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現実恋愛 図書館 のすべてのチャプター: チャプター 11 - チャプター 12

12 チャプター

柏崎さんは池谷君にひまわりを貰う

  「なぁ柏崎……」「なぁに?」 振り向いた私の姿に、池谷が少しだけ顔を赤らめスッと視線を外す。 鈍い池谷を強引にデートへと誘った私は、そのデートの最中である。 日常で見ている学校の制服と違い、池谷は黒ジーンズに青いニットのセーターを併せ、ジャケットをその上に羽織るという、いつも通りと言わんばかりの格好。 私は初デートだからと、この時の為に買った薄いピンク色のワンピースを着て、その上にふわっとした印象を与えるようにと白いセーターを着ている。足もとも歩き疲れない様にと悩んでショートブーツ。 自分なりに目一杯おしゃれしてきたつもり。――ちっともこっちを見てくれない……。 私の方へと視線が向きそうになると、無理にフイっと顔を背けてしまう池谷。どこか変なのかなと不安になってしまう。「そろそろ休憩しないか?」「うん……そうだね。そうしよっか!!」 池谷の好みもまだ良く分からない私は、初デート場所として近くにあるショッピングモールへと池谷を連れて来た。 お店を見て回るうちに池谷の好みも聞きだせるし、一石二鳥かな? という考えから選んだのだけれど、私の目論見は直ぐに外れる。「俺……目当てのモノを買う為に来る位で、買ったらすぐ帰るから、あんまり興味ないんだよな。服とかもそうかな」「はぁ!?」 などという会話をお店の立ち並ぶ通路の真中で、池谷に「ぶっちゃけさ」と言われてしまったのだ。 とはいえ、せっかく来たのだからと、池谷を引きずる様にしながら二人で見て回る。私は気になってしまった物があると、そこで結構時間をかけてしまうので、池谷は飽きてしまったのかもしれない。「ちょっとトイレ行ってくるよ」「え? あ、うん……」 モール内のカフェに入り、空いている席に私が荷物を置いた瞬間に、池谷はそう言って私から離れていった。
last update最終更新日 : 2025-06-22
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あなたに贈るもの

    地方の大学を卒業して、地元に帰る事をせずに就職して早二年が経とうとしている。もともと何をしようかとか、やりたいことなどを考える事をせずに、出来る事だけひたすらにこなす事だけを考えて生きて来た自分には、希望する職業などが有るわけではなく、かといって地元に戻る気にもなれなかったので、そのまま地方へと住み続けることにしたのだが、何とか拾っていただいた会社で、可もなく不可もなく暮らしていけている。「池谷ぃ~」「ん?」 同僚の吉田が缶コーヒーを片手に持ちながら近づいて来た。ちなみに今は仕事中である。休憩時間でもなんでもないが、会社の中は温度調節されているので、一年中同じ温度に保たれている。そして俺が働いている部署はそんな中でも特別区画になっていて、他の部署とは違い暑さが厳しい事で有名なところ。俺自身はデスクにかじりついて仕事をするため、そんなに暑さは感じないのだが、動き回る人達にとっては地獄というもっぱらの評価だ。「お前さ、今日暇だろ?」「何で決めつけてるんだよ……」 俺の隣の席に座るなり、俺に缶コーヒーを手渡しながらそんな事を切り出す吉田。俺はチラッと視線を壁に掛かっているカレンダーへと移すと日付を確認した。「だって去年もクリスマスイブだってのに一人ですごしてたじゃねぇ~か」「それは……そうだけど……」 吉田に言われたことは事実ではあるものの、それは理由があってそうしていただけで、好きで一人でいたわけではない。「今日はダメだ」「あん?」「用事があるんだよ」「用事? どうせ一人なんだろ?」 半笑いのまま俺の顔を覗き込んでくる吉田。――コイツ!! なぐったろか!? 「いや……本当に今日はダメなんだよなぁ……」「なんだよ? コレか?」 右手の小指を立てながらニヤッと笑う吉田。「あぁ。そうなんだよ」
last update最終更新日 : 2025-06-29
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