彼のどこか冷めた、そしてわずかに嫌悪すら滲む態度に、玲奈はもう耐えきれなかった。「どうして、そんな言い方するの? 慎也……あなたなら、わかってるはず。私、あなたを心から愛してるのよ」そう言った瞬間、彼女の瞳から涙があふれ出した。「今でも……胸のあたりに、あなたの名前のタトゥーがあるの。何度も告白して、それでも受け入れてもらえなくて……飛び降りようとしたことだってあった。命を捨てる覚悟だってしてた。事故のときだって、あなたを守ろうとして……あの鉄の棒が私の胸を貫いたのよ。見て、この傷――ひどいものでしょ。でも、私は一度だって後悔してない」そう言いながら、玲奈はベッドから降り、慎也の背後からそっと腕を回した。「昨日の夜……私、あれが初めてだったの。それをあなたに捧げた。だから……お願い。そんな冷たい顔しないで。もう、耐えられない。あのとき事故で死んでたほうが、まだマシだった……!」彼の背中に、涙が静かに染みていく。その感触が、心の奥でくすぶっていた迷いに火を点け、慎也の最後の理性を打ち砕いた。喉の奥が詰まるような感覚に襲われながらも、その場から離れることができなかった。「……これが、最後だ。次はもうない」低く絞るような声でそう告げると、慎也は玲奈を抱き上げ、ベッドに戻した。「少しでも眠っておけ。……あと数日はそばにいる」彼女が静かに眠りにつくのを見届けてから、慎也はベランダへ出て、煙草に火をつけた。立ち上る煙の向こうに浮かんでくるのは――咲良の、あの泣き出しそうな瞳ばかりだった。彼はスマホを手に取り、ためらいながらも電話をかける。だが、返ってきたのは機械的な「電源が入っていません」というアナウンスだけ。胸の奥に積もっていた罪悪感が、ついに暴れ出した。ようやく覚悟を決めたようにスマホに指を走らせ、咲良へのメッセージを打ち始めた。【咲良、ごめん。怒りが静まって、携帯の電源を入れてくれたとき……どうか、電話してほしい。最近の俺の行動は、本当に最低だった。でも、愛してるのは、最初からずっと……君だけだ】【三日後、一緒にフィンランドに行こう。前に、オーロラが見たいって言ってただろ?それまでに全部終わらせる。過去の生活を……取り戻そう】送信を終えると、すぐにアシスタントに連絡を入れ、フィンランド行きの航空券を予約させた。「そうだ、
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