校長は既に勝った気でいる。 人数のアドバンテージに加え、遥か格下の相手をしているという油断。加えて乱子が拘束魔法で私の動きを封じたのも要因だろう。 でも私は気付いたわ。やつらは勘違いをしている。 私に踏んづけられらて意識を失ったシラーは未だ夢の中。そもそもシラーに目眩を起こさせるような能力はない。 やったとすればベリー、もしくは―― 『白緑ぃ~! これ、これ!!』 ベリーが辛うじて動く袖の部分を繊維状にほぐし、こそっと中を見せてくる。 やっぱり! くるくる蓑虫だわ! すっかり忘れてたけど、私はあの頼りになる魔虫を召喚してたんだった。ああ、自分で自分を褒めてあげたい。グッジョブ私! 肩も足も痛いけど銃創がなんだ。くるくる蓑虫さえいればこっちのものよ。覚悟してなさい。『ベリー、私が合図したら全力で回転するよう、くるくる蓑虫に伝えて」『ええっ、全力!?』『死ぬよりましでしょ!』『そりゃそうだけど……どうなっても知らないよ』『かまわないわ!』 あとは少しでいいから時間を稼がなくちゃ。 てなわけで披露してあげようじゃない。何十年と種族や性別を偽り続けた私の演技力ってやつを。「全部乱子の手の平の上だったってわけね……」 観念したように天井を見上げ、それからゆっくり目を瞑り、ため息と共に肩を落としてみせる。「まさか親友に売られるなんて。何だかんだで乱子とは死ぬまで楽しくやってくもんだと思ってたわ」「あら、私もよ。じゃあこのまま死ねたら白緑も本望ね。だって私、今と~っても楽しいもの」 ハートが何百と飛んできそうな語尾ね。ふんっ、ほざいてればいいわ。目にもの見せてやるんだから。「これが親友の会話とは。やはり魔女は醜い」 校長の嫌悪が凄い。よくもまあ人をそこまで蔑んだ目で見られるものだ。そこらの魔女よりこいつの方が、よっぽど魔女の素質がある。 「同感ね。生まれ変わったあと、この学校に入れば多少ましになるかしら」 ま、私は聖職者の半分は偏見を理由に魔女を志さなかっただけで、ベクトルは違えど中身の腐れっぷりは同じだと思ってる。阿叢なんかがいい例だ。 むしろ、きちんと悪事を働いている自覚のある私のような魔女の方が何億倍も誠実だわ。「残念だけどそれは無理よぉ。天使校長の聖剣で貫かれた魔女はぁ、魂が裏山の花畑にある御神木に封印されちゃうん
Last Updated : 2025-04-18 Read more