第十三章 萌香を探して 翔平と謎の1,000万1円の男との殴り合いは続いた。二人の周囲を、燕尾服やドレスに身を包んだ紳士淑女が取り囲み、固唾を呑んで見守っている。ネクタイの襟元を緩めた翔平は、鋭い視線で男に向き直った。男も乱れた前髪を掻き上げ、大きく息をつき、汗と怒りに濡れた顔で睨み返す。 「くそっ、なんなんだよ、おまえは!」「あなたの奥様の過去を知っている、ただそれだけです」「そのスカした顔が気にくわねぇ!」 会場は豪華なシャンデリアの光に照らされ、グラス越しのざわめきが遠く響く。上流階級の人々が集うパーティー会場の片隅で、額に汗をかき肩で息をする翔平は、ふと自分が滑稽に思えた。なぜこんな場所で、こんな男と拳を交えているのか。1,000万1円の意味もわからないまま、ただ感情に突き動かされた自分が急に馬鹿らしくなり、拳を下ろしかけた瞬間、男が不敵な笑みを浮かべた。その笑顔に、翔平の胸に再び火がついた。会場の一角で、二人の戦いはまだ終わらない。 (萌香?)
Last Updated : 2025-07-28 Read more