All Chapters of 社長夫人はずっと離婚を考えていた: Chapter 671 - Chapter 680

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第671話

玲奈が千代に挨拶をして、周りを見渡すと、真田教授と千代の家に来ている来客のほとんどが、知らない顔ぶれであることに気づいた。しかし、淳一がいることには少し驚いた。淳一は、真田教授夫婦に新年の挨拶に来るよう命じられている。淳一が到着した時、礼二はいたが、玲奈の姿が見えなかったため、彼女は来ないのかと思っていたが、まさか彼女は一人で来ていた。徳岡家も今日は忙しいから、長居はできず、手土産を置いて真田教授夫婦と軽く会話を交わすと、早々に帰って行った。玲奈と礼二は、真田教授の家に長く滞在し、彼らと共に外食までした。その後数日、玲奈は青木家の人々と親戚たちの元に訪れ、外出して遊びに行った。数日後、取引先との関係で、彼女は礼二と共に接待に出かけた。この日、玲奈が礼二と協業関係について話し合っていると、智昭と辰也と食事の約束をしていた清司が、たまたま二人のいる個室の前を通りかかった。玲奈と礼二を見つけると、彼は眉をつり上げ、思わず足を止めてじっと見つめた。店員が玲奈たちの所に料理を運び終え、個室のドアを閉めようとした時、清司が中を凝視しているのに気づき、声をかけた。「お客様、何かご用でしょうか?」玲奈と礼二が声の方に振り向くと、清司がいた。玲奈は無表情だが、礼二は作り笑いをして聞いた。「これはこれは、村田さんじゃないか。どうしたんだ?」清司は手を振った。「いや、ちょうど通りかかっただけだ。ゆっくり食事を楽しんでくれ」そう言うと、彼は笑いながら立ち去った。清司が個室に戻ると、智昭と辰也は既に到着していた。彼は椅子を引いて座りながら言った。「2人とも遅刻しなかったとは、珍しいな」そう言うと、二人が口を挟む前に、彼は個室の入口の方に向かって顎をしゃくった。「さっき誰を見かけたか当ててみろ」智昭と辰也はそれぞれお茶を一口飲んだが、誰も答えようとしなかった。清司は焦れたように言う。「おい、ちょっとくらいは反応しろ」智昭が先に湯呑みを置き、問い返した。「誰を見たんだ?」「玲奈と礼二だ」清司も自分にお茶を注ぐ。「あいつらは偉いよ。まだ休暇中なのに、もう仕事に精を出しているとはな」辰也は俯き、やはり何も言わなかった。清司が口を開いた時、辰也はすでに玲奈を見かけたのだろうと察していた。だが、礼二も一緒にいるとは思わなかっ
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第672話

辰也は玲奈に会いたくて来た。彼はその後、玲奈や礼二、そして2人の食事相手である取引先の方とも少し話をしてから、立ち去った。礼二は、ますます辰也を気にいるようになった。辰也が去った後、礼二は小声で玲奈に言う。「いつも自ら挨拶に来てくれるとは、なかなか気が利くやつだな」礼二は辰也のこの行動が、双方の協業関係を重視している表れだと考えていた。玲奈は賛同するように頷いた。彼女もそう思っている。辰也が個室に戻ると、料理はすでにテーブルに出されていた。清司は上機嫌で、智昭と辰也のためにお酒を注いだ。「久しぶりに集まったんだから、今日はたくさん飲もう!」智昭と辰也はグラスを掲げ、清司と共に乾杯し、一気に飲み干した。ただ、二人とも食事後に別の用事があるため、軽く酌み交わす程度に留めた。三人は幼馴染みで、同じ業界で長年働いているから、話題に困ることはなかった。清司は智昭たちともっと話したかったが、自分も食事後に家の用事で行かないといけなかったため、30分ほど話した後、上着を取って帰ろうとした。辰也はグラスを握り、さりげなく智昭を見る。彼は今日、智昭に話したいことがあったが、清司がいるため、なかなか言い出すことができなかった――そう考えていたその時、辰也のスマホが鳴り出した。電話に出ると、「わかった。今すぐ戻る」と簡単に返事した。智昭は辰也を見て、「もう帰るのか?」と聞いた。辰也はスマホを握りしめ、「うん、俺たちは……」と何か言いたげだった。彼は帰る前に、もう少しだけ智昭と話そうとしたが、その時清司が個室のドアを開け、しかもちょうど前を通っていた玲奈たちとばったり出会ってしまう。清司は足を一瞬止め、思わず「ちぇっ」と舌打ちした。辰也の口にした言葉も途切れてしまった。智昭は玲奈たちを見て、進み出た。「これは湊社長じゃないか。奇遇だね」清司と辰也がいることを知り、礼二と玲奈は、智昭もおそらくいるだろうと推測していた。ただ、辰也は自ら挨拶に行ったのに対して、智昭はそうしなかった。今になってみれば、その推測は間違っていなかった。礼二は作り笑いを浮かべて言った。「本当に偶然だね」「そうだな」智昭が言った。彼は玲奈の方を見ながら軽く会釈した。一行は互いに挨拶を交わしながら、一緒に階下
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第673話

