All Chapters of 無自覚に無茶しながらのスローライフ ~え? 付いていきますよ?~: Chapter 21 - Chapter 30

30 Chapters

第21話 悔しかったのです

   「――と、いうわけで、今日からこのヨームというモノを使っていきます。何か聞きたいことはありますか?」  僕が心配していた通り、中庭へと集まってもらった人達の中には、こそこそと何か話をする人もいたけれど、父さんの一喝によってそんな声も静かになった。  僕が話を始める前には、アルスター家当主としてガルバン様も、僕の考えたものを採用すると宣言してくれた。  僕が何も説明する前にガルバン様が言ってくれた事で、僕を支持すると言ってくれたのも同じ事。だからアルスター家の方からは何も声が上がらない。 「ちょっといいでしょうか?」「はいどうぞ」 スッと手を上げたのはアイザック家のメイド長コルマ。 「それはどのような効果が有るのでしょうか?」「それは――」「それは私が説明しよう」 僕がコルマの質問に答えようとしたら、ガルバン様が僕を手で制しながら、コルマへ答えた。 「実の所、このヨームは今日から始めたから直ぐに結果がわかるというモノではない。しかも使っている人と使っていない人でその差は出にくい。何故なら使わない人達にはその考えすらないのだから。しかしこれから先はこのヨームを使う事で必ず便利だと思う時が来る。必ずだ。それはわたしが保障しよう。そうでなければアルスター家も同じ日にヨームの使用を開始するとは言わない」「……分かりました。私達もしっかりとヨームに関しては理解したいと思います」「よろしく頼む。そしてもっと大事な事が有る」「それは?」 コルマだけではなく、その場にいる皆がガルバン様の言葉を待っている。 「これを考えたのがここにいるロイドだという事だ!!」 ガルバン様の言った事でその場が少しだけざわついた。&nbs
last updateLast Updated : 2025-07-03
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第22話 もう一度見せて

    ヨームを使い始めてから2日が経つけど、そこまで目に視えるような混乱は起きていない。  フレックやアランさんに頼んで作ってもらっていたヨームは、急いで作成したというのにもかかわらず、次の日には各家に5組ずつ渡せるように出来上がっていた。  特に急がせたわけじゃないと二人は言っていたし、新しいものを作るのは楽しいとアイザック領都のドランにある木工細工店では喜ばれたそうだ。  その時にどのような使い方をするのかと聞かれたようだけど、二人ともまだ話すわけにはいかないと言って、その先はアイザック家からも正式にお話が有るまでは待てと言って戻ってきたそうだ。 ――そこまでしなくてもいいんじゃないかな? 僕はその話を聞きながら、広まっちゃたら仕方ないのに……。 なんて簡単に考えていた。  僕の所にも、ヨームの使い方や考え方、見方などを聞きに毎日の様にメイドの皆や、使用人として働いている人、そして庭師のジャンに至るまで、途切れる事が無いと思うくらい、真剣な眼をしながら聞いてくれる人たちがいる。 「ふぅ~……」「おつかれさま」 そんなやり取りをしていて、ようやく落ち着いたお昼過ぎのティータイム。独りでサロンに行きお茶をしようと思っていたのだけど、後からトコトコとアスティとフィリアが僕の後をついて来た。  その3人でお茶を飲むことにして、そのままサロンへと向かう。  いつもなら、お昼の軽い食事をした後は家族そろってティータイムなのだが、ガルバン様と父さんは執務室に入り、何やら話し合いをしているみたいだし、母さんとメイリン様も母さんの部屋へ一緒に入って行ってしまうので、ここ2日間はアスティかフィリアと一緒にお茶を飲むことが増えていた。&
last updateLast Updated : 2025-07-05
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第23話 本当に正しいの?

