結婚して七年間、夜を共にするたびに、私は仏壇の前で朝までひざまずいていなきゃいけなかった。「これは真夏への償いのためだ」そう言ったのは、夫の相澤嘉山(あいざわ かやま)だ。また義母の相澤夫人に命じられ、夫のもとへと向かったある夜のこと。ふと、廊下で彼の兄弟たちの話し声が耳に入った。「さて、今年で時雨は何度目の体外受精だ?あいつマジで必死だな」「まあ……本人は知らないんだろ?嘉山の子どもなんか、一生できるわけないのにな」嘉山が冷たく鼻で笑った。「バカだよな。毎回終わったあと、俺がわざわざ牛乳飲ませてんのに。何年もずっとピル飲まされてて妊娠できるわけないだろ?」「あいつが体外受精で苦しんでんのも、全部真夏のためにやってんだよ。あれは、罰だ」私は虚しく笑い、その会話を録音してそのまま嘉山のお爺さん――相澤当主に送った。「私はもう、相澤家に跡継ぎを残す運命にはない。だから、もう、私を自由にしてくれないか?」腕にびっしり残る注射痕が、またじんわりと痛み出す。この数年、子どもを授かるために、何度体外受精を繰り返したか分からない。どれほど薬を飲んできたか、体はもうボロボロだった。すべて、私のせいだと皆が言った。私もそう思っていた。だからこそ、嘉山の冷たさも、荒ぶる気性も、全部我慢してきた。まさか、その根本の原因が、彼が自ら私に手渡したあの牛乳だったなんて。私はその場に固まったまま、まるで木彫りの人形みたいに動けない。部屋の中では、まだ嘲り声が響いている。「嘉山もやるなぁ。あの女、あんなにクールだったのに、嘉山の前じゃまるで子犬だ。夜のほうもきっとうまくいってるんだろ?」嘉山は眉を上げて、ふっと笑う。「あいつの方から頼んでくるんだよ。暇つぶしに練習の相手してやってるだけ。もうすぐ真夏が帰国するから、もし彼女をケガさせたら困るだろ?時雨なんて田舎育ち、どう扱っても壊れやしないが、真夏は繊細で大事にしないと」榎本真夏(えもと まなつ)の名前を口にしたとき、嘉山の表情に一瞬だけ浮かんだ優しさが、私の胸に鋭く突き刺さる。彼の口からこぼれる一言一言が、私の顔を平手で打つように響いた。私は歯を食いしばって、血の味を飲み込む。この結婚は、もともと相澤当主が無理やり頼み込んできたものだった。私は相澤当主の援
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