私は高橋誠(たかばし まこと)と3年間、密かに付き合っていた。会社ではただの上下関係だったが、家に帰ると彼は私を激しく弄んだ。ある日、彼がなにやら嬉しそうに結婚の手続きをネットで調べているのを見つけた。私も、もうすぐ夫婦になれるんだ、と期待に胸を膨らませていた。なのに、彼が若い女の子を車に乗せて、市役所に入っていくのを目撃してしまった。「もう籍も入れたんだし、ちゃんとけじめつけないとね」「そうだな。まあ、でも彼女を俺のそばに置いておくのも悪くはないが!」皆が笑顔の中、私は涙が溢れ出て、幼馴染に電話をかけた。「私のこと、お嫁さんにしてくれるって言ったじゃない?」……電話を切って、道端でタクシーを拾い、誠との家へと戻った。自分の荷物を手早くまとめて、引越し業者を手配した。荷造りを終えて、ちょうど出かけようとした時、誠が帰ってきた。リビングの物が半分以上なくなっているのを見て、彼は眉をひそめ、ポケットからブラックカードを取り出した。「断捨離でもしたのか?ほら、カードだ。好きなものを買っていいぞ」誠は上機嫌のようで、自然と口角が上がっていた。私は彼の口角に触れた。彼の笑顔に、生理的な嫌悪感を覚えた。「何をそんなに喜んでいるの?」私は知らないふりをして彼に尋ねた。誠は私を抱き上げて、部屋の中を何度もくるくる回った。そして、私の額にキスを落として、ぎゅっと抱きしめた。「詩織、昇進したんだ」彼の声は興奮で、少し震えていた。私の心は氷の中に突き落とされたみたいに冷え切って、涙が止まらなかった。さっきまで誰かと婚姻届を出していた誠が、戻ってきて、私を抱き上げてくるくる回すなんて、どうしても信じられない。私は、真実すら教えてもらえない、まるで家で飼われているペットみたいだったんだ。誠と付き合って3年。この3年間、私は何度も結婚を切り出してきた。しかし、誠はいつも話を逸らしたり、私がしつこく食い下がると、適当なことを言って誤魔化してきた。彼はいつも「詩織、もうすぐだ。もうすぐ結婚しよう」と言って、私を待たせてばかりいた。そして今、彼は他の人と結婚したのだ。私の様子がおかしいことに気づいた誠は、私を抱きしめる手に力を込め、少し慌てた声で言った。「詩織、どうしたんだ?気分が悪いのか
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