   「どうして父さんとガルバン様がいるのさ!?」 鍛錬所に到着した僕達二人とコルマ。しかし僕達が到着した時にはすで二人が鍛錬所の入り口に立って僕たちをニコニコとしながら待っていた。  「何やら面白そうな匂いがしたのでな」「俺は止めたんだぞ? さすがに二人の邪魔をしちゃ悪いと思ってな。 ガルバン様はにこやかな表情をして、父さんは少し困った顔をしながらも、二人から出てきた言葉はとても楽しそうだ。 「アスティ……」「はぁ……諦めてロイド。こういう時のお父様は何を言ってもダメだから」「えぇ~!?」「良くわかっているではないかアスティ」 ガハハとまた豪快に笑うガルバン様。  「まぁいいや」「行きましょう」「うん。とりあえず、真ん中位まで行こうか」 二人で並んで歩いていく僕たちの後を追うように、父さんとガルバン様が付いてくる。コルマには入り口で待ってもらうようには言ってあるので、僕たちの後を着いてくる事は無い。更にアスティの秘密が誰にも知られないようにするために、修練所に近づいてきた人たちの対応を頼んである。  「それで何をするんだ?」 ガルバン様がワクワクした様な顔をして僕に語り掛ける。 「え? アスティが魔法を使うところが見たかっただけですけど?」「なんだ……それだけか……。てっきり私は……」 ブツブツと何か独り言を始めるガルバン様。それを見ながら首をすくめる父さん。 ――仲良くなってるなこの二人。 初めて屋
last updateLast Updated : 2025-07-08
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第24話 取りやめだ!!

    ガルバン様が少し怖い顔で僕を見てくる。 「間違うなんて事は無い!! 今まで魔術師と言われてきた人たちが代々にして使用し、伝えて来たものなのだ。書き写したものもたくさんあるし、それが間違っているという事は無い。現に今使えているではないか」「そうなんだけど……僕が言いたいのはそういう事じゃなくて……」「どういう事だ?」  僕を見る3人が真剣な目を向けてくる。 「ちょっと試したことが有るんだけどいいかな?」「ん? まあいいだろう」「ガルバン様にお願いしたいんだけど、さっきの火の球よりも小さいものって出せる?」「え?」「だからさっきの火の玉よりも小さい奴だよ」「…………」「もしかして出せないのかな?」 今度は少し困った顔をするガルバン様。 「あれが一番小さい火の玉の魔法なのだ」「あぁ~やっぱり」「ロイドどういうことだ!? 何か考えついたのか!?」「ちょ――ま、まってーーゆら、さないで!!」 ガルバン様が僕の方を両手でつかんでがくがくと前後に揺さぶる。  「す、すまん……」「いや、まったく、親子から同じことされるなんて思わなかったけど」「「ご、ごめんなさい」」 少したって落ち着いたガルバン様が頭を下げた。そして僕の言葉に自分にも経験があったアスティもまた同じように頭を下げる。 「まぁいいや。たぶんこれからするのはガルバン様には難しいかもしれないです」「な、なんだと!? 魔術師団団長の私でもか!?」
last updateLast Updated : 2025-07-10
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第25話 誰にでも

   「ガルバン様」 父さんと相談を始めたがガルバン様に声を掛ける。 「どうしたロイド」「今、使ってる呪文の事だけど」「ふむ。話してみなさい」「うん」 父さんとガルバン様の話し合いはそこで一旦終わる。  「アスティの魔法が上手くいかないのってどうしてなのかな?」「それは、アスティの魔力の使い方……制御が良くないからだろ?」 ガルバン様の言葉を聞いて、アスティがしょんぼりしてしまう。 「僕の考えはちょっと違うんだ。実はその呪文を使うと、その呪文で決められた力しか出ないようになってるんじゃないかな?」「ん? 良く分からんな」 ガルバン様が考えこんでしまう。 「呪文という決められた言葉を使って、5なら5の威力しか出なくしてるんじゃないかなって事」「な、なんだと……あ!? だから魔力量の多いアスティの魔法は、思った以上に魔力を込めてしまっているから、それ以上にならないために自然と消滅してしまうという事か?」「うん。その為の言葉が呪文なんだと思うんだけど、違うかな?」「それはどういう……」「だから呪文は誰にでもその魔法が打てるように考えられてつくられたものなんじゃないかな?」「…………」 ガルバン様もアスティも黙ったまま僕の言う事を考えている。 「同じ呪文を使うのなら、同じ魔法を持っている魔力分だけは使えるでしょ?」「そうだな……」「持ってる魔力が多い人は多く打てるし、僕みたいにない人はもちろん打てない。こんなことはガルバン様ならもう知ってることだとは思うんだよね」「た、たしかに知っている事だ」「と、いうことはだよ? その呪文さえ覚えれば、魔力がある人なら誰でも同
last updateLast Updated : 2025-07-16
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第 26話 優しい子

