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Lahat ng Kabanata ng 現実恋愛 図書館: Kabanata 1 - Kabanata 10

11 Kabanata

憧れの人はもういない

 憧れている女性がいた。 必死に頑張って、就職氷河期と呼ばれている中、自分が入りたい会社へとどうにか滑り込み入社できた。 俺は現在24歳会社員。花形と言われる営業職どころか、日陰の庶務管理課という部署で毎日雑務に追われる生活をしている。名前はあまり会社の人にも覚えられてはいないけど、三門徹《みかどとおる》という立派なものを持っている。 とはいえ、生まれた家は立派な家柄とかじゃなくて、平凡なサラリーマン両親の元に生まれただけの、本当にどこにでもいる一般人。――こんな会社に入れただけでも、満足しなくちゃいけないんだけどね……。 などと考えてはいるモノの、仕事の方が順調かと問われると、全然ダメ……とは言わないまでも其れなりにはこなせていると思う。 そういうのも、この会社に入って既に2年が経過しようとしているのだけど、一向にやる気が上がらない。 その原因になっているモノは分かっているんだけど、既に自分では対処のしようがないのだ。「徹君聞いてる?」「は、はい!! すみません!!」「まったく!! 昔からそうだったけど、もう2年目なんだからしっかりしなきゃダメよ?」「……本当にすみません……」 我が課の中に入って来て、色々な事を頼んできていた1歳年上の先輩、下条楓《しもじょうかえで》さん。  スーツを着ているからというのもあるけど、体のメリハリがよく分かる上に、少し茶色がかった腰まで伸びた長い髪。小顔と言えるほど小さな顔に整ったパーツを備えている。もちろん会社の男性陣も彼女の事をみんなが狙っている。所謂会社のマドンナ的存在。それが彼女。容姿だけでは無くて仕事の能力も高いと来ている。所属している開発部の中では次期エースとしてその名が上がるほど、会社の中では有名な人なのだ。「ちょっと!! 徹君さっき言ったのにまだやってないの!?」こげ茶色の混じった大きな瞳を俺に向けながら、驚きの声を出す下条さん。「す、すみません!!」「まったくもう……あなたは変わって無いわね。高校の時から……」 そんな事を言いながら大きなため息をついて、くすくすと笑いだした。 俺と下条さんは同じ高校の先輩後輩。なので知っている仲ではあるのだけど、それだけの関係ともいえる。――俺には憧れの先輩で有る事は変わらないけどな。 下条先輩との出会いは俺が高校へ入ってすぐの事。
last updateHuling Na-update : 2025-05-12
Magbasa pa

さくらかほる風のいたずらが僕達の出会いを生んだ

 春風に舞う薄桃色の波の中で、静かに佇む君がいた。 近年には無く少し厳しめの冬が過ぎ、もうすぐ春の到来を告げる風がまだまだ体に震えを与える頃、僕は新しい生活に疲れいつも独りきりだった。 ようやく決まった就職先。苦労して大学に進学して、苦労して就職活動を終え、今度は就職先で新しい環境になれるまで時間がかかった。勿論周りは知らない人だらけ。慣れ親しんだ場所から引っ越し、これから先の事なんて考える余裕もなく、『慣れろ』という一言を言われただけで過ごす毎日。自分の中を通り過ぎていくそんな空っぽな日々に疲れていた。 社会人として一年が過ぎ、ようやく自分の後輩が入ってくるという時になって、ようやくこのままでいいのかな? なんて考え始めた俺。 篠宮竜太《しのみやりゅうた》23歳。何も予定の無い休日に公園で独りベンチに座り、体にまとわりついて離れない風に少しだけ身震いする。――もうすぐ春が来るのか……。 ここ最近でようやくできた少しの余裕。その為に感じる事の出来なかった季節の移り変わり。いつの間にか通り過ぎていく暑さも寒さも、本当に何も感じる事無くただただ『生きていた』だけに過ぎないと気付いた。 ひゅ~―― という冷たさの乗った風がまた拭き始めたとき。「きゃっ!!」  俺の近くにあった、もう一つのベンチの側から声が上がる。 その拍子に自然とその方向へと視線を向けると、自分と同じ歳くらいの女性が長いスカートに手を当てて風で捲れるのを防いでいた。  その風によって流れて揺れる長い黒髪。さらさらとした中でもきらりと輝いて見えた。「もう!!」 そう言いながら過ぎて行ったいたずらな風に文句を言いつつ、着ているモノを直す女性。「「あ!!」」 視線を上げた女性と、その様子を見ていた俺の視線が合わさる。瞬間に「まずい!!」と思いサッと視線を逸らす俺。 一瞬しか見えなかったけど、女性は小さな卵型の顔に色白な肌で、赤い眼鏡をかけていた。女性は大きな咳払い一つして、そのま
last updateHuling Na-update : 2025-05-13
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物語の主人公じゃない脇役でしかない俺だけど幼馴染をヒロインにしてあげたい

