Semua Bab あなたを待ち、嫁ぐ日を夢見る: Bab 11 - Bab 20

調査の結果、白夜はあの山に「竹下」という苗字の家が一軒しかないことを知った。それが、侑里の養父母の家だった。しかし残念なことに、白夜が彼らの元へ辿り着くころには、侑里はすでに碓氷家に引き取られていた。侑里の養父母、すなわち凪の実父母が山に住み、極貧の暮らしをしていたという。本来あるべきではなかった。この酷すぎる「新生児取り違え」は、実は凪の実父が意図的に仕組んだものだった。だが碓氷家の者はそれを単なる事故だと思い込んでいた。その後、竹下家の貧しさを知った碓氷家の両親は、凪を苦しませたくないと思い、大金を竹下家に渡し、そして二人の子を共に碓氷家に迎え入れた。竹下父母は教育を受けていなかったが、計算高い性格だった。白夜が恩返しに来たと聞くや否や、「君は凪を会いに？」とすぐに返した。「碓氷家に行けば会えるよ。名前は碓氷凪、偽の令嬢だ」と。竹下父はわざと、白夜を救ったのは凪だと言った。こうすれば、白夜の恩返しは自分の実の娘に向く。その恩は実の娘に渡すべきだし、侑里にうま味が回るわけにはいかないのだ。侑里はもともと竹下家にいたときの名前が「竹下凪」だった。凪が「碓氷侑里」という名前を使っていた。「碓氷侑里」は侑里が生まれる前から両親が考えていた名前だ。実の娘を優遇するため、侑里が碓氷家に迎えられたあと、碓氷父は「碓氷侑里」と「碓氷凪」の名前を入れ替えるように言った。竹下凪が「碓氷侑里」に、碓氷侑里は「碓氷凪」に。一見些細な事だが、名前を交換してから碓氷父母はしきりに「養女が可哀そうだ、名前まで取られて......」と思い、凪を一層可愛がるようになった。一方、侑里は山でのびのび育った自由人で、令嬢の風格はなかった。それで碓氷家も彼女をだんだん敬遠するようになった。だから白夜は疑わなかった。彼は凪が7年前に自分を救った少女に違いないと信じて疑わなかった。凪が手首につけていた数珠は、実は侑里から奪い取ったものだったのだと、知らずにいた。

「なんで侑里が碓氷家に戻った途端、私のものだったすべてを奪ってしまったの？！」凪は泣き叫んだ。「私の名前も、両親も、令嬢としての立場も全部奪ったのよ！」「私が何を間違えたっていうの？どうして神様は私にこんな仕打ちをするの？」「侑里が憎い！憎くてたまらない！全部あの女のせいよ！」凪は怒りと悲しみで乱れた声を震わせながら叫んだ。「もしあの子がいなかったら、今頃私は碓氷家の皆から愛されるお嬢様でいられたのに......居候の偽令嬢なんかじゃなかったのに！」凪は激昂し、泣き崩れた。侑里の人生を奪い取ったのは、彼女だというのに。始まりから、彼女が手にしたものは本来彼女のものではなかった。それでも凪は、自分が被害者だと全身で訴えていた。白夜はそんな理不尽な彼女に付き合いきれず、強く手を振り払って言い放った。「帰ってきたらきちんと対処してやるよ」それより今は、侑里をなんとしても助けに行かないと！思い悩んでいる暇などない。坂下みたいなクズに、彼女を渡さない！白夜は咄嗟に執事たちに命じてプライベートジェットを手配し、沿海地方へ急行した。一方その頃。侑里が乗ったプライベートジェットは無事に坂下家の専用滑走路に着陸した。明日は、あの理人との結婚式だ。血を好み、快楽殺人を辞さないという噂のサディスティック――彼と結ばれるのだ。彼女は唇をかんで冷静を装った。相手が誰でも同じ。どうせ本当に愛している人とは結ばれない......執事に導かれ、侑里は坂下邸へ入った。先ず出迎えたのは坂下当主と坂下奥様。ふたりは温かく迎え、王室級の贈り物を次々と差し出した。血のように赤いルビーに、百石のダイヤをあしらったネックレス......さらに代々伝わる翡翠のブレスレットまで。「これはうちの嫁に贈る品々よ。この日を待ってたわ。理人にやっと幸せが......」坂下奥様は朗らかに言い、翡翠のブレスレットを侑里に付けてやった。その優しさに心が揺れたが、侑里の胸には消えない不安があった。自分が一緒に暮らすのは理人。この二人とは違う相手なのだ。もし噂通り彼が恐ろしい人間なら、どんな歓迎も無意味だと悟っていた。日が暮れると、執事に案内されて客室へ。侑里がバスルームへ行くつもりだったが

