「んっ」部屋のドアが開き、よろよろと二つの影が入ってきた。二人の目は酔いに染まっており、入ってくるとすぐに玄関でキスを始めた。吐息が交互に聞こえ、甘い香りが部屋中に満ちていく。「あっ」浅野遥(あさの はるか)は驚きの声を上げ、男に軽々と抱き上げられた。彼女の小さな体は、彼の腕の中にまるで迷子のように埋もれてしまい、その体格差が否応なしに想像力を刺激する。そのままベッドへ向かい、遥はベッドに投げ出され、大きな体が覆いかぶさってきた。男の目尻は赤く染まり、普段は抑えられた目元には炎が踊っている。理性という名のタガが、音を立てて外れる。遥はシーツを握る手に、思わず力が入る。白い骨が浮き上がった指先が、激しい昂ぶりを物語っていた。その瞳の奥に、一瞬、奔流のような光が迸った。照明が揺れ、か細い喘ぎ声が部屋中に響き渡る。―「遥……」「遥……」遥は夢から急に目を覚まし、額に薄汗をかいていた。またあの夢だ。もう一ヶ月経つのに、毎晩のように見てしまう。夏休みのある日、結城涼介(ゆうき りょうすけ)の誕生日だった。遥は喜んで参加したのに、彼が招待したのは自分だけではなかった。同じ学科の他の学生もいて、その中には美人で有名な藤崎美桜(ふじさき みお)もいた。二人はぴったりと並んで座り、親密な様子だった。多くの人が遥の方を見て、彼女の反応を伺っているようだった。遥と涼介は同じ学科だけど違うクラスだった。みんな、彼女が二年も前から涼介を好きなのを知っていて、涼介本人だって知っていた。なのに、彼は一度も彼女の好意をはっきりとは断らなかった。周りの学生の様子から見て、どうやら全員が美桜のことを知っているみたいだった。自分だけが何も知らず、騙されていたのだ。自分を繋ぎ止めておきながら、美桜ともいい感じだなんて。クラスメイトの冷やかしの視線が心に突き刺さり、遥は密かにこの滑稽な片思いに終止符を打つことを誓った。その夜、彼女はかなりお酒を飲み、胸にモヤモヤした気持ちを抱えていた。トイレに行く途中、よろめいて誰かにぶつかった。男の深い目と目が合った。涼介よりハンサムで、男らしい。どこから湧いてきた勇気か分からないが、彼の襟首を掴み、吐息がかかるほどの近さで言った。「私と寝ない?」その後の展開は、も
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