    本当に小さい頃、いつも一緒に遊んでいた友達がいた。本当に仲が良くて毎日の様に夕日が山に沈んで辺りがオレンジ色の光から黒くなり、やがてうるさかった街の音も静かになる頃になって、ようやく泥や土まみれの体をお互いに自慢するようにして家路についていた。 俺、今井隆志《いまいたかし》は何処にでもいる……というには少し意見があるかもしれないけど、本当に何も自慢する事のない、容姿も地味で勉強もできる方じゃないし、運動だって人並み。100m走でクラスの中でも5番目位に速かったのが唯一自慢できることだが、それも高校生になった今になると『自慢』には既に入れることが出来ない。 そんな俺にも実は自慢できることはある。それが幼馴染達だ。 というのも俺が住んでいる地域は地方のそのまた地方で、街中へ買い物に行くにも必ず車は必要になるし、町に行く事よりも山に行く方が時間がかからない。更に言うと誇張でもなんでもなく『隣の家』なんて聞こえはいいが、実は歩いて5分程度かかる場所まで行かないとお目にかかる事が出来ない程の町……いや村かな? そんなところに住んでいる。 そんな俺の地元でも、俺の同級生の中では飛びぬけて有名な奴らがいる。それが前もって言っていた幼馴染たちなのだ。 正直に言って、俺がそいつらと幼馴染なんてことを言っても信じない奴もいる。そして……俺もそんな奴らと同じくらい信じられないのだから、自分でも笑う事しかできない。「たーかしっ!!」「ん?」「何か考え事?」「いや……うん。そうだな考え事だ」「聞いちゃっても良い事?」「どうだろな……」 地元でもそこそこ名のある高校へと進学した俺だが、そこには何故か幼馴染二人も一緒に合格してしまう。 まぁ地元にいて選択できる学校も少ないという理由はあるけど、俺よりも成績がいい二人がなぜか一緒にいるのだ。
last updateHuling Na-update : 2025-05-16
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隣の席のやつがいきなり俺にマウント取ってきた!! いやいや勘違いしてるみたいですけど俺達そんな関係じゃないですよ?

  毎日夜遅くまで働いて、家路につくのが当たり前になりつつある最近では、自炊なんてする暇も余裕もなく、いつも住んでいる場所にたどり着く前に外食で済ましてしまうようになって早3年。  社会人になってすぐのころはそれでも頑張って自炊をするようにしていたのだけど、仕事に慣れて来たと思った時には、慣れた分だけ仕事量が増し、ようやく机に溜まった書類の束などを片づけ終わる頃には、既に自炊しようとは思わなくなってしまった。 今日も今日とて、家路へと続く道をとぼとぼと歩きながら、夕食をどうしようかと考える。家族からも食生活を心配されているので出来ればコンビニ飯にはしたくない。――仕方ない……。今日もあそこに行くか……。 ため息をつきつつ、住んでいる場所へと向かっていた足を、目的地方面へと進路変更し歩き出した。 元寄善人《もとよりよしと》26歳。ウチに帰っても誰もおらず、もちろん夕食を作って待っていてくれる女性《ひと》もいない。もちろん独身彼女無しが今の俺なのである。 からからからちりりぃ~ん……。 繁華街からは少しばかり外れてはいるけど、周囲には大衆食堂やラーメン屋さんなどが並んでいて、繁華街でお酒を飲んだ後の人などが立ち寄ることが多い、少し細い路地を入った所にある一軒の小料理屋。 そこまでたどり着いて暖簾をくぐり、少しばかり年季の入った引き戸を引いた。すると出入りを知らせる澄んだ鈴の音が店内に響く。「こんばんは……」「あら、いらっしゃい!!」「空いてる?」「もちろん!! 今日もお一人様?」「見た通りです……」 挨拶すると、カウンター越しから元気な声が聞こえてくる。店主で女将さんがニコリと招き入れてくれた。「ここどうぞ」「あ、ありがとうごいざいます」「いえいえ」 女性店員さんがスッと俺に近づいてきて、カウンターの一番端の席へ
last updateHuling Na-update : 2025-05-19
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知らないところで隣の席の女子から好かれていた

