長田さんと小野田は目を合わせて、首を横に振った。真奈は沈黙した。伊藤夫人もすべてのことを長田さんと小野田に話しているわけではないようだ。この20年以上、伊藤夫人が伊藤家で過ごしてきたのはどんな日々だったのか想像できる。「瀬川さん、隠していたのは私たちが悪いんです。でも奥様……奥様は善意です。坊っちゃん、瀬川さん、どうか奥様を助けてください!」長田さんと小野田の二人は今にもその場にひざまずこうとしていた。真奈はすぐに手を伸ばして二人を支え、言った。「あなたたちが何も言わなくても、私たちは必ず伊藤夫人と美琴さんを助け出すわ。安心して」「どうやら……伊藤恭介は、俺たちに逃げ道がないことを伝えたかったようだ」伊藤は苦笑いした。これまで父親という存在は、いてもいなくても変わらないようなものだった。しかし心の奥底では、父親に認められたいと願っていた。でも今は……伊藤はただ伊藤恭介という人の皮をかぶった悪魔と決別したいだけだ。もう二度と、伊藤恭介の息子ではいたくない。谷間の教会内。幸江はぼんやりと目を覚ましたとき、視界は暗闇に包まれていた。かすかに耳に入ってくるのは、大勢の人間が何かを唱えている声。まるで読経のようなその響きが、幸江の頭をひどく痛めた。手、足、幸江は一つ一つ試してみたが、自分が全然動けないことに気づいた。体はナイロンロープで縛られていて、体内にはまだ麻酔薬の影響が残っているようだった。まるで泥棒でも警戒するかのように、徹底的に幸江を警戒していた。自分の状況を把握すると、すぐに周りを観察した。ここは密閉された教会のようで、周りの音を聞くと、少なくとも五十人以上の信者がいるようだ。一番上に立っているのは、光明会の主であるはずだ。そう考えた瞬間、幸江の胸に焦りが走る。もし今動けたなら、脱出の手段はいくらでもあるのに。でも今は……「我々が長年積み上げてきたものは、まもなく実を結ぶ。この世界は間もなく新しい法則を迎え、すべてが刷新される。人類はより輝かしい文明へと進み、争いも死も存在しない世界が訪れる。我々一人一人が次の世界の創造主となり、万人に崇められるのだ」幸江は壇上の人の演説を聞き、はっとした。もともと光明会の目的は、これだったのか。でも……なぜ?
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