僕がアスティとちょっと仲良くなっていた頃――。 「どうぞ、狭いところで申し訳ないのですが、お寛ぎいただければと思います」「これは……」 ロイドやアスティ嬢を置いて来てしまったが、これで良かったのだろう。 アルスター伯爵の方からどこかあの二人を遠ざけた印象が有ったが、二人には聞かれたくない話でもあるのだろう。 それに今回の突然の訪問と、アスティ嬢とのことの真意を聞かねばならない。 ――まぁ貴族社交界にてその名の売れたアルスター卿に私がどれだけ対抗できるかは目に見えてはいるのだが……。 食事が終わり、お茶を飲むためにサロンへと移動して、ドアを開け部屋の中へとアルスター夫妻を誘う。 部屋の中へ入ったところで、ガルバン殿が感嘆の声を上げたのだが、実の所我屋敷の密かな自慢の部屋となっているので、少しだけ驚いた顔を見られて嬉しかったりする。 「これは見事な部屋だな」「そうですわね。ウチもこのような形にするべきですわ」「うむ。帰ったら検討してみよう」 夫婦揃って部屋を見渡しつつそんな会話をしている。 アイザック家の屋敷は、中庭を一つの庭園として見渡せるようになっていて、得に今いるサロンからは眺めを邪魔される事のない様に、出来る限り窓脇を用いないような造りとなっている。天気のいい日などはその窓部分を片側に治めるようにすることで、直ぐにでも中庭へと出られるようにもできる。 ただこの造りに関していうと、防犯面の対策をしっかりとしないといけない。その点では私がこの部屋を使う事であれば、その問題は解決する。いたる所に見えない様にな
Last Updated : 2025-06-10 Read more