お正月休みも終わり、玲奈はいつも通り長墨ソフトに出勤した。二日後、玲奈は長墨ソフトの代表として、政府主催の会議に出席した。玲奈は会議室に着き、椅子に座ろうとした瞬間、優里の姿が目に入った。優里も玲奈に気づいたが、すぐに視線をそらした。優里は会議室を見渡したが、智昭の姿は見当たらなかった。智昭が出席しないかと思っていたが、会議が始まる直前になって、ようやく智昭が現れた。優里はほっと一息つく。しかし、智昭が玲奈の隣の席に座るのを見ると、優里の顔からは笑みがすぐに消え、目元には寂しさが滲んでいた。一方、智昭は席に着くと、玲奈に「おはよう」と声をかけた。「……おはよう」その後、玲奈は顔を背け、二度と彼の相手をしなかった。会議が始まり、智昭もそれ以上玲奈に話すことはなかった。休憩時間になると、優里が智昭に近づいた。「智昭」彼は優里を見て、軽く頷いた。「会議の後、ちょっと時間ある?話したいことがあるの」「会議後には会食が入っている」智昭が返した。「そんな長い話にはならないわ。数分で終わるから」「わかった」智昭は頷いた。優里はその返事を聞いて、嬉しそうに微笑んだ。玲奈がトイレから戻ると、話をしている智昭と優里の姿が目に入った。玲奈は表情を変えず、席に戻ろうとするが、ちょうど会議に参加していた企業の代表者たちが、玲奈に話しかけてきた。彼女はしばらく話をしてから席に戻ると、会議もちょうど再開した。会議終了後、玲奈は出席者に少し挨拶をしてから、会議室を後にした。離れる時、彼女はちょうど優里が再び智昭に近づくところを見かけた。智昭が人混みから出てきて尋ねた。「で、話ってなんだ?」優里は言う。「藤田総研とお父さんの会社のことについてよ」年末年始の休み期間中、優里は智昭に連絡を取って会おうとしたが、智昭は基本的に返事をしなかった。つまり、休みに入ってから今日に至るまで、優里と智昭はまだ会っていない。藤田総研と大森テックはすでに始業しているが、資金繰りは相変わらず厳しく、重要なプロジェクトについても何の進展もないままだった。優里は、藤田総研と大森テックの状況を智昭に話した。智昭は話を聞き、少し間を置いてから言った。「君たちは技術的な面で行き詰まっているようだ。必要なら、優秀な
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第674話

