聡は横に腰かけ、何とも言えない微笑みを浮かべながら星野をじっと見つめた。星野はあまり露骨な態度はとれず、少し間を置いてから口を開いた。「もう食べましたよ」その言葉に、尚子の顔にふと複雑な表情がよぎった。「でも、こんなにたくさんの料理があるのに、捨てちゃうのはもったいないわよね」すると、聡がにっこり笑って言った。「おばさん、それは私が悪かったですね。お身体のこと、ちゃんと考えてませんでした。確かに、これを捨てるのはもったいないし、じゃあ、持ち帰らせてもらいますね」尚子は苦笑しながら、少し諦めたように言った。「信ちゃんはほんと、私のこと心配しすぎなのよ。私なんてもうこんな歳なんだし、ちょっとくらい美味しいもの食べたっていいじゃない。悪い言い方すればさ、あと何回美味しいものを食べられるかなんて、分からないしね」星野はすぐに眉をひそめた。「母さん、そういう縁起でもないことは言わないでください」「分かった、分かったってば」尚子は星野が怒りかけているのに気づいて、慌ててそう言った。星野はあっさりした料理を小さなテーブルに並べ、尚子がそれを食べる様子を黙って見守った。聡はそんな様子を観察しながら、興味深そうに星野を見つめ、何度も視線をやった。「おばさん、遅くなっちゃいましたし、そろそろ失礼しますね。また改めてご挨拶に来ます」尚子が食事を終えたころ、聡がそう言った。尚子はうなずき、それから星野の方を向いて言った。「信ちゃん、聡さんを送っていきなさい」「分かりました」星野はゴミ袋を手に取り、無言のまま聡の後ろに続いて病室を出た。ゴミ袋をゴミ箱に捨てると、彼女に一瞥もくれずに、そのまま病室に戻ろうとした。「星野くん」そのとき、聡が彼を呼び止めた。しかし星野は足を止めず、そのまま歩き続けた。後ろから、少し気だるげな聡の声が聞こえてきた。「今日ね、おばさんといっぱい話したの。たとえば、あなたがあんなにいい待遇を蹴って、辞めようとした理由とか。おばさん、信ちゃんがどうして辞職したのかって聞いてきたわ。ねぇ、私、なんて答えればいいの?」その言葉を聞いた瞬間、星野はぴたりと足を止め、大股で振り向いた。聡のゆがんだ笑顔が浮かぶ美しい顔をまっすぐに見つめる。目には冷たい光が宿っていた。「
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