村上裕司(むらかみ ゆうじ)が私のために仏門に入って祈願してから、私は毎月十五日に寺に彼を訪ねていく。しかし今日、彼は部屋にいない。部屋で彼を待っていると、突然の風によって彼の写経帳が開いた。私は何気なく上の文字に目をやった。すると胸が突然高鳴る。彼は普段、この写経帳を非常に重視している。私が何度か見せてくれと頼んでも、「香を焚き、湯浴びをし、七日間斎戒しなさい」と厳しく彼に要求された。しかし私は思真の面倒を見なければならず、そんな過酷な要求には到底応えられない。私は彼の思いやりを理解しているので、一度も無理に見ようとしなかった。だが今、風が勝手に帳面をめくったせいで、その一行一行の墨の字に経文の一つもないことが明らかになった。手を震わせながら、写経帳を一枚一枚めくっていく。写経帳には、尾澤真美子(おざわ まみこ)という名の少女との恋愛中の細かいことを、非常に未練がましい筆致で記されている。冬の懐炉、夏の冷やしスープ、生理にやさしいお湯。彼がかつて私にかけてくれた気遣いは、すべて彼女のために学ぶものだった。私が難産した日のページにたどり着く。彼はこう書いている。【もし真美子が、こんな激しい痛みを受けたら、俺はどれほど心を痛めるだろう。想像しただけで涙が止まらない、彼女じゃなくてよかった】【幸い男の子が生まれた。これで彼女に会わずに済む。真美子のためにまた穢れがない自分になることができる】全身が硬くなり、血液さえが凝固している。病床のそばで流した彼の涙は、決して私のために流されたものではなかった。仏門に入っての祈願でさえ、私のためではなかった……すべてこの真美子のためである。私に対してのすべての愛情は、ただの偽りに過ぎなかった。彼が私たちの息子に村上思真(むらかみ しま)と名付けたのは、決して「風が我が思いを知り、真の夢を大地に吹き送る」という私への愛を込めた詩のためではない。これは真美子の名前を込めたものだ!!何が最も美しい政略結婚か、何が最も盛大な世紀の結婚式か。すべては彼の嘘であり、私はただ彼と真美子の恋愛ゲームの一部に過ぎなかったのだ!その愛に満ちた文字が刃に変わり、少しずつ私の理性を切り刻んでいく。私はただ裕司を見つけたい。「これまでの愛は何だった
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