  お昼を食べた後の5限目の現国の時間はとても眠くなってしまう。先生が黒板に書きだしていく『カリカリ』という音も尚睡魔を呼び寄せる。そんな日常的な時間。 「ふぁ~~いぃ」 俺は大きなあくびをしながら、少しだけ涙ぐんでしまった目をこする。「クスクス」「ん?」 隣から小さな笑い声が聞こえてきて、チラッと視線だけを聞こえてくる方向へと向ける。   佐藤真《さとうまこと》という、とあるアニメの主人公と名前は一文字違いの俺は、その事でいじられる事もあったけど、通う学校も何も問題の無いいたって普通の学校。特段勉強ができるわけでも無ければ、運動することに自信があるわけじゃない。 だからこそ進学するときにはできる限り普通の学校を選択したわけだけど、それでもやっぱり『放課後デート』なる魔法の言葉に興味がない訳ではない。 但し、それは『彼女がいる』又は『モテる』ヤツ、所謂リア充という種族だけが仕える魔法であり、自他ともに地味目のちょっと上程度を認定してしまえる程『何も持っていない』俺には使えそうもない魔法である。 因みにこの学校の男女比はほぼ1:1なので、自然と隣り合う席には女子が座る事になるのだが、高校2年の春だというのに、席替えの度に隣の席になる女子とはそんな雰囲気になった事は無い。 今も、教室の窓から見える外の景色の中には、綺麗な淡い薄桃色の花が咲いているというのに、俺の恋人作る活動――自分だけの略語で『恋活』――は未だに蕾すらつける気配が無い。「真君眠そうだね」「え? あぁ……この時間の現国は地獄だな」「わかるぅ~」 そういうとまたくすくすと笑いだす、学年が上がってクラスが変わった時から隣の席の斎藤由佳《さいとうゆか》。 彼女は小柄ながら(身長は良く知らないけど)バスケ部に入っているほどの元気な女の子。太陽にあたると栗色に光るショートカットに、大きな黒い瞳をしていて顔は小さい。元気があるおかげでクラスの奴らとも直ぐに仲が良くなったようで、誰からも頼られるちょっと姉御肌な性格の持ち
last updateHuling Na-update : 2025-05-26
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放課後の昇降口にいつも一人でいる学園マドンナの七瀬さん

  その女の子《ひと》は放課後、皆が帰る背中を見ながらいつも一人っきりで誰かを待っていたんだ――。  突然だけど、学園のマドンナと呼ばれる存在が自分たちの通う学校に居るだろうか? 俺、日立春花《ひたちはるか》が通っている双葉学園高等部には、誰もがその存在を知っている女の子が存在する。 学校自体はそんなに特徴のある学校じゃない。進学校として名が知られているわけじゃないから生徒の学力もそこそこだし、スポーツに関しても何年か前に野球部が県のベスト16に残ったというのが唯一の実績。つまりあまり力を入れているわけじゃないって事。  ただそんな我が学園にも有名な事はある。それがこの学園のマドンナの存在だ。 名前は確か……七瀬茜《ななせあかね》さんだったかな? 普通といっても差支えの無い学園内でも学年ではいつも成績上位に入り、運動をさせればトップクラス。そして何よりもどこぞのアイドルグループにいても遜色のない程の容姿端麗らしい。それでいて誰とでも分け隔てなく接してくれるという事で、自分の学校の中だけじゃなく他校からもその存在をわざわざ見に来る人が居るほど、その子の事は有名なのだ。 どうしてらしいなんて言うのかというと、勿論平凡な学校の平凡な生徒の一人であり、あまり目立つことの好きじゃない俺には、その存在自体と全く関わり合いが無いから。 だからその子の事は、噂は耳にする事が有る。あるけど実際に話したことが無いからどんな子なのか分からない。 もちろん偶然にも同じ年に入学したのだから学校内でも見かける事はある。その程度の間柄ともいえる。こちらは向こうの事を知っていても、向こうは俺の事など存在すらも知らないだろう。 そういう関係――なんて事も言っていいのか分からないけど――が既に2年過ぎた今でも続いている。――住んでいる世界が違うとはこういう事だろうな。 なんてことを思いつつ、今日も仲良くなったクラスメイト数人と放課後になって遊びに行くため、一緒に昇降口へと降りていく。「おい……
last updateHuling Na-update : 2025-06-01
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何処から流れたのか知らないけど、いつの間にか俺に彼女が出来たという噂があるらしい

