退屈な時間を終えて、セーラの部屋に向かおうとした時に悲鳴が聞こえた。「いやー、やめてー」 セーラは静かな子で、大声をあげない。 そのような子が必死に助けを求めている。 彼女の声は澄んでいて天使のようで特徴がある。 私が聞き間違える訳がない。 私は護身用の短剣を握りしめ、部屋の扉を勢いよく開けた。 ロバート・スペンサー国王がベッドにセーラを押し倒していた。 彼は私の中で良識ある人間だったが、それは覆された。(この野蛮人が!) 彼を追い出しセーラに向き合う。 信じられない真実が彼女から語られた。 信じられないくらい下劣な企みの哀れな被害者カリナ・ブロワ。 真実よりも信じられないのは、彼女が騙され陥れられた相手に対して恨みを抱いてない事だった。 「カリナ⋯⋯あなたを貶めた連中に復讐したくはないの? ロバート・スペンサー国王とエミリアーナ・サマルディーに!」「復讐? 私はエミリアンさえ大切にされていれば⋯⋯エミリアーナ様はとても優しい方です」 エミリアーナ王妃との時を思い出しながら優しく微笑む彼女を見て、初めて彼女を怖いと感じた。 客観的に見てもエミリアーナ・サマルディーはカリナを騙した女。 カリナが寝ても覚めても許せないくらいの恨みを持っても可笑しくない相手だ。「私なんかがレベッカ様の義姉になってもよろしいのですか?」 初めて彼女の言動に説明できない怒りを感じた。「私なんか? そのような自分を卑下するような言葉を吐くのはやめて! それは、私を⋯⋯カリナ⋯⋯あなたを妻にするお兄様を蔑む言動だわ」 カリナは私の言葉に驚いたように震えていた。 彼女はズタズタに傷ついているから、私は彼女の対応に繊細な注意を払っていた。 でも、今、確実に私は彼女の急所を突くような言葉を紡いだ。「申し訳ございません。次からはもっと⋯⋯言葉を選んで発言致します」 カリナが震える声で謝罪してきた途端、扉が開いた。(多
Last Updated : 2025-07-27 Read more