この時、清夏はもう遠真に理屈を説くことも、人間性に訴えることも通じないと悟っていた。だから彼女は、彼が一瞬気を緩めた隙を突いて踵を返しその場から逃げ出した。――けれど、数歩も行かないうちに、再び遠真に捕まってしまった。彼は清夏を再び二階の寝室へと閉じ込め、両手両足を鉄の鎖で繋ぎ、部屋の中でしか動けないようにした。食事は一日三食、すべて遠真が自ら運び、スプーンでひと口ずつ食べさせた。そのほかの時間も、彼は一時たりとも部屋を離れず、ずっと清夏の傍にいた。五年間、思い焦がれ続けたその顔を、もう二度と手放したくはなかったのだ。彼は清夏の額に口づけながら、囁くように甘く語る。「なあ、清夏......もう一度俺を好きになってくれたら、そのときは自由にしてあげるよ」清夏は、冷静に状況を見極めていた。そして逆に利用することにした。「もう好きになったわ。だから、今すぐ私をここから出して」だが遠真は微笑を浮かべ、首を振った。「でも、お前の目はそう言ってない。お前の目はね、俺を騙そうとしてるって教えてくれるんだ」「お前は俺の愛を利用してるだけだろう?」彼は決して清夏を解放しようとはせず、ただ日々その存在に酔いしれていた。――だが、この狂った日々も長くは続かなかった。やがて、蓮が警察を引き連れこの家を突き止めたのだ。到着したとき、遠真は慌てる素振り一つなく、いつも通りに清夏へ食事を与えていた。蓮は声を荒げて叫んだ。「清夏に手を出すな!!」しかし遠真は指を立てて、静かにと制した。「うるさい。彼女は食事中なんだ」「清夏は食が細くて、俺がこうして食べさせてあげないと、ちゃんと食べてくれないんだ」「俺が食べさせると、清夏はなんでも食べるんだ」その様子は、かつて清夏の父と親しくしていた頃の記憶のようにも思えた。――だが、それはもう遠い過去だ。遠真は最後の一口を口に運び、空になった器をテーブルに置くと、ようやく立ち上がった。そして清夏の前にしゃがみ込み、真剣な眼差しで尋ねる。「清夏......もう一度だけ聞く。俺のこと、本当に許せないの?」清夏はきっぱりと首を振った。「無理よ」「......たとえ、俺があの頃よりずっと愛しているとしても?」「それはあなたの勝手な気持ちでしょ。
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