そう言い終えると、英理は再び台所へ向かった。海咲は、そんな家族の中にいることに、幸せを感じていた。両親が揃っていて、しかも深く愛してくれている。家の中が騒がしくなっていたせいで、兆も起きてきた。彼は果物をいくつか持ってきてくれて、二人に食べさせようとした。親というのは、子供が空腹になるのを一番恐れている。とにかく何か食べさせたがるものだ。「お父さん、もう休んで。こんな夜中に起こしちゃってごめんね」海咲が言った。「何を言ってるんだ、お前がいつ帰ってきたって遅くなんかないよ」兆は娘を見る目がとても優しく、溺愛するような表情だった。そして亜に向かっても言った。「亜ちゃんも久しぶりだな」
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