沿海一の名門・坂下家の結婚式は豪華絢爛。赤い絨毯は大広間を埋め尽くし、巨大なシャンデリアが光を放ち、長テーブルには名品料理が並んでいる。世界中の名流達が燕尾服やイブニングドレス姿で訪れ、花嫁は祝福の歓声を浴びながら、純白のバージンロードを歩んでいく。「本当に美しいわ......ベール越しでも映えるんだから！」「でも坂下と結婚したら、命がもたないって」「昔から佳人薄命っていうし、本当に気の毒ね」人々の間からは驚嘆の声が次々と上がっていた。侑里の美しさを絶賛する声、運命を気の毒がる声。侑里は深いため息をひとつつき、何も聞きたくない、考えたくもないとだけ思った。白バラで作られたアーチをくぐり抜けると、ロマンティックに舞うバラの花びらの中、侑里は理人の元へと進んだ。彼は完璧な白いタキシードを身にまとい、まるで王子様だった。だが、侑里は知っていた。その顔は美しくとも、その内面は完全に腐敗していると。祭壇の下で司祭が問いかける。「坂下理人さん、碓氷侑里さんを妻として迎えますか？彼女が美しくなろうと老いようと、健康であろうと病めるときも、永遠に愛し、守り抜くと誓いますか？」理人は唇をかすかに持ち上げ、「はい、誓います」と響き渡る声で宣誓した。司祭は続き、「碓氷侑里さん、坂下理人さんを夫として迎えますか？貧しくても、富んでも、健康でも、病めても、決して裏切らずに愛し続けると誓いますか？」侑里は口を震わせながら、一瞬ためらった。しかし、もはや選ぶ余地はなかった。相手が嘘をつくまで誓っている。これから理人と上手くいくには、自分だけ誓わないわけにはいかない。さもなければ、この結婚生活は一ヶ月すら持たないと分かっていた。結婚を控える緊張の中で詰め込まれる沈黙。司祭が次の言葉を言いかけたそのとき、教会の重い扉が内側から激しく叩かれ、そして開いた。「この結婚に、異議を申し立てます！」一声で教会内は騒然となり、カメラが一斉に玄関へ向けられた。侑里も反射的に視線をそちらへ移した。白バラのアーチの隙間越しに、白いバラの花びらが舞い散る中、毅然とした白夜の姿を見た。彼は堂々と歩み出て、「お嬢様。あなたを奪いに来ました」と静かに宣言した。「どうか、私と一緒に来てください」その一

