詩織の子を始末した後、海斗はずっと罪悪感を抱いていた。何日も経ったが、毎晩のように詩織の涙で濡れた瞳が夢に出てくる。最初はか弱く訴えかけるような瞳だったのに、それが急に憎悪に満ちた恐ろしい形相に変わるのだ。彼が詩織と知り合ってから、まだ日は浅い。普通に考えれば、彼の道徳基準からして、知り合ったばかりの女に対して同情心など抱くはずがない。だから彼自身も、なぜこんな気持ちになるのか理解できなかった。海斗は、これは単に自分の良心が目覚めただけなのだろうと思うことにした。なにしろこの一件は、紛れもなく自分が引き起こしたことなのだから。夜ぐっすり眠るためだけに、詩織にこれらの健康食品を送ろうと思ったのかもしれない、とさえ思った。詩織はそれを受け取ると、電話で彼を散々罵った。そして、言い訳する間もなく、怒り狂ってそれらを投げ捨てたのだ。しかし翌日、彼女はまた海斗から連絡を受け取った。彼は本当に、自分がどれほど彼を憎んでいるか、全くわかっていないようだった。ふざけるな。詩織は海斗のボイスメッセージを最後まで聞かずに、すぐに彼をブロックした。......玲奈が正式に首席奏者に任命された日、彼女はことさら派手に、楽団の全員に彼女のための祝賀会を開くよう要求した。大勢の視線が集まる中。彼女は詩織の前に歩み寄り、まるで尾羽を広げたクジャクのように笑いながら、丁重に「詩織、来てくれるでしょ?」と言った。由美は、詩織が思わず彼女に平手打ちを食らわせるのではないかと心配し、必死に彼女を押さえていた。しかし詩織には少しも怒る様子はなく、逆に微笑んで言った。「ええ、もちろん。必ず行くわ」詩織はわかっていた。これは玲奈が、楽団の全員の前で、わざと自分に恥をかかせようとしているのだと。だけど、その思惑通りにはさせない。詩織は行くだけでなく、しかも、盛装して出席するつもりだった。......佳澄と詩織の体型は、ほぼ同じだった。大物が金を出して玲奈を後押しし、そのおかげで彼女が今回の首席選考で勝ったと知った時、佳澄の怒りは一気に込み上げてきた。詩織も腹を立てていて、「今回はとびきりのおしゃれをしていく」と言った。玲奈にみすぼらしく思われたいのなら、逆に会場で一番輝いて見せると。「そうね、応援
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