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All Chapters of SF怪異譚: Chapter 21 - Chapter 24

24 Chapters

第廿一話 New ペーパーフラっとブラザーズ

あらすじ: 【王宮の玉座前に巨大な和太鼓が運ばれ、試合が始まる。主人公・太一は、貴族の青年との太鼓勝負に挑む。青年の演奏は芸術的な腕前で、太一も必死に食らいつくが、指がほんの一瞬ズレたことで敗北してしまう。しかし、なぜか試合に関係ないオッサンがボム師範によって爆破され、謎の展開で幕を閉じる。】 「次は……ラジオ体操で勝負よ」 姫が高らかに宣言すると、まるで魔法のように、玉座の前に謎のステージが現れる。 黄金の縁取りがされた床には、なぜか巨大なスピーカーがいくつも設置されていた。太一の目が点になる。 「いや、なんでこの流れでラジオ体操!?!?!?」 叫ぶ太一をよそに、審判役のボム師範は深く頷きながら腕を組んだ。 もはや疑問を挟む余地はないというような顔だ。 「極めれば極めるほど、体の芯からリズムを感じられるものだ……」 青年は余裕の笑みを浮かべながら、体操の構えをとった。背筋を伸ばし、ゆったりと足を開く。 その姿はまるで戦場に立つ剣士のように堂々としていた。 そして―― 「ラジオ体操アルティメットリミックス、開始!!!」 突如、スピーカーから謎のおじさんの掛け声が爆音で流れ始める。 「ハ、ハ〜イ、!ホ!ホ!ホ!ホ!!」 その瞬間、会場全体が震えた。ステージの床からビートが伝わり、空間そのものがリズムに乗っているかのようだった。 青年はすぐさまテンポを掴み、流れるように腕を振る。 しかし――太一は全く理解できていない。 「え!?どっち!?オモテ!?ウラ!?!?」 腕を振る方向を誤り、ボム師範がピクリと反応する。 観客席にいるオッサンはひそかに太一を応援していたが、彼も困惑している。 「ミス検知中……」 冷たく響く判定の声。太一の額に汗がにじむ。 「やばいよやばいよ!!」 ぎこちなく動く太一を見て、オッサンはオロオロしている。そんな中、 青年は完璧な動きでウラ拍とオモテ拍を交互にこなし、まるでリズムを制圧しているかのようだった。 突然、スピーカーから謎の歌声が響き渡る。 「ゲロッ!ゲロ!ゲロ〜!!」 「ちょ!!歌付いたぁぁ!?!?」 ラジオ体操なのに、どこからか現れたカエルのボーカルが謎の曲を歌い始める。そのメロディーがラジオ体操のリズムを狂わせる。
last updateLast Updated : 2025-06-09
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第廿二話 〔最終話〕スーパーペーパーフラっと

前回のあらすじ: 【王国の玉座前で始まった謎の決闘。姫の掛け声と共に始まったのは、まさかの「ラジオ体操アルティメットリミックス」。 太一はウラ拍やオモテ拍のリズムに翻弄され、混乱の渦に巻き込まれる。 一方、余裕の青年は完璧な動きでリズムを制圧する。 しかし、カエルの謎のボーカルが入り乱れ、さらに状況はカオスにな展開に。 ミスを検知する審判・ボム師範の厳しい目が光る中、追い詰められた太一は突如覚醒。何かしらの謎の力により、完璧な跳躍とリズムの波動を掴み、カエルのテンポさえもシンクロ。 その瞬間、場の空気が一変し、観衆は息を呑んだ。 太一の動きに合わせて床が共鳴し、リズムの波が王国全体を揺るがす。 青年も動揺しながらも全力で応戦し、激しい応酬が続く。 最後の決め技が炸裂し、太一は完璧な着地を決める。 ボム師範の「勝者、太一!」の宣言とともに、王国中が歓声に包まれた。】 「僕ね……実はずっと、遥音ちゃんに言いたかったことがあるんだ」 太一は、小さく震える声で言葉を紡ぐ。 「僕は……あの時、君を傷つけた」 遥音は、ゆっくりと目を伏せる。 「私も……太一君を傷つけた……」 いや違う――。 「僕は……僕は、君にちゃんと謝らなかった」 遥音の瞳が潤む。 「私も……ずっと謝りたかったの……」 二人の心が、静かに重なる。 幼い日の記憶が、ゆっくりと巡り始める――。 僕たちは、ずっと一緒だった。 夏の日、木陰で並んでアイスを食べたこと。 「ちょっと溶けてるよ」 遥音が笑いながら言ってくれたこと。 春の日、桜の下でお互いに夢を語ったこと。 「僕たち、大人になったら、どんな風になるのかな?」 僕は、何も気にせず「楽しい人生を送りたい」と言った。 でも、遥音は。 「私は……ずっと、太一君のそばにいたい」 あの日の言葉が、今になって胸に刺さる。 そして、最後の日――。 「そんなの、知らない!!」 遥音は怒っていた。 「だったら勝手にすれば?」 僕も、彼女に冷たく言い返した。 あの日、僕は何も知らずに、何も考えずに言葉を投げた。 遥音は、小さく眉をひそめていた。 でも―― それが、彼女と
last updateLast Updated : 2025-06-09
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第廿参話 〔エピローグ 〕スーパーフラっとギャラクシー