すでに、かつて自分を救ってくれた少女が侑里だと分かった以上、白夜が彼女が自ら火の中に飛び込んでいくのを黙って見ているはずがなかった。彼は分かっていた。侑里は本当は理人のことなど愛していない。理人との結婚を承諾したのも、ただの意地だったのだ。自分に対しての意地、約束したように守ってくれなかったことへの怒り。両親への意地、実の親なのに、凪を選び、自分を選ばなかったことへの反発。だから彼女はすべてを捨てた。血に飢えた狂人とすら結婚することを選んででも、愛しているふりをしながら裏切り続けてきた人間たちの元へは、もう絶対に戻らないと決めたのだ。侑里が抱えている痛みや葛藤を、白夜はすべて理解していた。だからこそ、彼は侑里を理人に渡すわけにはいかなかった。火の中から、より深い火の中へ飛び込むだけでは、何も解決しない。彼女を火の中から引きずり出す、それがたとえ彼女の意思に反していてもだ。「理人、お前と侑里の間には何の感情もない。誰と結婚しようがお前にとっては同じことのはずだ」白夜は言った。「条件を出せ。この結婚を放棄するなら、どんな条件でも呑もう」「だが、もしお前がこの結婚を強行するなら、新城家と坂下家は正式に戦争状態に入る。俺は持てるすべてを使って、坂下家を完膚なきまでに潰す」その言葉を聞いて、理人は笑った。「今ここで結婚を諦めろって？そんなことをしたら、僕がお前にビビったって公言するようなもんじゃないか？」「正直なところ、結婚式を邪魔しに来ずに、裏で相談してきてたら、僕も考えたかもしれない。侑里を譲ることも」「お前の言う通り、僕と侑里の間には何の感情もない。誰と結婚しようが、僕には大した違いはない」「でも残念だった。お前は相談じゃなく、堂々と奪いに来た。今こうして大勢の前で、無数のカメラが回ってる中で、僕が引いたらどうなる？」「たとえ僕が侑里に一片の感情も持ってなかったとしても、絶対に譲れない状況なんだよ、これは」白夜はその言葉を聞くと、目を伏せ、理人と一度鋭く視線を交わし、それから黙ってその場を後にした。その様子に、場にいた誰もが呆気に取られた。「え？新城さん、帰っちゃった？結婚式ぶち壊しに来たんじゃないのか？」「カメラの準備までしてたのに。てっきり殴り合いが始まるかと思ってた

言い終えると、白夜は衣服をすべて脱ぎ捨て、氷水を満たした浴槽に裸で身を沈めた。氷水は骨を貫くように冷たく、触れた瞬間、皮膚を鋭く裂かれるようだった。そして、彼が飲み込んだ催淫剤が体内で作用を始めた。まるで一万匹の蟻が全身の細胞と骨をむさぼり食うかのようで、浴槽の冷水は氷河の下にいるように寒かった。しかし、その冷たさでも彼の心に宿る恐ろしい欲望の炎を消すことはできなかった。だが、この凍てつく苦痛が彼を理性の淵でかろうじて保たせていた。白夜は顔を上げ、心から傷ついた眼差しで侑里を見つめた。「あの夜、君がこういう思いだったと、今ようやく理解した......」自らを罰しなければならない。彼女をあんな絶望に追いやって、自分は死んでも許されない。侑里は拳を握りしめ、鋭く言い放った。「これで私を許せると思ってるの？そんなこと、全部ムダよ！」「ムダではない」白夜は歯を食いしばって言った。「少なくとも、君の痛みを理解することができたんだ」「これは始まりに過ぎない。今後、俺は君にしたことを何倍にもして、自分を罰し続ける」「俺がいかに君を愛しているか、世界で一番君を愛していることを、行動で示す。赦されずとも、後悔しない」侑里は顔をそむけた。「たとえ死んでも、私はあんたを赦さない」「それでもいい」白夜は苦笑いを浮かべた。「少なくとも君が俺を憎んでくれる、君の記憶の中に存在するなら、それでいいんだ」だが、いかなる言葉も今の彼女の心には届かない。遅すぎた愛情は、安物と同じだ。侑里は冷たいまなざしのままだった。そのとき薬の作用が強まり始めた。三倍の量の催淫剤は、彼の理性を崩し始めていた。彼は震える手を伸ばし、侑里を掴もうとした。喉から苦しげな呻きが零れた。「侑里......」しかし、侑里は突然笑いだした。冷蔵庫から大量の氷塊を取り出し、それを白夜の頭に一気に投下した。以前彼にされたのと同じ仕返しをしたのだった。「これで、目が覚めた？」その声は氷のように冷たく、白夜に向けた彼の言葉をそっくりそのまま返した。この瞬間、彼は究極の屈辱を理解した。でも、彼には文句などない。かつて彼も同様に侑里を辱めたのだから、自業自得だったのだ。彼は七日七晩、浴槽で自ら