雅之はその言葉を聞いて、きりりとした眉をわずかにひそめた。「でもさ、それじゃお前が無理することにならないか?」なにしろ、もう二度も結婚している。だからこそ、盛大でロマンチックな式を――幸福と愛を周囲にしっかり見せつけるような、そんな式をしてやりたかった。けれど、里香は静かに言った。「私が嬉しくて、気に入ってれば、それで十分なの」その言葉に、雅之はそっと彼女を抱き寄せた。ふわりと香る匂いを吸い込みながらも、腕の力は無意識に強まっていた――とはいえ、お腹を圧迫しないよう、その加減には細心の注意を払っていた。「わかった。全部、お前の望む通りにしよう」微笑んだ里香が、優しく抱き返してくれる。ただ、里香の予想を超えていたのは、式が控えめで落ち着いたものだったのに対し、プロポーズがとんでもなく盛大だったことだ。それは、風も穏やかで日差しの暖かい、ある朝のこと。かおるが瀬名家を訪ねてきて、散歩に行こうと誘ってきた。日に日に暖かくなる季節、新鮮な空気を吸うにはちょうどいい日だった。やけにテンションの高いかおるを、思わず不思議そうに見つめた。「どうしたの?」運転しながらも、かおるは慎重な口調で答えた。「久しぶりに一緒に買い物行けるんだよ?そりゃテンション上がるって!」「でも、一週間前にも一緒に出かけたよね?」「いや、あれは違うの」そう言って、ぶんぶんと首を振るかおる。その内心では、ますます緊張が高まっていた。「……何が違うの?」「とにかく違うの!もう質問しないで!今、集中して運転してるんだから!」あ、そう。まぁ、いっか。表情にこそ出さなかったが、心の中にはほんのりとした疑念がよぎった。なんか変。今日のかおる、やっぱりどこかおかしい。やがて車はムーンベイの森林公園に到着。緑が生い茂り、景色は実に美しい。駐車場に車を停めると、かおるは腕を取って観光用のカートに乗り込んだ。見晴らしの良いルートを走り始め、さらに10分ほどすると、カートはある場所で止まった。「今日はここでキャンプしようって思ってるの。すごくいい場所見つけたんだよ、景色も最高!」「いいね」里香はうなずいた。遠くに、人影がいくつか見えた。すでにテントが張られ、月宮は花柄のシャツにサングラスという妙な格好で、バーベキューグリルの
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