颯太は食事も睡眠もせず、私の遺体を抱き続けていた。部屋には死臭が充満し始めていた。やむを得ず、私は颯太の夢の中に入り込んだ。夢の中の颯太は私を強く抱きしめ、「渚、俺を置いていかないで」と繰り返していた。私は優しく彼の背中を叩き、「颯太、私を解放して。私の体が腐っていくのは嫌なの。そんな姿は見られたくない。私の亡骸を火葬にして、遺灰を海に撒いてほしい。それが私の最後の願いなの」と諭した。「分かった、渚。でも、ちょっと待っていて」と彼は答えた。「ちゃんと生きてね、颯太。静江と結婚して！私はあなたたちを祝福するわ」「いやだ、渚。彼女のことは好きじゃない。結婚なんてしない」颯太は必死に私の手を引っ張った。目は血走り、表情は狂気に染まっていた。私は呆れて頭を振り、彼の前から姿を消した。目を覚ました颯太は、再び私の遺体を抱きしめ、絶叫し続けた。静江が人を連れて部屋に押し入り、颯太の狂気の様子に怯えていた。そして、颯太を無理やり部屋から引き摺り出した。私の亡骸は無事に火葬された。私は颯太が私の遺灰を海に撒いているのを見つめていた。おばあちゃんが彼を見つけ、私が残したお金を颯太に渡そうとしていた。颯太はそれを受け取らず、私の遺品だけを受け取った。ほんの数着の服、バッグ、そしてスマホ。あのスマホは颯太が私に夏休みのアルバイト代で買ってくれたものだ。何年も経った今でも、私はそれをなかなか手放せず、どこかが壊れるたびに、お金を払って修理していた。お礼に、私も夏休みで稼いだお金で颯太に靴を買ってあげたが、彼はずっと大切に靴箱に入れたままにしていた。私はいつも彼を笑っていた。「たった数千円の靴じゃない。そんなに大事にしないで履けばいいのに。壊れたらまた買えばいいんだから」と。でも、颯太は絶対に嫌だと言った。私にお金を使わせたくない、と。その後、彼の服も靴も、すべてブランド品に変わっていったため、私はこの数千円の靴を履くように勧めることができなくなってしまった。しかし今日の彼は、わざわざその靴を履いていた。海風が彼の頬を撫でる。彼は遺灰の半分を風に乗せて海に撒き、残りの遺灰を抱きしめながら、砂浜に座り込んだ。私は彼が手を伸ばし、遺灰を掴んで口に押し込むのを見た。私は焦りながら彼に叫んだ。「颯太、
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