親友の宮路甘寧(みやじ あまね)が失恋した後、「クリスマスは女の子同士で過ごそう!」と私を誘った。彼女曰く「シングル女子の特別デート」で、花火大会を一緒に見に行こうと。でも実は、私は彼女に半年間付き合っていることを内緒にしていた。彼女への罪悪感を抱えながら、私はその約束に向かった。人混みの中で、甘寧が前方を指さして驚いた声を上げた。「ちょ、あれ……うちの兄貴じゃない?」私はその視線の先を追うと、あまりにも見覚えのある高身長の後ろ姿。間違いない。彼は宮路和也(みやじ かずや)。あの黒いダウンコートも、私がプレゼントしたものだ。彼が「忙しくてクリスマスは会えない」と言うから、先に渡しておいた。そう、私がこっそり付き合っている彼氏は、実は親友の実の兄。でも、どうして彼がここに?疑問に思っていると、花火が夜空にぱっと咲いた。空いっぱいに広がるきらめき。周囲のカップルたちは自然に抱き合い、キスを交わして、この一瞬を永遠に刻もうとしている。彼も例外ではなかった。和也はゆっくりと顔を横に向け、隣にいる女の子の頬を大切そうに両手で包み、優しくキスをした。雷に打たれたような衝撃が全身を貫いた。彼は……一人じゃなかった。「仕事が忙しい」と断ったクリスマスは、この女の子と過ごすためだったんだ。世界が止まった気がした。花火の音も、人々のざわめきも聞こえなくなった。目に映るのは、ただあの甘く見つめ合う二人だけ。冷たい風が目を刺し、涙がこぼれそうになる。でも私は必死で耐えた。隣で甘寧が興奮して私をバンバン叩いてきた。「うわー!あの子、久保緋桐(くぼ ひぎり)だよ!うちの兄貴、ついに憧れの人を落としたんだ!すごいすごい!」私は頭上に広がる眩いばかりの光景を見上げ、こぼれ落ちそうな涙をこらえた。早く、早くここから逃げたい。でも、甘寧は私の手を引き、人混みに向かって進んでいった。「こんな偶然、逃す手はないでしょ!今夜は兄貴に夜食をごちそうしてもらわなきゃ!」和也のすぐそばまで来た時、ちょうど花火が終わり、夜空は静けさを取り戻した。二人はゆっくりと唇を離すけれど、繋いだ手はまだ離さない。甘寧は彼の肩をバシンと叩いた。「見つけたぞー!さっさと彼女を紹介しなさいよ!」和也が振り返
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