     僕らのやり取りがあった次の日には、既にアルスター家の長期アイザック家滞在が確定事項となって伝達された。  しかも期間は未定と発表されたので、ガルバン様たちと一緒にアイザック領へと来たアルスター家の護衛の人達や、領兵の人達は何組かに分かれて一旦アルスター領へと順番に戻ることになった。  更に期間が決まっていないという事で、いつまでも屋敷の庭先にいるわけにはいかないと、ドランの町とアイザック家の屋敷までの間で、道に沿って林などを切り倒し、簡易的な家を数件造ることに。  そこにアルスター家のガルバン様たち以外が住むことになるのだが、アルスター家の人達が自領に戻った際は、その建物を自由に使っていいという事で話を纏め、ウチではそこを迎賓館として使用することに決定した。。  出来上がるまでは時間がかかるし、それまでは今と変わらず屋敷の庭で過ごしてもらう事にはなるんだけど。    僕とアスティの方はというと、相変わらず朝から勉強をしたり、魔法の使いか他をあれこれ考えたりと忙しい毎日を過ごしていた。  フィリアはアスティだけじゃなく、ガルバン様やメイリン様とも仲良くなって、一緒に遊んでもらう事さえある。  1度、ガルバン様が馬役になってそれにフィリアがまたがっているところを見たときは、僕だけじゃなくアスティも凄く驚いていた。その驚いた理由も「私でさえしてもらった事が無いのに」という、ちょっとだけフィリアを羨ましいと思う気持ちから来てるみたいだけど。    「できた!!」「さすがアスティ」 僕は喜ぶアスティへ拍手を送る。 滞在期間が既に30日を過
last updateLast Updated : 2025-07-17
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第27話 売るの?

    ある日の昼の鐘の後――。  「ロイド様」「ん? どうしたのフレック」 部屋の中で珍しく一人で本を読んでいると、ドアをノックした後にフレックが顔を出した。 「はい。旦那様がお呼びでございます。執務室へ来るようにとのことです。いかがいたしますか?」「そうなの? 何の用か聞いてる?」「いえ、来てから話すとのことです」「わかった。すぐ行くと伝えてくれる?」「かしこまりました」 読んでいた本をパタリと閉じて、僕はドアの方へと向かう。フレックは既に父さんの所へ行ったようでもう姿は無い。 ――何かあったのかな? 一瞬だけ、何か起こられる事でもしたのかな? と考えたのだけど、僕の記憶にはそのような事をした覚えはない。 考えながら執務室まで進んでいき、結局思いつかないままそのドアを叩いた。  「ロイドです」「入れ!!」「失礼します。お呼びとお聞きして参上しました」「うむ、まずは座れ」「はい」 いつになく真面目な顔をした父さんが、既にソファー座りお茶を飲んでいた。その対面に僕も座る。 すぐにぼくの前にもフレックがお茶を用意してくれた。  「それで話って?」「あぁ。実はなあのヨームの件でな」「ヨームの?」「そうだ。ガルバンとも話をしていたのだが、すでに屋敷の中のモノたちと、領兵たちの間ではヨームを使用することが広まって、その便利さを理解し始めている」「うん」「それでだ……」「それで? ドランの町でもヨームを使い始めてみないかという話になった」
last updateLast Updated : 2025-07-19
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第28話 それだけ?

