All Chapters of 無自覚に無茶しながらのスローライフ ~え? 付いていきますよ?~: Chapter 11 - Chapter 20

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第11話 嬉しさ半分、困惑半分

     僕がアスティとちょっと仲良くなっていた頃――。  「どうぞ、狭いところで申し訳ないのですが、お寛ぎいただければと思います」「これは……」 ロイドやアスティ嬢を置いて来てしまったが、これで良かったのだろう。 アルスター伯爵の方からどこかあの二人を遠ざけた印象が有ったが、二人には聞かれたくない話でもあるのだろう。  それに今回の突然の訪問と、アスティ嬢とのことの真意を聞かねばならない。 ――まぁ貴族社交界にてその名の売れたアルスター卿に私がどれだけ対抗できるかは目に見えてはいるのだが……。  食事が終わり、お茶を飲むためにサロンへと移動して、ドアを開け部屋の中へとアルスター夫妻を誘う。  部屋の中へ入ったところで、ガルバン殿が感嘆の声を上げたのだが、実の所我屋敷の密かな自慢の部屋となっているので、少しだけ驚いた顔を見られて嬉しかったりする。 「これは見事な部屋だな」「そうですわね。ウチもこのような形にするべきですわ」「うむ。帰ったら検討してみよう」 夫婦揃って部屋を見渡しつつそんな会話をしている。  アイザック家の屋敷は、中庭を一つの庭園として見渡せるようになっていて、得に今いるサロンからは眺めを邪魔される事のない様に、出来る限り窓脇を用いないような造りとなっている。天気のいい日などはその窓部分を片側に治めるようにすることで、直ぐにでも中庭へと出られるようにもできる。  ただこの造りに関していうと、防犯面の対策をしっかりとしないといけない。その点では私がこの部屋を使う事であれば、その問題は解決する。いたる所に見えない様にな
last updateLast Updated : 2025-06-10
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第12話 思惑

     準備が出来ると、フレックを残して去って行くメイドたち。後に残ったのは伯爵が連れてきている兵士が一人と、執事と思われる男性が一人。そしてこちら側はわたしとリリア。そしてフレックの三人だけ。 「ここからは私達だけだ。少し落ち着いて話せそうだな」「はぁ……」「そう警戒しないでいい。こちら側に特にアイザック家に思う事は無いよ」 にこりと笑う伯爵には一切の曇りが見当たらない。 「それでは今回のご訪問と、アスティ嬢の事について伺っても?」「もちろん構わない。というかマクサス、先ほども言っただろう? 堅いぞ」「そう仰られてもですね……」 どうしたらいいのか分からず、ご婦人の方へと視線を移す。 「本当に構いませんわ。この人はこういう性格なんです。気が合いそうだとか、気が許せると直接会って判断した時は、本当にこうして直ぐに言葉や行動を崩してしまうんですのよ。そこが困ったところでもあり、まぁいいところでもありますけど」 顔を隠す事もなく本当にくすくすと笑う夫人。 「では本当によろしんですね?」「もちろんだ。そうでなければ今日ここに来た意味がない」「そうですか。よろしくお願いたーーお願いするよ」「あぁよろしく」 伯爵が差し出す右手を、俺も右手を出しお互いにギュッと握った。   その後しばらくはお互いの住んでいる場所の事などを話し、少しずつ距離感を詰めていく。  話が弾むと喉も乾く。 互いの夫婦が2敗目のお茶を頼む頃になって、ようやく伯爵の方から今回の件について話を切り出した。 「今回の訪問の件なのだがな&hell
last updateLast Updated : 2025-06-12
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第13話 裏切り者の再来

