結婚式の当日、彼氏の小野真一(おの しんいち)は私を式場の外に追い出させ、幼なじみの手を握って中へ入っていった。私はレッドカーペットに座り込み、ブーケの花びらが地面に散乱した。でも、彼の視線は一瞬も私に向かわなかった。「入江麻子(いりえ あさこ)の子供には父親が必要なんだ。子供が落ち着いたら、お前と結婚する」周りの誰もが、私が大人しくあと一ヶ月待つと信じ切っていた。何しろ、私はこの結婚式を七年も待ち続けてきたから。しかしその夜、私は誰にも予想できないことをした。親が取り決めた見合い結婚を受け入れ、すぐに海外へ旅立った。三年後、実家に寄るために帰国した。夫の長森勝巳(ながもり かつみ)は今や国際企業の社長になっていた。重要な会議が入ったため、彼は私に先に国内支社へ行くように言い、部下に接待を任せた。支社の応接室に足を踏入れると、【長森夫人を心からお迎えします】と書かれたお迎えの看板が置いてあった。その看板の後ろに、なんと、三年ぶりに再会した元彼、真一が立っていた。三年経った今でも、彼からの説明も謝罪も一切なかった。彼は相変わらず得意げに人混みの中に立ち、腕には麻子を抱え、後ろにはへつらう部下たちを従え、到着口を今や遅しと待ち構えている。その内の一人が私に気付き、嘲るように言った。「おや、真一、あれは昔あなたの後ろにくっついて回ってた子じゃないか?相原なんとかって?どうやって会社に入ってきたんだ?」真一も一瞬たじろいだようだが、すぐに何でもなかったような顔をし、全てを見透かしていたような態度を見せた。「俺の名前を出したに決まってるよ。言っただろう?彼女は俺から離れられないんだ。きっと大人しく戻ってくるってな」周りの者たちも調子を合わせて嘲笑った。「相原佑美(あいはら ゆみ)が音沙汰なく消えた時は、随分と意地を張る奴だと思ったけどね。真一が一流企業の重役になったと知って、またまとわりつきに来たんだろ!」「まあね、でもさ、相原さん、偶然を装うにもなりふり構わなすぎない?その服、ありえない!おばあちゃんの布団カバーか?」「まさか、真一なしじゃまともな服さえ買えないなんてこと?じゃあ、かなり落ちぶれたんじゃないの?」彼らは未だに、私のことを濃いメイクに露出度の高い服装で、真一のご機嫌を取るために
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