ギャラクティカ本社での凛太郎たちと梅ケ谷の商談からまもなく、各種新聞やネットは、「与党、国家公認の電子決済アプリをスタート」のニュースで持ち切りとなった。「政府による電子決済、是か非か」といった類の討論番組が地上波でもネット番組でも盛んに組まれ、そのほぼすべてに与党公認の旗振り役として江島めぐみが出演した。彼女は東京都知事選には結局僅差で現職の尾池百合絵に敗れ、参議院議員の肩書まで失ってしまったが、落胆するそぶりどころか選挙疲れの色もまったく見せることはなかった。江島めぐみが番組内でのカリスマ性あふれるプレゼンをぶちかます度に、番組のパネラー、観客、視聴者たちは、心を奪われていった。「政界のアイドル」の面目躍如である。見る人が見れば、画面に映るめぐみの背後に、天女のごときオーラを感じたことだろう。「沈みゆく日本経済が、昇り龍のように復活していくようにとの願いをこめて、“りゅーペイ”と名付けました。 仕組みは先行する電子決済サービスであるPpay(ピーペイ)と同じです。法的には『前払い式支払い手段』と呼ばれるもので、日本円でチャージして1円を1ポイントとして使えます… これを毎月、アプリをダウンロードしてくださった国民全員に10万ポイント、つまり10万円分給付いたします。ベーシックインカムのようなものだと思ってください。 …ただし、過度なインフレを防ぐ意味でもこの10万ポイントは有効期限が設けてあり、3か月で失効します。3か月で30万円を使い切ってください…」 ――以下が、その後の新聞や各ネットニュースの見出しの一例である。『政府の公式電子決済 “りゅーペイ” 、全国で流通開始か』『野党は「経済の混乱招く」と反対を継続か』『アプリDL者全員に10万円給付、謎の財源と増税の恐れ』……♦ ♦ ♦ 凛太郎が居候している七海のマンション。リビングでは九頭龍凛太郎がテレビを見るともなしに眺めながらくつろいでいる。凛太郎は、ギャラクティカでの業務終了後、気が付くと九頭龍にチェンジしていることが多い。会社の仕事中は基本的に凛太郎の人格だが、凛太郎が見聞きした内容は九頭龍にも共有されるシステムになっているようだ。逆に九頭龍の|人格《龍格?》が出てきているときはどうかと言うと、最初は凛太郎本人いわく「眠っている感覚」で、その間のことは覚えていなかったそうだ。最
Terakhir Diperbarui : 2025-05-02 Baca selengkapnya