗談のようだ。

「もう遅いので、帰る」

黒澤は無表情だった。

彼は滅多に怒りを表に出すことはない。けれど今の真奈には、黒澤が明らかに怒っているのがわかった。

その頃、外で待っていた瀬川の叔父は、黒澤が冷たい表情
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