    自慢するわけじゃないというか、恥ずかしい話だけど高校二年生になった今に至っても、彼女が出来るどころか、クラスの女子達との会話でさえままならないというのが、|常盤正英《ときわまさひで》という男子高校生である俺の客観的立場から見た評価だろう。 事実、朝登校してから女子と会話することなく一日が終わるというのは毎日恒例だし、何か用事があって話さなきゃいけないときも、余計な事など言える訳もなく、本当に用事をこなすだけの会話しかできない。  そんな俺だから、自分に『彼女が出来たらしい』という噂が上がっている事にかなり驚いたのは言うまでもない。 事の起こりは、何も起きない一日を十分に謳歌していた平日の昼休み時間だった。「おい正英!!」「ん?」 声を掛けてきたのは一年の時からのクラスメイトで、俺は一方的に友達だと思っている|吉田疾風《よしだはやて》。クラスの女子達からも、甘いマスクにふわっとした血筋譲りの茶色い髪を無造作に切りそろえただけなはずなのに、モデルをしていてもおかしくないと評価されている、所謂《いわゆる》一軍に所属する男子だ。ただ本人はそんな外野の声を気にした様子はなく、陰でも陽でも分け隔てなく接して誰とでも仲が良い良い奴なのだ。 ただなんでも、自分の中で流れる欧州血筋の先祖返りの影響で、天パぎみの髪の毛が悩みの種だと、ちょっと影を落としながら話した時の顔は怖かったのを今でも忘れない。「おまえようやく彼女出来たんだって!?」「はぁ!? なに? 嫌味か?」 昼休みの休憩時間に、購買人気ナンバーワンの焼きソバパンと第二位のナポリタンパンをゲットしてほくほくした心でかぶりついていた俺の前に、ニコニコと満面の笑みを浮かべながら、前の席の椅子をガタガタと大きな音を立てながら引き、そこに勢いよく俺向きになりながら座る疾風。「か・の・じょ!! できたんだろ? 隠さなくてもいいだろ?」「いやいやいや!! 隠すも何も……出来てないし……」「はぁ
last updateHuling Na-update : 2025-06-08
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池谷君は体育祭でポーカーフェイスを決め込む

   俺、池谷晴弘《いけたにはるひろ》は現在とても集中している。 我が高校では、秋のイベント体育祭の真っ只中である。行事の中では修学旅行などと並び大行事なわけだが、ウチの高校ではこの体育祭が一番盛り上がるといっても過言ではない。 それはナゼか――。 種目の一つに借り物競走というモノがある。普通の借り物競走は、色々なものを会場内から借りてきて順位を争うわけだが、ウチの学校でも普通の借り物競走もある。しかし、そのレースの中で2つだけ特殊なものが入っている。 それが『告白レース』と名付けられているモノ。 簡単だ。男女1レースずつ。好きな人が居る人しか出場する事ができない。 そしてその出場者が好きな人を連れてゴール出来たら、告白成功で順位がきまる。中には撃沈する人もいるが、その場合は棄権扱い。もちろん順位はない。 そんなわけで、現在はその女子レースが行われる準備段階に入っているのだが、どうして俺がここまでレース前の段階で集中している理由。  もうお分かりの通り好きな子が出る予定だから。  それがクラスメイトで、周りからは地味子といわれている丸眼鏡が良く似合う、黒髪ロングをポニテにして存在なさげにしている|小向比奈《こむかいひな》さん。 いつもは髪をバサッと下ろしているので、あまり知られてないが、実は凄くかわいい子なのだ。――まさか彼女が出るなんて……。 高校生ともなれば好きな人が居ても普通の事。でも小向さんが男子と話をする事はあまりない。というよりも、地味子といわれるくらいだから、あまり話をしようと近寄る生徒も男女問わず少ないのだ。「俺ってことは……ないよなぁ……」 本音が零れる。 周りは雰囲気に熱気を帯びているので、誰も気づいてはいない。それはクラスのマドンナが出場しているという事もあるんだけど。 そうこう考えている内に、もう彼女の出る順番が回ってきた。
last updateHuling Na-update : 2025-06-15
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池谷君は星座占いが元で見つめられる

