彰人は別荘中を探し回ったが、あの離婚届受理証明書以外、詩織は驚くほど何も残していなかった。彼らの結婚写真でさえ、彼女は自分の半分を切り取っていた。しかし、彼にはまだ理解できなかった。なぜ彼女が突然、黙って去ることを決めたのか。じっくりと思い返してみて、彰人はようやく彼女の異常に気づいた。それは一ヶ月前から始まっていた。彼女が彼に無数の電話をかけ、しかし彼が一度も出なかった、あの時から。あの日、彼女が彼にサインさせた書類のこと、そして後日、その書類が引き出しから彼の足元に落ちた時、彼女が素早く書類を引き抜いた様子を思い出した。それで突然、理解した。あれはおそらく離婚協議書だったのだ。「中身も見ないなんて、この書類であなたが破産するかもしれないわ。怖くないの?」彼女の言葉がまだ耳に残っている。あの時、彼は何を考えていたのだろうか?結局のところ、彼にはやはりいくらかの後ろめたさがあった。なにしろ、彼がいなかった間、実は紗雪に付き添っていたからだ。だから彼は言った。「僕のものは君のものだ。これから赤ちゃんが生まれたら、君たち二人のものになる」しかし彰人も知っていた。詩織はそういう人間ではない。彼女がせいぜい要求するのは、少し高価なプレゼントくらいで、彼を破産させるようなことはしないだろうと。彼は賭けに勝ったが、同時に賭けに負けてもいた。彼の財産は一銭も減っていなかった。減ったのは、ただ詩織だけだった。......詩織は彰人が探しに来るとは思ってもみなかった。研究所は部外者の立ち入りが禁止されているため、彼はスポンサーという身分で入ってきた。彰人が来た時、詩織はちょうど藤堂司と身を乗り出して、最近直面した難題をどう解決するか相談しているところだった。不意に声をかけられて顔を上げると、少し顔色の悪い彰人が見えた。詩織の心臓がどきりと跳ねたが、今はもう二人に関係がないことを思い出し、自分を意気地なしだと心の中で罵った。「橘さんが詩織くんに会いたいと言っているんだ。本来は会わせたくなかったが、提示された条件が破格でね。最初の資金提供だけで1億円だ。しかも契約を結んだらその場で振り込まれた。後で必要なら追加の資金提供も可能だと言っている」「詩織くん、君に会うために大金を投じているんだ。橘さんと少し話してみ
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