前回のあらすじ: 【太一と遥音は、幼い頃からの思い出を分かち合いながら、長い間抱えていたわだかまりと後悔をようやく打ち明ける。互いを傷つけた過去、謝ることができなかった時間を乗り越え、二人は心を通わせる。 過去の楽しい日々、そして最後に交わした冷たい言葉――その痛みを乗り越え、太一は遥音に心からの謝罪を伝え、遥音もまた彼の言葉を待っていたことを告げる。時を経て再び向き合った二人は、幼い頃に交わした約束を思い出す。「ずっとそばにいる」と誓い合ったあの日。その約束を果たせなかった悔しさが胸を締めつける。遥音の瞳には、ほんのわずかに涙が滲んでいたが、その奥には太一への変わらぬ想いが宿っていた。 優しく微笑む遥音の姿に、太一は涙を流しながら彼女の頬に触れる。そして、ふたりの想いが交わる瞬間、あふれる記憶とともに、遥音は光の中へと消えていく。その瞬間、太一は不思議な温もりに包まれ、遥音の囁きが微かに聞こえた。「ありがとう、ずっと忘れないよ」――静寂の中、太一は空を見上げ、胸の奥に響く遥音の言葉をそっと抱きしめるのだった。――。】 目を覚ますと、太一は自室のテレビの前にいた。 薄暗い部屋の中、かすかに差し込む朝の光がカーテンの隙間から揺らめいている。 彼が不意に視線を落とすと、手の届く場所にあるゲーム機がふと目に入った。 その姿は変わらない。けれども――壊れていた。 もう、再び起動することはない。 何度電源を押しても、何度コードを繋ぎ直しても、 彼の手元で動き出すことはなくなってしまった。 「……これで、本当によかったのかな」 囁くような声が、静かな部屋に溶けて消えていく。 太一はそっとゲーム機を撫でた。 その表面には、長年触れてきた感触が染み付いている。 数え切れないほどの時間を、この画面の前で過ごした。 それは、遥音との最後の時間を刻んだ場所でもある。 「……またね、遥音ちゃん」 その言葉がこぼれ落ちると同時に、太一は静かに立ち上がった。 ぎしり、と床が軋む音がする。 窓の外には青空が広がり、柔らかな風が木々を揺らしていた。 太一はゆっくりと玄関へ向かい、靴を履くと外へと踏み出した。 向かった先は、遥音の墓。 墓地へ続く道は、静かで落ち着いた雰囲気に包まれていた。 遠くで鳥のさえ
last updateLast Updated : 2025-06-09
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第廿肆話 自己言及と言霊の檻

「私は何も言ってないよ!」 葉奈がそう言った瞬間、空間が揺らぐ。 言葉が響いたはずなのに、耳に届いた音は掠れていた。 「私は何も書いてないよ!」 彼女の指先が淡く透け、まるで存在が薄れるかのようだった。 空気が変わる。 太一は息をのむ。 どうして、こんなことが起こるのか。 どうして、妹・葉奈の声が消えかけているのか。 彼は分からなかった。 だが、葉奈の口から発された無責任な言葉が—— 彼女自身の存在を侵食していることだけは、確かだった。 ある日、太一は異変に気づいた。 葉奈の声が、どこか不自然に響く。 そして、矛盾した発言をするたび、体がわずかに薄くなっていくのだ。 「私は何も言ってないよ!」 その瞬間、彼女の声がかすれ、少し小さくなった。 「私は何も書いてないよ!」 その瞬間、彼女の指先が薄れ、まるで霧のようになった。 「この話は誰にも言っちゃいけないことだからね、いい?」 彼女の瞳が、どこかぼやける。 最初は誰も気に留めなかったが、太一だけははっきりと異常を感じていた。 このままでは——葉奈が、この世界から消えてしまう。 太一は決意し、その夜、神社の鳥居をくぐった。 狐のお面をかぶった青年が、そこにいた。 「お前の妹は、言霊の檻に囚われたな。」 青年は、まるで太一の妹の運命を知っているかのように告げる。 「言葉は、ただの音ではない。 それは、世界を縛る力だ。 無責任な言葉を発した者は、その重みを背負うことになる。 お前の妹は——自分自身を矛盾させることで、消えかけている。」 「どうすれば助けられる?」 太一は必死だった。 青年は肩をすくめる。 「簡単だ。お前の妹に真実の言葉を語らせろ。 矛盾のない、自らを定義する言葉だ。」 「……真実の言葉?」 狐面の青年は、太一に問いかける。 「お前の妹は、誰のために生きている?」 「……家族のためだと思う。 俺たちに迷惑をかけたくないって、いつも思ってるみたいだった。」 青年は苦笑し、「それは違う」と言った。 「お前の妹は、自分のために生きていない。 だからこそ、自分の言葉が軽
last updateLast Updated : 2025-06-10
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