   目の前の席にて、俺の方へ椅子の背もたれに両腕を乗せながら、微笑む女の子にジッと見つめられている俺、|池谷晴弘《いけたにはるひろ》は現在戸惑っている。 外吹く風も枯葉を巻き込み吹きすさぶ季節の、午前中のとある休み時間。授業の繋ぎ時間だったはずなのだが、とある陽キャ達によりその状況は一変する。「おい、今日の獅子座生まれと魚座の人と進展ありって書いてあるぞ。お前魚座だったよな?」「いや、惜しいけど俺みずがめ座」 男なのに星占いを気にするなよなどと言葉で盛り上がりを見せる、陽キャクラスメイトを遠巻きに眺めていた俺。――そんなわけねぇだろ……。 心の中で悪態をついていた。心の傷はそう簡単にうめられるもんじゃないんだぞ!! などと思ってしまう俺。奴らは知らないとは思うが、実のところ俺は獅子座生まれなのだ。「おい!! 誰かクラスの中で獅子座生まれいないか?」 盛り上がっている生徒の中の一人が声を上げた。 「俺がそうだけど!!」「わたしも!!」 男女問わず声が上がるも、勿論俺が声を上げる事は無い。「池谷」「ん?」 俺の前に座っていた唯一の友達が、俺の方へ顔を向けつつ話しかけて来た。「お前、獅子座生まれだったよな……」「そうだけど……なんだよ?」「いや……」 チラッと俺から視線を外すと、ぼそっと言い捨てて前方へと向きを戻した。――なんだコイツ。  そんな事が有ったその日の昼休み。 件の友達が、その隣に座っている女子生徒に話しかけていた。チラッと確認する俺。時折その友達が俺の方をチラッと見るので気にはなったが聞く事はしない。 そして頷きあうと、俺の肩をポンと一叩きして教室から出て行った。――なんだ? 去って行く後ろ姿を見ていると、近くから声が掛けられる
last updateHuling Na-update : 2025-06-18
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柏崎さんは池谷君のポーカーフェースを崩したい

  「ねぇ池谷……」「なんだよ?」 わたしの斜め後ろの席で、私の方へと顔を向けながらぶっきらぼうな返事をする池谷。「私、次の日曜に暇なんだけど?」「あん? 出掛ければいいだろう? 柏崎は友達多いんだから……」「はぁ……」 池谷からの返事に大きなため息を吐く。――いや、分かってたけど……ここまで鈍いとは……。 私は心の中でまた一つ大きなため息をついた。  池谷を他の女子達がどう思っているのか知らないけど、私は昔から良い奴だという事を知っている。とはいえ幼馴染という訳でもなく、住んでいる場所もちょっと離れているので、学校で顔を合わせるくらいの関係。一緒のクラスになった事もない。だから高校で池谷と同じクラスになれた事で、自分の部屋の中で大声で喜びの絶叫をしまったのは内緒だ。――しょうがないじゃない……。好きなんだもん……。 結局は、あの後も進展のないまま一日が終わってすでに放課後。独りでとぼとぼと帰り道を歩いていると、少し離れた前を池谷と、私の席の隣で唯一池谷と仲がいい友永《ともなが》が歩いていた。静かにその後を追う私。 家路の途中にあるコンビニに二人で入って行くので、そのまま後を追い、隙をついて友永に語り掛ける。「友永……」「うお!! なんだ柏崎かよ……」「何してるの?」「飲み物買いに寄ったんだけど……?」 友永がそう言いながら、何やらニヤッと笑う。「ははぁ~ん?」「なによ?」「たぶん漫画読んでるぞアイツ」「…………」 無言で友永を睨む。「じゃぁ後は宜しくな!! 池
last updateHuling Na-update : 2025-06-20
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