All Chapters of 彼の借りは数えきれない: Chapter 11 - Chapter 12

12 Chapters

第11話

私は頷いた。「そうだったんでしょうね。でも、今の私にはもうどうでもいいことよ」彼は首を横に振った。「違うんだ。あの時はただ、彼女に海外での経験があって、会社をもっと成長させられると思っただけで……まさか、あんなことになるなんて」そこまで言うと、彼は苦しそうに両手で髪をかきむしった。「君の言う通りだ。この十年、俺は少しも成長していなかった。それどころか、君に守られるうちに自分を見失って、彼女の口車に乗せられて……君が手ずから築き上げた桐生グループを、この手で葬ってしまったんだ」私は少し驚いた。まさか、あの出来事にそんな裏があったなんて。でも、今となってはもう関係のないことだ。私が黙っているのを見て、彼は続けた。「君が俺を庇って、十数人のチンピラとやり合った時のこと、覚えてる?」覚えているに決まっている。今、少し体を動かしただけですぐに息が切れるのは、すべてあの事件のせいなのだから。桐生グループがその後、息を吹き返せたのも、あの時得た600万円の賠償金があったからだ。「君が集中治療室に運ばれて、医者から危篤だって三度も宣告されたんだ。あの時、俺がどれだけ怖かったか、君には分からないだろう。君を失うのが怖かった。もう二度と会えなくなるんじゃないかって。あの時、君が俺のすべてだと思った。命懸けで自分を守ってくれた女性なんだ。君が目を覚ましてくれさえすれば、この先一生、何があってもそばを離れないと、心に誓ったんだ」彼の言葉に心を動かされたのか、それとも当時の自分の境遇を思い出したのか。その言葉を聞いて、私は不覚にも涙がこぼれそうになった。そこまで言うと、彼は苦しそうに首を振った。「なのに、どうしてだろう。いつから君への気持ちが分からなくなってしまったのか。本当に愛しているのかさえも……だから、あんなことを」そう言って、彼は顔を上げて私を見つめ、高ぶる感情のままに私の手を掴んだ。「でも、今はもう分かる。俺は君を愛してる。心の底から愛してるんだ。知ってるかい?この数ヶ月、毎日君が会社を行き来するのを見ていたんだ。その度に、駆け寄って謝りたい、もう一度やり直してほしいって、そう思ってた。でも、十年も俺を愛してくれた君を、あれだけ傷つけておいて、どの面下げて許してくれなんて言えるはずがないって、分かってた
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第12話

彰吾番外編彼女は行ってしまった。十年間俺を愛し、命がけで守ってくれた女性。そんな彼女を、俺は完全に失ってしまった。この馴染みのラーメン屋で、彼女は笑いながら言ったものだ。一生俺の守護神として、喜んでそばにいてくれる、と。そんな彼女がそばにいてくれるなら、他に何もいらない。当時の俺も、そう思っていた。でも今になって気づいたんだ。一生というのはあまりにも長くて、たった十年で、俺は自分の手で彼女を失ってしまったことに。「はぁ……てっきり、お二人は……」食器を片付けに来た女将さんが、ため息を漏らした。その言葉に、俺の堪忍袋の緒が切れた。涙がぽろぽろとこぼれ落ち、俺たちの十年を見守ってきてくれた彼女の顔を、嗚咽しながら見つめた。「おばさん、俺……本当に彼女とやり直したいんだ。どうして、チャンスをくれないんだろう……」女将さんはどうしようもないといった風に首を横に振った。「馬鹿だねぇ。あんたたちに何があったかは知らないけど、彼女の言う通りだよ。やり直せることもあるけど、一度逃したら二度と手に入らないものや人もいるんだよ」失って初めてその大切さに気づく――俺は、その言葉の意味をようやく痛感した。それからの日々、俺はいつも、どこにいても彼女を思い出していた。道を歩けば、昔二人で出かけた時にいつも俺の手を握ってくれたことを思い出す。食事をしようとすれば、つい昔二人で通った店に入ってしまう。料理はあの頃と同じなのに、隣で一緒に食べてくれる彼女がいないだけで、もうあの頃の味はしなかった。わけもなく夜中に目を覚ますと、枕が半分濡れていることがよくあった。きっと夢の中で彼女に会って、知らず知らずのうちに涙を流していたのだろう。なぜあんなに馬鹿だったんだろうと、何度も考えた。俺のために命を張り、十年も守ってくれた女性を、どうして大切にしなかったんだろう、と。そして、香織のやつの戯言を信じ、何を血迷ったか一緒になって彼女を追い出してしまった自分の愚かさを責めた。そうでなければ、彼女が絶望して去ることもなく、俺たちはいつか結ばれる日が来たかもしれないのに。彼女は、前を向いて自分の幸せを見つけてと言った。でも、彼女と離れて初めて気づいたんだ。俺の幸せは、彼女そのものだったと。だから、俺はこっそりと彼女を見守り続けるしかなかっ
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