   良く分からない事が有る。 「それと王家との婚姻・婚約を渋る理由にはどのような関係が?」「それはだな、先ほども言ったとは思うがアスティは先祖返りだという話につながるのだ。実はあの子のチカラは既に私やメイリン、そして息子を遥かに凌駕している」「え? そんなまさか!? まだ7歳の子が!?」 私もリリアもその事に驚くが、伯爵夫妻はそろってこくりと頷き、その事実を肯定した。 「アスティは優しい子なのだ。だからその力が有ると王家の者が知ったら、その力を利用するかもしれない。そしてそれは何処に矛先が向くか分らん」「ガルバン様は2人の王子、そのどちらもその可能性があると?」「絶対にそうなるとは言い切れないが、アスティの事を考えるのなら、その選択は避けたいと思っている」「なるほど……。それでどうしてロイドに?」 事情的には納得はできる。ただそれにロイドがどう絡んでくるのか分からない。  「ガルバン様も噂は耳にしていると思いますが?」「『裏切り者の再来』か?」「ッ!?」 私とリリアは息をのんだ。そう言われている事はもちろん承知はしているが、表立ってガルバン様からそう言われるとは思っていなかったから――。   大陸間戦争を止めた賢者――。世界に知られている話で在り、それが固定された事実として歴史書にも載っている伝承だ。  しかし真実は違う。 大陸間戦争を終わらせた賢者は9人いたのだ。  その一人は確かに8人と共に大陸間戦争を戦っていた。しかしある時からその存在自体が消える。いや正しくは敵側の人物としての存在は残っているのである。
last updateLast Updated : 2025-06-14
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第14話 動き出す才能

    父さんたちがどのような話をしているのは全く分からないけど、僕とアスティはちょとずつではあるけど、お互いの事などを話し合って仲良くなれた気がする。  アスティと直接会うまでは、やっぱりどこか不安があったのだけど、こうして会ってみると思っていた以上にいい子だという事が分る。そしてこんな事を思うのも不思議なのだけど、一緒にいると家族といる時のような温かさを感じる。 ――どうしてなんだろう……。 考えても分からない事は、すぐに忘れるに限る。  アスティと話していると、どうでもいいってくらい、僕自身がとても落ち着いていられる気がしたんだ。  そこでちょっと思ったことを話してしまう。 「ねぇアスティ」「なに?」 体をグイっと僕に近づけてくるから、かわいい顔が間近に見える。 「え、えっと聞いても良いかな?」「何でも聞いて!! ロイドになら何でも応えちゃうから!!」 フンス!! という様な感じで胸の前でこぶしを握り、気合を入れるアスティ。 「う、うん。じゃぁ聞くんだけど、どうやってこんなに早くウチの領まで来れたの?」「え? それは、たしかおお父様が使用人にお手紙を渡してから、数日たってお家を出たから……かな?」 ――やっぱり。僕の返事を待つことなくそのまま来ちゃったんだ。 何となくそうじゃないかとは思っていたけど、それでも不思議に思うところもある。 「じゃぁさ」「うん」「もしも、僕が断っていたらどうしたのかな?」「え!? いやだったの!? ど、どうしましょう!? どうしたらいいのロイド? 私の事嫌い!?」
last updateLast Updated : 2025-06-17
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第15話 その笑顔が怖いんですよ

   アスティに引っ張られながら、庭を移動していき、屋敷の中へと戻ってきた僕達。  父さんたちのいる場所はだいたいわかるので、中に入ったところでアスティに声を掛け、近くにいたメイドに話しかけて、お父さんたちの所へ行きたいことを、先に報告してもらうために行ってもらった。  興奮してしまっていたアスティはそこまで考えが回っていなかったようで、僕に止められた時は不満そうな顔をしていたけど、どこに伯爵様がいるのかまでは頭に無かったらしく、顔を真っ赤にして恥ずかしがっていた。  「お伝えしてきました。今すぐでも大丈夫だそうです」「そっか。ありがとう」「いえいえ。旦那様方はサロンにいらっしゃいました。今から行かれますか?」「うん。案内してもらっていいかな?」「もちろんです。では参りましょう」 僕は頷いてから、未だ恥ずかしがっているアスティの手をスッと握る。 「行こうアスティ」「は、はい!!」 途端にニコッと笑顔を見せて、僕の隣にトコトコと歩いてきて、すぐ横に並び歩き始めた。 ――うん。アスティはかわいいなぁ。 横を歩くアスティを見ながらそんな事を思う。  コンコンコン 「旦那様、ロイド様とアスティ様をお連れいたしました」「うむ。入れ!!」 メイドに開けてもらったドアの先へと進んでいくと、予想通りというか、父さんと伯爵様夫婦が食後のお酒などを嗜みながら談笑している様子だった。 「失礼します」「失礼いたします」 先に声を掛けて二人並んで部屋の中へと入っていく。 「ほほぉ?」「あらあら?」「な!
last updateLast Updated : 2025-06-19
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第16話 正式な申し込み

