裕蔵は顔色を固めた。友人たちは興味津々な顔をして、彼を見守っていた。「初めてブロックされたのか?でも、七海って、裕蔵のこと好きだったんじゃなかったっけ?どうしてブロックしたんだ?」「そうだよね、まさか……」と一人の友人が気づいたように言った。「もしかして、客船で裕蔵に服を脱がれたことを、まだ怒ってるのか?」裕蔵は急に胸騒ぎがする。ああ、そうだ。客船で起きた出来事は多すぎて、ほとんど忘れていた。でも、海に飛び込んでネックレスを探す前に、春妃の服を皆の前で脱がせてしまったことは、覚えていた。その瞬間、裕蔵は無意識に拳を握りしめた。あの時、本当に怒りに駆られていた。遥が残したネックレスも、その服も、彼にとってはとても大切なものだった。でも、いくら怒っていても、春妃の服を公然と脱がせるつもりなんてなかった。ただ彼女に着替えさせたかっただけだ。でも、彼女の頑固さで、引っ張った時に服が破れてしまった。ただ、考えてみるとおかしい。その服は長年誰も着ていなかったが、ずっと大切に保管していたはずだった。そんな簡単に破れるはずがない。しかも、あの服は確か、金庫に保管していたはずだ。金庫の暗証番号を知っているのは、限られた人間だけだったのに、春妃はどうしてそれを手に入れたのだろう?あの時は怒りに任せていたが、今考えると、この出来事には何か不自然な点があるように感じる。彼は急いで春妃に真相を問いただしたいと感じた。そうして、ベッドから起き上がり、医者に向かって言った。「退院します」すぐに別荘に戻った。実は、数日間も家には帰っていなかった。最初は奈々の火傷で夜中に呼ばれて行き、その後は遥の命日で喧嘩をして入院した。そして、オークションのこともあった。家に戻ったら、春妃がいると思っていたのに、寝室のドアを開けると、部屋は何もかもが空っぽだった。彼は驚いて立ち尽くした。すぐに家政婦を呼び、言った。「春妃はどこだ?」家政婦はびっくりした表情で、答えた。「七海さんですか?数日前に引っ越していきましたよ」
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