遙華はじっと冬夢を見つめていた。その目には自分のことしかなかった。手をギュッと握りしめながら、遙華は心の底の複雑な気持ちを抑えた。冬夢が自分のことも、自分の娘のことも大切にしているのは知っている。しかしそこまで大切にしているとは思わなかった。自分の娘を実の娘のように可愛がってきただけでなく、娘の1歳の誕生日のためにそんなに手間のかかる準備をしているとは。もし娘と自分に出会わなかったら、冬夢のような男はきっとモテるだろう。それなのに自分を選んでくれたなんて。言葉ではまとまらないくらい色々な感情が混ざっていた。しばらくしたら、遙華は一言しか発さなかった。「なんでそこまで……?」「遙華、僕のしているすべてがちゃんと考えてから決めたんだ。遙華とこの子に出会ったことに後悔したことは一度もない。もうこの子の産まれた日と生後1ヶ月の記念日を見逃したから、今回の1歳の誕生日は絶対に見逃したくないんだ」遙華は涙を堪えて、冬夢を抱きついた。時間が流れていき、遙華はようやく細い声で、「ありがとう……」と言った。遙華の娘の1歳の誕生日パーティーに、たくさんの人がお祝いに来た。みんな素直に祝福して、くれたプレゼントもどれも素敵だった。冬夢は片手で娘を抱き上げながら、片手で遙華と手を繋いで、来てくれたゲストに1人ずつ挨拶をした。1歳の誕生日に、娘のあだ名も決められた。「安ちゃん」という名前だった。遙華は娘に多くは求めていなかった。ただ安泰な人生を歩んでほしいだけだった。パーティーの途中で、会場の前からいきなり騒ぎが起こっているような物音がした。すぐに、パーティーの担当者がやってきて、ひそひそと冬夢に耳打ちをした。冬夢の顔色は微妙に変わった。そして担当者に「先に警備員にそのままあいつを止めてもらって。すぐに行くから」隣りにいる遙華は一瞬で誰が起こした騒ぎか分かった。遙華は冬夢の手を引っ張って、「やっぱり私が行こう。私の原因もあるし」と言った。冬夢は反対しているような顔をしたが、遙華は自分の手をポンポンと叩いた。「大丈夫。ちゃんと自分の身を守るから」会場の外の隅っこで、景市は何人かの警備員に椅子に固定された。やってきた遙華を見て、景市は冷静を失い、椅子から立ち上がろうとした。「遙華!」しかし遙華の次
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