「もう言ったわ」結菜は「じゃあ、智昭義兄さんは――」と聞いた。優里は大まかな経緯を話した。「え?それだけ?ほ、他にはないの?」「別にないわ」結菜は呆然とし、はっと気づいてまた聞いた。「智昭義兄さんのお話って、私たちを助ける気がないってこと?」佳子たちは黙り込んでいる。智昭は明らかに助ける気がない。結菜は思わず口にした。「智昭義兄さんが助けてくれないなら、じゃあ、私たちは――」自分たちで資金を調達するしかない。どうやって資金を調達するかといえば、もちろん、一部の不動産を売却して急場をしのぐことだ。何しろ、手元にある資金は、早くも正月前にすべて投じられていたのだ。佳子はさっきまで顔色が悪かったが、今はすでに平常心に戻り、淡々と言った。「ただの緊急措置よ。優里ちゃんと智昭の間にはまだチャンスがあるわ。また転機は訪れるでしょう」「で、でも――」結菜は唇を噛んだ。でも智昭は今、優里に対してますます冷淡になっているようだ。逆に、智昭と玲奈の間はますます親密になっているという。聞くところによれば、智昭は今年の年末、青木家で過ごしたらしい。玲奈も正月に智昭と一緒に、彼らの屋敷に泊まりに行ったとか……今、姉の優里が助けを求めて訪ねたのに、智昭は完全に無視した。こんな状況で、二人の間には、本当にまだ復縁するチャンスがあるのだろうか?娘を知る者は母に如かず、美智子は結菜が何を考えているかよくわかっている。美智子は笑いながら言った。「玲奈はたった一人の身だよ。彼女が智昭と礼二の両方を手に入れられるわけがないでしょう?玲奈と礼二の二人が離れられなくなる方法を考えればいいだけじゃない?」この前、佳子は優里に智昭を引き留めるために、子供を授かるよう勧めた。実は当時、佳子がはっきり言わなかったのは、もしこの方法がうまくいかなかったら、逆に玲奈と礼二に既成事実を作らせれば――効果は同じじゃないか。結菜は顔を輝かせて言った。「そうだわ、どうして思いつかなかったのかしら!」そう言うと、笑いながら佳子に話しかけた。「おばさん、本当に頭がいいね!」佳子は目を伏せ、湯呑みを手に取ってお茶を飲むだけで、返事はしなかった。智昭は優秀な人材を何人か推薦すると言っていたが、翌日になっても何の動きもないから、優里は再
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第675話

大森家の人たちが話をしていると、テレビではあるAI関連の学術会議のニュースを報じていた。どうやら今年、A国の由緒あるトップクラスの学術会議が、開催される時期が近づいている。記者が会議の幹部に今年の招待者について尋ねたようだ。その幹部は7、8人の名前を挙げたが、偶然にも玲奈と礼二の名前もその中に含まれている。幹部の話によれば、招待状は既に発送済みで、玲奈たち招待者の返答待ち状態だという。さらに、玲奈や礼二たちと直接会い、深い議論を交わし、AI分野の全面的な発展を共に推進できることを大いに期待しているとも語っている。このニュースを見て、結菜の表情が一瞬で曇り、優里に向かって聞いた。「姉さん、招待状はもらった?」結菜はこの会議の重要性を詳しく知らないが、インタビューで幹部が挙げた名前が全て世界的な大物たちだと聞き、この会議が並大抵ではないことを悟った。何しろ、優里の博士課程の指導教官もその中の一人だ。優里はニュースを見た時、大森家や遠山家の他の誰よりも目に見えて動揺していた。だが、優里は巧みに自分の感情を隠し、誰にも気づかれないようにしていた。結菜の問いに、優里は淡々と答えた。「ないわ」その返事を聞いて、大森家や遠山家の人々は特に気にも留めなかったが、結菜はすぐに憤慨した。「礼二はともかく、姉さんですら招待されていないのに、なんで玲奈なんかに資格があるの?こんなに大物たちがいるのに、本当に彼女に実力があるって信じてるの?」仮に玲奈に実力があったとしても、優里を越えられるはずがないわ!結菜はそう思いながら、鼻で笑うと続けた。「私に言わせれば、こういう会議もイベントも、有名な人を招いて騒ぎ立てるだけのものよ。出席している人の大半は、大した実力もないんじゃないかしら?」優里も他の者たちは、何も言わなかった。一方その頃。玲奈と礼二がAI関連の学術会議に招待されるというニュースが流れた後、二人は他のイベントを参加する時に、メディアからの取材も受けていた。玲奈は現在、諸事情で海外には行けないため、メディアに問われた際、招待を受けたことを光栄に思うが、最近仕事で忙しいため、自分は参加しないだろうと答えた。結菜はそのニュースを見る時、激怒しそうになった。「忙しいだって?玲奈は明らかにバレるのが怖いんだわ!」佳子と遠山おばあさんたちは、黙ったままだった。
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第676話

