夫は医者を買収し、本来なら私たちの娘へ移植される予定だった心臓を、幼なじみの娘に移植させた。その日のうちに、娘は心臓発作を起こし、私の腕の中で息を引き取った。一方で、夫の幼なじみの娘は心臓移植に成功し、夫は大喜びして会社全体にボーナスを支給した。私は怒りのあまり吐血し、医者から白血病の末期だと宣告された。もう長くは生きられないという。私は娘の骨壺を抱いて、魂の抜けたような状態で家に帰ったが——「葵、萌々の体が良くなったら、君たち二人を連れて世界一周旅行に行こうな。北極のオーロラを見に行きたいって言ってたろ?」「私と一緒に行ったら、奥さんにヤキモチ焼かれない?喧嘩になったら、どうするの?」夫・木村明士(きむら あけじ)は、鼻で笑った。「彼女にそんな度胸がない」昔の私なら確かに怖くて何もできなかっただろう。だが今は、娘の木村陽葵(きむら ひまり)も亡くなり、私も余命わずかだ。もう怖いものなんてない。私は骨壺を抱きしめたまま、勢いよくドアを開けた。小林葵(やなぎもと あおい)は明士の膝の上で甘えていて、私の姿を見ても全く動じず、逆に明士の頸に腕を回した。「初さん、明士が頸が痛いって言うから、マッサージしてあげてるの。ヤキモチ焼かないでね?」葵の目にはあからさまな挑発の色が浮かんでいた。どうせ私が家族の平和のために我慢するだろうと、高を括っている。明士はさらに苛立った様子で私を睨み、まるで私が彼の楽しい時間を邪魔したかのようだった。「何日も帰ってこないで。今も乞食みたいな格好をしやがって!お前が怒ってるのはわかってるよ。心臓のドナーの件は俺が勝手に決めた。でも萌々はもう待てなかったんだ。次にもっといいのがあったら、うちの娘にまわしてやるさ」でも、娘はもう死んだ。もう必要ない。「娘を大事にする気持ちはよくわかるさ。でも、誰の命だって同じ大事だろ?陽葵は俺の実の娘なんだ、見捨てるわけにいかないだろ?もう大人だから、これ以上騒ぐな!」明士の口調にはうんざりした気配しかなく、自分のしたことが当然のようで、私の怒りの方が理不尽だとでも言いたげだった。しかし、小林萌々(みずむら もも)は待てなくて、うちの娘は待てたとでも言うの?もしあの日手術を受けたのが娘だったら、死なずに済んだ。今健康な体を手に入
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