     「え? 何それ、うらや……かわいいじゃない」「そんなにいいものじゃないよ……」 アスティがちょっとだけウキウキしているのを見ながら、思い出す光景にげんなりしてしまう。   「おいマクサスどういう事だ?」「あぁ、言ってなかったか? ロイドが町に行くのを止めている理由の一つがそれだ」「動物が近寄る位なら構わんだろ?」「いや……ロイドの場合はな……。町中の動物がロイドの姿を見てしまうと、寄ってきてしまうのさ」「なに? それって……」「あぁ、原因は分からん。だが、それが町の中だけならまだいいんだが、町の外でも同じなのだ」「ではもしかして魔獣やモンスターと呼ばれるモノ達も……と言う事か?」「モンスターはなるべく屋敷に近づく前に俺たちが倒しているから問題は無い。屋敷の敷地の中だけに居るのならな……。だから実際にそういうモノと遭遇したらどうなるかは分からん」  アスティと僕が、集まってくる動物たちの事を話している時に。父さんとガルバン様がそんな会話をしている事には気付いていなかった。  「ふむ。確か……王城の資料室で、そのような事が得意としている者達がいたというのを読んだことが有るな」「あぁ俺も読んだ。確か……動物使いとか魔獣使いなどと呼ばれているらしいが、今でもいるには居るが数少ないようだ」「ロイドはそれだと?」「……どうなのだろうな。実際その者達がどうやって飼いならして
last updateLast Updated : 2025-07-22
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第29話 あれが……

     「……本当にロイドは……。まぁそれだけじゃない。ロイドの噂話を知っていても、ロイドと婚約を結ぶんだという事を、そしてこれからはアイザック家の……ロイドの後ろ盾には我がアルスター家も付いているのだという事を、世の中に広げるためだな」「僕のために?」「うん? ロイドの為だけではないよ」「そう。ならいいんだ」 僕はこくりと頷く。それからしばらくはちょっとした世間話などをして、町の中へと付くまでの時間を過ごした。    ドランの町には真ん中に町の象徴とする大きな噴水があり、その噴水を中心にして円形に公園のような作りになっていて、その外側から家やお店などが立ち並ぶ作りになっている。  町の中を通る道は、その噴水から東西南北へ縦断する形に伸びていて、どの方向へも行けるようになっていて、町の一番外側にはモンスターと呼ばれる者たちや、魔獣と呼ばれるモノたちから住んでいる人たちを護るために、石でできた高い壁と門に守られている。そんな町の中で一番端にアイザック家の屋敷があるので、途中には林なども有って町としてはかなり広いのだと父さんが言っていた。  でも一番の防御力としては父さんや領兵の人達がいるので、住んでいる人たちもそんなに危ない目にはあった事が無いはず。  僕は久しぶりに町へと向かう道すがらそんな事をぼんやりと考えていた。     町の中の中心地である噴水のある公園に、僕達の乗るアルスター家の馬車が到着した時には、既に多くの人達が公園へと集まっていた。 「うわぁ~……いっぱいいるなぁ&he
last updateLast Updated : 2025-07-24
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第30話 こうなったぁ

     「――という事になります」「以上でヨームの使い方の説明は終わる!! 因みに今日はこのヨームで言うところの5月30日だ。明日からは6月となり、明日は6月1日という事で、これから先はヨームの日付で呼ぶようにしていく」 僕が説明を終えると父さんが集まっている人たちにそう宣言した。つまりこの時点からドランの町では正式にヨーム通りの月日の数え方が始まったという事。 「質問があるものは手を上げろ!!」 父さんの声に反応して数人から手が上がった。 「よし、そこの者!! 申してみよ!!」「は、はい。では失礼いたしましてご質問させていただきます」「うむ。何でも聞いてくれ」「その……噂でではありますが、そのヨームでしたか? それを思いつかれたのがロイド様というのは本当の事なのでしょうか?」 質問してきた人に、僕は見覚えがあったのだけど、そのまま答えないで父さんの方へと視線を送る。 「それは間違いない。このアルスター家当主のガルバンが証人だ」「そ、そうなのでございますか」 父さんの代わりにガルバン様が答えた。 「そして、このヨームだが、この私もその有用性を実感しているからこそ、アルスター領でも広めていく事を承認しておる。つまり私も認めているという事だ」「そ、そうでございますか。お答えいただきありがとうございます」「いやその位なんでもない。そして今ここで宣言しておく!! ここにいるアイザック家ロイドと、我が娘アスティはこの度正式に婚約者となった。これから先は、私達アルスター家もアイザック家と共に歩んでいく。その事を忘れぬようにな」  ガルバン様の言葉が広場中に広がっていくと、ざわつき始めていた広場に、また静かな時間が訪れた。
last updateLast Updated : 2025-07-26
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