兄・白川雅也(しらかわ まさや)が図書館で大学受験の勉強をしていた時、銃で誤って撃たれ、血が止まらなくなった。通りかかった私・白川心未(しらかわ ここみ)は見て見ぬふりをし、足早にその場を去った。前世で私がそれを見て、急いで病院へ運んだからだ。兄は頭部を負傷し、それが原因で脳内出血を起こし、緊急手術が必要になった。私はすぐさま、市内で最も腕利きの脳神経外科医である母・白川朋美(しらかわ ともみ)に電話をかけ、一刻も早く病院に来てくれるよう懇願した。しかし母は、義妹・白川結月(しらかわ ゆずき)と海に行って私を置いていったことへの嫉妬から作り話をしていると思い込み、頑として戻ろうとしなかった。結局、父・白川宗介(しらかわ そうすけ)や家族が病院に駆けつけた時には、兄はすでに手遅れで亡くなっていた。家族は皆、兄の死は私のせいだと責めた。私がわざと母に誤解を与え、兄の治療の機会を逃させたのだと。遠方から駆けつけた母は、感情を抑えきれず、私を階段から突き落とし、血を流して死んでいく私を見つめていた。再び目を開けると、私は兄が図書館で銃殺されたその日に戻っていた。……私は図書館の入り口に数秒間立ち尽くした。あの目に突き刺さるような赤色が、目の前で爆発した。それはまるで、前世で母が私を階段から突き落とした時、後頭部を地面に打ちつけて流れ出た血のようだった。私は頭の中で、無数の映像がよみがえってくるのを感じた。病院の廊下の騒がしさ、母の冷たい眼差し、父の怒号、そして私が転落した時の、あの絶望的な無重力感。私はすぐさま踵を返し、反対方向へ必死に走り出した。タクシーを一台呼び止め、飛び乗った。後部座席に座っても、身体はまだ止まらないほど震えていた。結月の両親は地震で兄を助けて亡くなり、結月は孤児になった。両親は彼女に大きな借りがあると思い、結月を引き取った。それ以来、結月は白川家のお姫様として扱われ、私はまるで余計者のように邪魔者扱いされるようになった。いつも私を可愛がってくれた兄でさえ、結月にばかり優しくするようになった。私が何をしても、何を言っても、彼らの目にはすべて間違っているように映った。前世で、私は必死に兄を助けたかったのだと、母が誤解したのだと説明したが、彼らは全く信じなかった。
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