仕事の話をしばらくして、一息ついて雑談している時、玲奈のスマホが鳴り始めた。電話は茜からだった。玲奈は他の人に軽く挨拶すると、電話に出ながら立ち上がり、部屋の外へ歩き出した。「どうしたの?」「有美ちゃんが首都に戻ってきたの。今夜一緒に食事しようって。ママも来る?」玲奈は答えた。「ごめんね、今夜は接待があって、ママ抜けられないの。あなたたちだけで行ってちょうだい」そう言うと、玲奈はドアを開けて部屋を出た。本当に用事があって、抜けられないのだ。外で茜とさらに少し話してから、ようやくドアを開けて戻り、智昭たちと再び仕事の話を続けた。仕事の話が終わると、玲奈と翔太は先に立ち去った。智昭は将吾ともう少し話してから、ようやく帰宅し、茜を迎えて食事に出かけた。茜も有美と久しぶりに会うから、たくさんプレゼントを準備していて、今はとても興奮している。智昭が帰ってくると、茜は慌てて有美へのプレゼントを全部車のトランクにつめた。「パパ、ママに電話して一緒に来てって頼んだんだけど、接待で時間がないって」智昭はそれを聞き、「うん」と頷いてから、「パパは知っているよ」と答えた。茜は驚いたように言った。「え?もう知ってたの?」「うん、ママが電話に出た時、パパはそばにいたから」「ああ……」茜は眉をひそめ、少し落ち込んだ。「じゃあどうしてママを説得して、一緒に来させてくれなかったの?」智昭は笑いながら茜の頭を撫で、答えずに、有美へのプレゼントを見て言った。「こんなにたくさん準備したのか?」茜は自分が準備したプレゼントを、どれも有美が気に入ってくれるのを心から願っていた。智昭の言葉で彼女は一気に目を輝かせ、得意げに言った。「もちろんよ!」今日は辰也が食事をご馳走してくれるのだ。二人が店に着く時、辰也、有美、清司、そして優里もすでに到着していた。ただし、清司と優里も到着したばかりだった。優里が、智昭親子と一緒に来ていないのを見て、清司は思わず聞いた。「どうして三人は一緒に来なかった?」茜も優里に会うのは久しぶりだ。優里を見かけると、「優里おばさん」と呼びかけ、清司の言葉を聞いて、茜は答えた。「パパは家に迎えに来てくれたから」清司はただ何気なく聞いただけで、特に気に留めていなかった。辰也も智昭と優里は、それ
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第677話

最近の2、3ヶ月、優里は彼らとあまり集まっていなかった。清司の中では、智昭と優里はきっと頻繁に会っているに違いないと思っている。だからこそ、彼らが珍しく集まる今、智昭と優里が真っ先に二人の話を始めるのを見て、わざとからかうように口を挟んだ。優里はその言葉を聞き、一瞬目を曇らせるが、すぐに笑顔で率直に言った。「毎日会ってるわけじゃないわ。最近は智昭ともあまり会ってないの」優里がこう言ったのは、こういうことについて、本当のことを言っても、誰も信じないと知っていたからだ。たとえ信じたとしても、二人が忙しいから会えなかっただけで、感情に問題があるとは思わないだろう。案の定、優里がそう言うと、清司は笑いながら言った。「わかったよ。じゃあ邪魔しないから、二人で続けてくれ」すぐに、清司たちは話題を変えていく。夜、玲奈が仕事を終えて家に帰り、ちょうどシャワーを浴びようとする時、辰也からLINEが届いた。有美が首都に戻ってきて、玲奈に会いたがっているとある。玲奈はLINEを見て、明日の昼に時間があると思い、会うことを約束した。翌日、玲奈は時間通りに約束の場所へ向かう。有美は本当に玲奈のことが大好きで、この半年間ほとんど連絡を取っていなかったにも関わらず、玲奈に対して全く隔たりを感じず、彼女を見つけると駆け寄ってきた。「玲奈お姉さん!」有美は少し背が伸びている。玲奈は腰をかがめて抱きしめると、用意しておいたプレゼントを渡した。その後、有美は玲奈に最近の面白い出来事を次々と話し始めた。一方で、玲奈もそばで真剣に聞いていた。辰也は黙ってメニューを二人に渡した。料理を注文し、有美が話をするのに夢中で、喉が渇いて水を飲んでからまた話し続けようとした時、辰也は静かに玲奈に向かって微笑んだ。玲奈もただ微笑み、有美の頬を撫でた。玲奈にはこの後用事があるので、食事が終わると、彼女はすぐに帰る準備をし始めた。有美は名残惜しそうに、玲奈が帰る前に抱きつく。「玲奈お姉さん、時間ができたらまた会いに来てね。その時も一緒にご飯食べよう」玲奈は微笑みながら、「いいわ」と返した。三人は個室で話しているが、個室のドアは開いている。ちょうどその時、結菜たちがそばを通りかかった。遠山家の人々は、有美のことを知っている。辰也と玲奈、
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第678話

