夫の亡き親友の妻が、妊娠検査の写真をSNSに投稿した。【あなたの精子のおかげで、私にも自分の赤ちゃんができました】「父親」欄には、夫・綾野匠哉(あやのたくや)の名前がはっきりと記載されている。私がコメントしたのは、ただの「?」マークだけだった。すると、匠哉からすぐに電話がかかってきた。「お前さ、人としての情がなさすぎだろ!彼女は夫を亡くして、ずっと一人で寂しく生きてきたんだ。ただ、子どもがいれば少しは心が和らぐって思っただけだよ。それの何が悪い?それに、真木悠真(まきゆうま)は俺の親友だったんだぞ。親友の妻を助けるのは、男として当然の義務だろ?それが義理ってもんだ、わかんねぇのかよ!」それから間もなくして、夫の亡き親友の妻は、今度は高級マンションの写真をアップした。【そばにいてくれてありがとう。あなたのおかげで、また家という温もりを思い出せました】キッチンで忙しそうに立ち働く匠哉の後ろ姿が、写真の中でやけに鮮明だった。そのとき、私は静かに思った。——この結婚も、もう終わりにしよう。匠哉が帰宅したとき、私はちょうど明日予定している中絶手術の予約を終えたばかりだった。彼と結婚して五年。ずっと子どもを授かれずにいた。数日前、ようやく妊娠していることが分かった。もう二ヶ月目だった。本当は、結婚記念日にサプライズとして伝えるつもりだった。だけど——もう、その必要はなさそうだ。匠哉は袋をテーブルに置き、私に抱きつこうと歩み寄ってきた。「なあ、これ……お前の好きな鮭がゆ、わざわざ買ってきたんだ。ほら、温かいうちに食べて」袋の中を覗くと、米粒はまばらで、鮭の身も見つけるのが難しいほどの貧相な代物だった。きっと誰かの食べ残しでも押しつけられたのだろう。私はその手からそっと身を引き、袋を少し遠ざけた。「いらない。食欲ないから」彼は私がいつものように照れているだけだと勘違いしたのか、勝手におかゆを器に移し、スプーンを口元に差し出してきた。「もう、意地張らないでって。これ、昔から一番好きだったじゃん?」冷めきったおかゆから立ち上る独特の臭みが鼻につき、私はたまらずトイレに駆け込んで吐きそうになった。背中に伸びてきた彼の手を、私は思いきりはね除けた。目に涙を浮かべながら、睨むように彼を見上
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