離婚後、元夫の溺愛が止まらない のすべてのチャプター: チャプター 191 - チャプター 200

真依が好きなあの歌は、実はとてもマイナーなものだった。それに手袋、そしてあまりにも偶然の一致である日付を考えると、彼女はそれが偶然だと自分を納得させることができなかった。「残念ね。あの人って本当に格好いいのに。ところで、瀬名社長と......どうなの？」紗月の声が少し低くなった。真依は少し考え込んでから言った。「まあね」しかし尚吾の今の行動は、彼女から見れば、今さら愛情を示されても、もう何の価値もない、というものだった。「忙しくなるから、夜に電話するわね」真依は俳優たちが次々と車内に入ってくるのを見て、慌ただしくそう言い終えると、電話を切った。怜は真依が電話を切るのを見て、数歩つい

尚吾は眉をひそめたが、答えなかった。怜はもう、真依を家族に会わせる段階まで進んでいるのか？尚吾が考え込んでいる間、真依も何も言わなかった。二人は待合室に入り、尚吾は座って真依を見た。「今回の仕事が終わったら、俺の方で一つ仕事があるんだが......」「やめて。私たち、やはり絡まない方がいいわ」真依は慌てて彼の言葉を遮った。彼と組むと何度も不運に見舞われるので、真依は本当に彼と協力する気はなかった。「今回は絶対に迷惑をかけないから。その仕事は確かにとても重要なものなんだ」尚吾は真剣な顔で真依に言った。「お断りよ」真依は考えもせずに彼に答えた。尚吾はたちまち言葉に詰まった。彼は真

半月はあっという間に過ぎ、撮影チームの方ではすでにクランクアップの準備を始めていた。真依は最近、暇になった。怜はクランクアップ後一週間以内に、彼女を実家に連れて行き、宮野祖母の採寸をする約束をした。この日、撮影現場でサボっていた真依は、突然紗月から電話を受け取った。「真依、大仕事が来たわよ！」紗月の声には興奮が満ちていた。真依は呆然とした。「何？大仕事が来たの？」「女優の桜井葉月（さくらい はづき）のこと、知ってるでしょう？」紗月の声には笑みが満ちていた。真依はもちろん知っていた。葉月はハリウッド映画にも出演し、賞まで獲得した、国際的な大女優だった。「彼女が今日、直接私に電話をかけてきて、六月に国際的なレッドカーペットがあるから、あなたにドレスをデザインしてほしいって。レッドカーペットに参加する出席者全員を圧倒するようなドレスをって」紗月は興奮しきって言った。真依は心の中で思った。全員を圧倒するなんて、さすがに少し荷が重い。しかし今はまだ二月にもなっていない。六月までには数ヶ月のデザイン期間がある。「もう、あなたにデザインを依頼してきた全てのブランドを断って、桜井さんの依頼を引き受けたわ。もしあなたのデザインが彼女を国際的に群を抜いて輝かせることができたら、私たちの氷月はブレイクするわよ」紗月はもう夢まで見ていた。真依は「うん」と唸り、口を開いた。「分かったわ」しかし怜の祖母の件を思い出し、真依は少し困ったと感じた。怜が撮影を終えた後、真依は自ら彼にこの件について話しかけた。「橘陽がちょうど私に相談してきたんだけど、桜井葉月さんのデザインを引き受けたから、残念ながらおばあ様のためにデザインすることは難しいかもしれないって相談してきました。だから、もし氷月スタジオの他のデザイナーでよければお受けいたしますけど......いかがですか？」口約束で決めたことでも、やはり撤回する機会はある。ましてや、その時真依も言葉を濁しており、もし途中で何か変更があれば、お年寄りのためにデザインできないかもしれないと言っていたのだ。「桜井さんは大物ですね......」怜も真依の困惑を感じ取っていた。何しろ桜井葉月は業界で、誰もが取り入ろうとする相手なのだ。そして氷月がスタジオの未来のために、先に大物女優のデザインを選ぶのは、ごく普通のことだ。「分か

「社長」寛貴は恭しく呼んだ。「今日は会社には行かない。広報部に、俺が以前書いたブログ記事を公開させろ」尚吾はそう言い終わると、電話を切った。尚吾が一体どこへ行ったのか、誰も知らなかった。真依が朝食を摂り、デザインの構想を練り始めた時、アシスタントが興奮した顔で駆け込んできて言った。「瀬名社長の会社が声明を出して釈明しました！真依さんとはいとこ関係ではなく、真依さんに拒否されただけですって」「わかった」真依は淡々と返事をした。アシスタントはがっかりした顔で彼女のオフィスを後にするしかなかった。真依はINSすら見ず、直接INSをアンインストールした。彼女は紗月にメッセージを送った。【当

「俺は一度も玲奈を好きになったことなんてない」尚吾は強調した。「以前私があなたに、どうしてあのウェディングドレスが一億四千万円なのか尋ねた時、あなたは知らなかったわね」真依は尚吾の目を見て、笑顔が少し苦々しくなった。「あれは私たちの結婚記念日よ。私がかつてあなたに話したウェディングドレスなのに、藤咲さんが気に入ったからって、あなたはスタジオに売らせたのよ」尚吾の目は激しく揺れた。真依は視線を逸らし、言葉を詰まらせながら、続けて言った。「ウェディングドレスが売られたあの瞬間、私は過去を捨てて、自分の新しい人生を迎えたのよ」「どうして俺に言わなかったんだ？」尚吾の喉は硬直した。真依は口