翌日、玲奈と礼二は一緒にパーティーに出席した。二人が到着して間もなく、優里たちも到着した。優里たちはすぐに近くにいる玲奈と礼二の二人に気づいた。玲奈を見た瞬間、結菜と美智子の表情が曇ってしまった。理由は単純で、玲奈が着ているドレスは、優里もこの前気に入っていたものだからだ。このドレスは数千万円以上するもので、以前なら優里は気軽に購入できた。でも、今回は……ドレスだけでなく、玲奈が身につけているブレスレットとネックレスも有名デザイナーがプロデュースしたもので、こちらも数千万円近くする。優里のドレスとジュエリーもブランド物ではあるが、価格的には玲奈のものとは比べ物にならない。以前優里は、超高価なドレスとジュエリーを身につけ、その上彼女の容姿は確かに際立っていたため、当時は多くの人々を驚嘆させ、首都にいる社交界の女性たちも、優里の服装に注目していた。今日の優里の格好は相変わらず華やかで美しいが、ドレスとジュエリーは過去に比べて、やや見劣りがするように感じられ、人々は小声でヒソヒソ話を始めた。その噂とは、優里が今日なぜこんなに質素な格好をしているのかとか、智昭との間に何か問題が生じ、彼がお金を出さなくなったのではないかとか、そういったものだ。さらに、一部の人は優里はしばらくの間、智昭と一緒にパーティーに出席していないことについて言及した。前なら、智昭の側には常に優里の姿があった。社交界にいる人々は、みんな鋭い洞察力を持っている。この変化に気づいたのか、今日優里たちに話しかけてくる人も、前に比べてかなり少なくなっている。しかし、清司の到着によって状況が一変してしまった。彼は来るなりすぐに優里たちに挨拶し、その態度は以前と何ら変わらないようだった。そのため、一部の人は、優里の今日の質素な装いも、単なる好みの問題だろうと考え直すようになった。智昭が最近、優里と一緒にパーティーに出席していない点についてよく考えてみると、智昭はここ数ヶ月とても忙しく、イベントにもほとんど出席していなかった。清司が現れる前後で、周囲の人々の態度が変化したことに、大森家と遠山家の誰もが気づいていた。優里の服装が以前に比べて質素になっただけで、他の人々がすぐにそのことに気づけたことに驚いた。もし優里と智昭の間に、問題がある
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第679話