   「それで話というのは?」 笑っていた伯爵様たちだったが、僕らの方へと視線を向け直すと、その表情は真剣なものに変わっていた。 「は、はい!! ロイドからお話を聞いて、すごく感動したのです。ですがどうしたらいいのか分からなかったので、お父様にロイドの話を聞いてもらおうかと思っていました」「私に、ロイド君の話を?」「はい」 アスティの話を聞きくと、伯爵様の視線が僕の方へと向けられる。  「どんな話なのか聞かせてもらおうか」「……分かりました」「マクサスいいかな?」「もちろん。ロイド話してみなさい」「では話します……。でも本当に思い付きで考えていた事なので、たいした事じゃないですよ?」「それは……まずは話を聞いてからだな」  伯爵様夫婦と父さん母さんが顔を見合わせこくりと頷きあう。僕は凸大きなため息をついてから、みんなの前で先ほどまでアスティとしていた話を始めた。   「ふむ。ソレがどうしたのかな?」「特に変なところも不思議なところもないと思うが」 伯爵様たちが街に留まっていたという所までを一気に話すと、伯爵様も父さんも特に表情も変えずに答える。 「僕が言いたいのはここからなんです」 僕がいうと伯爵様は黙ってうなずいた。 「この国は1年が360日と決まってますよね?」「そうだな」「どうやって数えてますか?」「うん? それは……1年の始まりを始まりの月とか、二つ目の月とか、日にちはその月の何日目とかだな」
last updateLast Updated : 2025-06-21
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第17話 これから10日間

   「ガルバン様、先ほどのお話は本気なのですか?」「ん?」「いや、ですからロイドと婚約という話です」「あぁ。なんだまだ渋っているのか?」「いや、そういうわけでは……」  伯爵様の正式な婚約者としての申込という話をされてから、伯爵様はテーブルの上で何やら書類のようなものを書き始めてしまうし。アスティは母さんとお妃様の所へ連れていかれて、何か話をされつつ盛り上がっている。  父さんはまだ複雑な表情をしながら、伯爵様へと何度も問いただしてはいるけど、僕が感じる限りでは伯爵様から「辞める」という言葉が出てくる事は無いと思う。 「良し出来た!!」「それは?」 伯爵様が書き上げた何枚にもなる書類に、最後にサインをしてから伯爵様の執事さんへとそれを手渡した。 手渡された書類に目を通す執事さん。 「結構でございます」「うむ。ではそれに判をして封をしてくれ。一通はアイザック家へ、一通は爺さんへ、そして一通は国王陛下へ送付しておいてくれ」「かしこまりました」 ペコリと言一礼して部屋から出て行く執事さん。 「あの……ガルバン様?」「あぁ、すまん。今のはアルスター家の娘アスティと、アイザック家の息子であるロイドとの間に正式に婚約をしたという証明書だ」「え? もう書かれたのですか?」「こういうのは早い方がイイからな。それに王家には直ぐに送るように手配はしてある」「はぁ……」 ガハハと笑う伯爵様に父さんも少し呆れた顔をしていた。 「ロイド君。いやもうロイドでいいかな」「はい」「私の事もガルバンと呼んでくれ。まだお
last updateLast Updated : 2025-06-24
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第18話 アスティの秘密

