綾乃はライブ配信中、過去に病院で受けた治療の記録やカルテを画面に映し出した。あまりにも生々しい証拠に、拓海は一気に世間の非難の的となった。新堂夫人は顔から血の気が引き、手の震えでタブレットすら持てなくなった。膝が崩れ落ち、机にしがみつかなければ立っていられなかった。「綾乃に電話を……早く!」「すでに連絡はしましたが、相手は出ません……」側にいた秘書も青ざめた顔で答える。新堂夫人の目の前が真っ暗になり、そのまま意識を失ってしまった――配信を切った綾乃は、スマホの向こう側に立つ夏織を見つめた。「これでいいの……?」夏織は小さく頷いた。「あとの報酬は口座に振り込むわ」そう言い残して、綾乃は一切の迷いもなくその場を後にした。実は、夏織が自分を訪ねてきたとき、綾乃自身も驚きを隠せなかった。てっきり責められるのだろうと思っていたのに、まさか拓海の本性を世間に暴露するために協力を求められるとは――しかも、その見返りとして、予想もしなかった額の報酬まで渡された。綾乃はしばらく考え込んだが、これ以上拓海についていっても暴力を振るわれるだけで、結局何も手に入らないだろうと悟った。ましてや新堂グループも今や傾きかけている。だったら、ここでしっかりと大金を手にして新しい人生を始めた方が賢明だ。銀行口座の残高を見つめ、綾乃は思わず口元を緩めた。このライブ配信が、間違いなく拓海と新堂家に大きな波紋を広げていくのは明らかだった。一方、夏織は階段を下り、街角で待つ湊のもとへ向かった。「新堂家の株がもう暴落し始めている」湊はそっと夏織の手を握りしめた。すべてが自分の思い通りになったはずなのに、夏織の心には微かな迷いが生まれる。「湊……私、残酷すぎると思う?」「そんなわけないさ」「自分を守れる力があること、僕はむしろ誇りに思う」湊は微笑みながら夏織の手を引き、歩き出す。「夏織、僕は君に、僕を支える蔓でいてほしいわけじゃない」「空を自由に翔る鷲でいてほしいんだ」その夜、ライブ配信の影響は一気に広がり、新堂家に関する悪いニュースが次々とネットを賑わせた。夏織の仕掛けも重なり、株価はついにストップ安寸前まで下落。さらに、五年前、拓海が治療前に躁状態で担当カウンセラーを植物人間にして
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