礼二はそう言うと、また続けて玲奈に尋ねた。「お前は?最近智昭とよく会ってるだろ?そんな感じの話は聞いてない?」玲奈は首を振る。「聞いてないわ」玲奈と智昭は頻繁に会っていたが、仕事以外ではほとんど交流がない。「おかしいなあ……」礼二は理解に苦しみ、そのことについて考え続けようとしたが、またすぐ別の人に話しかけられてしまった。結菜は少し離れたところで、玲奈と礼二が人々に褒められている様子を見て、腹立たしくてたまらず、声を抑えて聞いた。「何らかの手を回して、あの二人に既成事実を作らせるって言ってたじゃない?いつ行動するの?」美智子が言う。「おばあちゃんたちは、今日のタイミングと場所は適切じゃないから、次回にしようって言ってるわ」焦る気持ちは美智子も同じだが、こういうことは急いでも確実に、痕跡を残さずやらなければならないと分かっている。……玲奈の仕事は最近特に順調だ。ここ数日、玲奈は智昭とまた二度会ったが、いずれも仕事の話だけだった。翔太は、智昭と玲奈が仕事の話しかしない様子を何度か見て、二人の間にいざこざがあったことなど、ほぼ忘れかけていた。それに、翔太と智昭の関係も、玲奈と智昭の関係と同じで、仕事の話をする時だけに言葉を交わし、これだけ会っていながらも、お互いのプライベートについては一言も触れなかった。あっという間に3月8日になった。玲奈は最近仕事で忙しく、この日は起きるのが少し遅った。目が覚めて階下へ降りると、叔母の美智が笑顔で言った。「玲奈、おはよう。誰かがあなたにお祝いのお花を贈ってきたわよ。全部テーブルの上に置いてあるから、見てみて」玲奈は一瞬きょとんとした。美智が花が届いたと言ったから、一束かと思ってたが、階下へ行くと三束もあった。そのうちの二束には署名付きのカードがあり、翔太と瑛二からのものだと、玲奈にはすぐにわかった。しかし、三束目には祝いの言葉だけ書いてあり、署名がなかった……玲奈の従妹の千尋も興味津々で聞いた。「家の住所を知ってるのに、署名がないなんて、いったい誰なの?姉さん、本当に心当たりがないの?」玲奈は首を横に振る。千尋は玲奈を見て、思わず低い声で尋ねる。「もしかして……茜ちゃんの父からの?」玲奈は一瞬驚いたが、すぐに首を横に振って、「そんなことないわ」と答えた。千尋は最近、智昭の玲奈に対する態度が変
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第680話

「お花はみんなからもらったの」玲奈は返事した。「ママって人気者なんだね!」茜は嬉しそうに言った。玲奈が返事する前に、茜は興味津々な様子で彼女の元に駆け寄って行った。「これは……秋山翔太さんって書いてあるね、あとこれは名前が書いてないね――」三つ目の花束の送り主を確認しようとした時、茜は何かを思い出したように振り返り、玲奈に尋ねる。「ママ、秋山翔太さんって誰?ママの友達なの?男の子の名前に聞こえるよ?」玲奈は表情を変えず、「うん」とだけ頷いて続けて言った。「ママの友達よ」そして、彼女はすぐに話題を変えた。「茜ちゃん、今日はどこかに出かけるの?」茜はすぐに玲奈の手を握りながら、「今日はパパと一緒にママに会いに来たんだよ。ママが行きたいところに行こうよ!」と嬉しそうに言った。そう言うと、彼女は智昭に尋ねた。「そうだよね、パパ?」智昭は笑いながら玲奈を見た。「どこか行きたい所はある?」玲奈はしばらく沈黙してから言った。「映画を見に行きたいわ」玲奈は長い間、映画を見ていなかった。「わかった」その後、三人はどういう映画を観るかについて話し合った。千尋は黙ってその様子を見つめ、視線を三つの花束に向けていた。翔太と瑛二、そして名前を明かさなかった男。贈ってきた花は例外なく、すべて赤いバラだ。彼らが玲奈に花を贈る意図は、千尋には一目でわかる。智昭もわからないはずがない。しかし……玲奈にアプローチしている男がこんなにいると知っていても、智昭は傍らに立ち、全く動揺していない。観たい映画が決まると、玲奈と智昭たちは食事に出かけ、その後映画を見に行った。映画を見終わると、智昭と茜は、玲奈を青木家まで送り届けた。三つの花束について、智昭は最初から最後まで玲奈に特に聞かなかった。玲奈と智昭、そして将吾の3人が関わっている共同プロジェクトは、順調に進んでいる。この日、他の取引先がわざわざA国からきて、今後の協業について詳しく話し合った。会議は終始いい雰囲気の中で進み、取引先はわざわざ玲奈たちに高価なワインを数本持ってきてくれて、会食の時に開けた。玲奈も少し飲んだ。すると、智昭は玲奈の方を見て、急に「このワインは甘みがあるけど、後味がちょっときついね」と言った。これは、玲奈に飲み過ぎないよう遠回し
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