身体障害を抱えている禁欲系の彼を攻略する八年目、ようやく彼は私に対して1パーセントの好感度を持つようになり、ライブに連れて行ってくれた。だが、メインボーカルは、彼の初恋の相手にそっくりだった。私はすっかり心が折れて離れる準備をしていたが、そこへテロリストの襲撃に遭った。彼は突然車椅子から立ち上がり、私を突き飛ばしてステージへ駆け上がり、メインボーカルをかばって一発の弾丸を受けた。そして私も、彼のその一押しのせいで銃弾に当たってしまった。システムは、私の任務失敗を宣告した。その瞬間から、私の、完全に恋愛を拒否するという防御システムが起動した。その後、私は感情も欲望も失い、誰も愛さなくなってしまった。……ライブ会場は大混乱に陥り、ステージ上では藤原昭(ふじわらあきら)が洲崎朝美(すざきあさみ)をしっかりと抱きしめている。彼の顔には動揺の色が浮かんでいる。自分の腕に銃弾が当たっているのに気にも留めず、ただ朝美を見つめているばかりだ。「大丈夫か。怖がらせないでくれ。お願いだ、死なないでくれ」昭のこんな取り乱した姿を、私が初めて見た。何しろ、彼は俗事には決して心を乱されない、冷淡な禁欲系男子として有名なのだからだ。この時になってようやく、私は彼が八年間ずっと私を騙していたことを知った。本当は障害などなかったのに、彼が八年間も障害者のふりをしていたのだ。一方、私は床に伏しながら、自分の血が地面に広がっていくのを目を見開いて見つめている。胸が、ひどくひどく痛い。【真希(まき)様、命が危険ですので、あなたは任務に失敗しました】耳元でシステムの声が響いた。私はやっと思い出した。昭を攻略して八年目になっているのだ。今日は本来なら、とても嬉しいはずだった。彼の好感度がようやく1パーセントに達したからだ。だが、今になってようやくわかった。彼はただ朝美に会いたかっただけだった。彼の初恋の相手にそっくりな女に。【離脱用の通路はまだ構築中です。あと三日で離れられる予定です、真希様】システムの言葉とともに、ステージ上の昭が朝美を抱き上げるのが見えた。彼の目は赤くなり、医者を探し回っている。「医者はどこだ、医者!彼女を助けてくれ!」彼の目には、私ではなく、あの見知らぬ女しか映っていない。
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