  アルスター一家が屋敷に泊まるようになってからすでに3日が経った。  ガルバン様が言っていたように、ガルバン様たちと一緒に来た兵士の皆さんは屋敷の敷地内でテントを張ってそこで過ごしている。  広いだけで、噴水などが有るだけの庭に今では兵士の人達の訓練する声などが聞こえてくるようになった。その中に時々父さんの姿があるけど、ガルバン様に鍛えてやって欲しいと頼まれたのだと後から聞いた。  あの日、食事の時には寝てしまっていたフィリアだけど、世の食事の時には起きてきて、その時にちゃんと挨拶が出来た。  そのあとすぐにアスティと一緒にお話をしていたので、とても仲良くなったとフィリアからもアスティからも聞いている。 妹と仲良くしてくれるのは凄くうれしい。今まではあまり人との付き合いの無かったフィリアだけど、お姉ちゃんが出来たととても喜んでいた。  そんな中で僕の方はというと――。  「ロイド、魔法はどのような属性があるかは知っているか?」「はい。ガルバン様」「言ってみろ」「火、水、土、風、光、そして闇です」「そうだ」  朝からお昼の鐘が鳴るまでフレックと共に勉強していた時間に、ガルバン様からの魔法の勉強時間も組み込まれた。 屋敷の中で使われていなかった部屋を少し片づけ、そこに机や椅子を用意して、アスティと共に並んで教えてもらっている。 「でも……」「ん? 何か分からないところがあるのか?」「え? いやでも……」「いいから言ってみなさい」「はい……。本当に属性はそれだけなんですか?」
last updateLast Updated : 2025-06-26
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第19話 使い方

    お昼の鐘が鳴り、ダイニングにてみんなで食事をしてサロンでみんなとお茶を飲んでいると、ドアをノックする音が聞こえて来た。 「フレッグです。宜しいでしょうか?」「よし、入れ!!」「失礼いたします」 サロンの中へ入ってくるフレックの手には、3日前にガルバン様が頼んでいたものと思わしき物がもたれている。  続いて入ってきたテッサもフレックと同じものを持っていた。 「旦那様、伯爵様、先日の物が出来上がりましたのでお持ちいたしました」「おう!! できたか!!」「どれ……見せてくれ」 ガルバン様が興奮するのをよそに、お父さんは興味なさげにしている。  サロンの真中までフレックとテッサが近寄り、その真ん中にあるテーブルの上へと荷物を置いた。 ガラン――がらんがらん!!ドサドサ!! 置く時に思っていた以上に大きな音がしたので、それまで興味なかった母さんとメイリン様も、音のした方へと身体の向きを変えた。 「ん? どういうことだ? 言っていたものと形が違う様な気がするんだが?」「はい、これは製作中の工房にロイド様がいらしてですね、このように変えたものも造ってくれと頼まれまして。それで時間がかかってしまいました」「ロイドが?」  その瞬間に僕の方へと全員の視線が集まる。 「ロイド、どういうことだ? あれで完成ではないのか?」「う~ん……あれはあれで完成形の一つだよ」「なに?」「完成形の一つ……だと?」「うん」 そこに有ったのは、以前にサロンで話していた形のモノと、もう一組のモノ。その一つを手に取りながら、僕は
last updateLast Updated : 2025-06-28
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第20話 ヨーム

   「マクサス」「ん?」「どうやらお前の息子はとんでもない奴だったようだな」「そうなのか? 私には……いや俺にはさっぱりわからんが」 ガルバン様に対してかなり乱暴な言葉遣いになってきている父さん。しかしそれを全く気にした様子が無いガルバン様。僕はそちらの方が気になってしまった。  テーブルの上の物をいじりながら、近くに集っていた人たちが何やら話を始めているが、僕は説明が上手く伝わったことに安心して、テーブルから離れ一人ソファーへ深く沈みこむようにして座り、大きく息を吐いた。 「はいロイド」 そう声を掛けてくれつつ、僕の前にお茶の入ったカップを置いてくれるアスティ。 「ありがとうアスティ」「ううん」「うまく伝わったかな?」「そうね。見てみたらわかるわよ。お父様をはじめお母様まで凄く楽しそうにお話をしてるわ」「そうか……良かった」「ちょっとカッコ良かったわ」 そんな事を言いつつ僕の横へすとんと腰を下ろすアスティ。とアスティはそのまま盛り上がっている周りをよそに、お茶をゆっくりと飲み始めた。  「ロイド」「はい」 しばらくはあーでもないこーでもないと話が弾んでいた皆だったけど、ガルバン様から僕の方へ声がかかると、そのみんなが僕へと視線を向ける。 「それで、コレら二つの名前はどうするんだ?」「え? あ!? か、考えてませんでした……」「そういうところは抜けているんだな。ちょっと安心したぞ」「すみません」 僕がぺこりと頭を下げると、何故横にいたアスティも一緒に頭を下げた。 
last updateLast Updated : 2025-07-01
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