Short
彼の借りは数えきれない

彼の借りは数えきれない

By:  風早Kumpleto
Language: Japanese
goodnovel4goodnovel
12Mga Kabanata
9.2Kviews
Basahin
Idagdag sa library

Share:  

Iulat
Buod
katalogo
I-scan ang code para mabasa sa App

私は桐生彰吾(きりゅう しょうご)の陰の立役者として、十年もの間、彼を支え続けてきた。倒産寸前だった会社を、上場するまでに引き上げたのは、私だ。 ナスダックでの上場の鐘を鳴らす前夜、私が彼にプロポーズしようと準備していた、まさにその時。彼は、幼馴染の女性を私の後任として突然連れてきた。 彼は言った。「十年間の働きには感謝している。しかし、会社は新たな旅路を始めるにあたり、もはや君は相応しくない」と。 目の前にいるのは、丸十年愛し、全てを捧げてきた男。その彼が、キャッシュカード一枚で私を追い払おうとしている。 私は、氷の洞窟に突き落とされたかのようだった。 「十年もの心血を注いできたけれど、結局、踏みにじられるだけだったのね」 しかし、彼は根本的に現実を理解していなかった。 私が辞任して去れば、彼の会社も、彼に対する私の愛のように、跡形もなく消え去るということを……

view more

Kabanata 1

第1話

会議室には役員たちが勢揃いし、静寂に包まれていた。

長年、私・夏川結菜(なつかわ ゆいな)と共に戦ってきた同僚たちの顔には、隠しきれない憤りと同情が浮かんでいる。会議室に足を踏み入れたばかりの私は、その光景に思わず足を止め、無意識に会議テーブルの上座に座る彰吾に視線を向けた。

次の瞬間、私の瞳孔が激しく収縮した。

「彰吾、こちらは?」

私は眉をひそめ、会議テーブルの上座、彼の隣に座る女性を指さした。

本来、その席に座るべきは、私のはずだった。

十年前、桐生彰吾(きりゅう しょうご)の父が突然亡くなり、彼に残されたのは、莫大な負債を抱え、風前の灯火となった会社だけだった。

密かに想いを寄せていた彼にもっと近づきたくて、私は海外での高給な仕事を捨て、迷うことなく彼の元へと馳せ参じた。

当時、会社は多額の負債を抱え、社員は皆、逃げ出してしまった。私が、彼にとって唯一の従業員だった。

秘書として、運転手として、コピーライターとして……会社のすべての業務をこなし、時には彼の身の回りの世話まで焼いた。

言ってみれば、私がいなければ、今日の桐生グループは存在しない。ましてや、今のように輝かしい彰吾もあり得なかった。

今や会社は上場を目前に控え、私も上場記念日に彼へプロポーズをしようと心に決めていた。それなのに、今、彼の隣には見知らぬ女がいて、本来なら私のものだったはずの席に座っている。

一体、どういうこと?

私の言葉が落ちると、会議室にいた十数人の視線が一斉に彰吾へと注がれ、雰囲気はことさらに重く、張り詰めた。

彰吾は冷たい顔で、私の視線を避け、何でもないことのように言った。

「結菜、こちらは我が社の新しい副社長、水瀬香織(みなせ かおり)だ。

会議が終わったら、彼女を人事部に連れて行って、入社手続きを済ませてくれ。オフィスなんだが、悪いけど君の部屋を彼女に明け渡してほしい。その方が、俺の部屋から近くて、仕事の連携が取りやすいからな」

私はその場に立ち尽くし、目の前が真っ暗になるような感覚に襲われた。

副社長、しかも、私のオフィスを彼女に譲れ、と。

私は、全社員が逃げ出した時から彼に付き従ってきた。表向きはマーケティング部長だったけれど、実質的にはずっと副社長の仕事をこなしてきた。十年もの間、心血を注ぎ、倒産寸前だった会社を、もうすぐ上場するというところまで導いてきたのだ。

それなのに、正式に副社長に任命されたことは一度もなかった。その席は、ずっと空席のままだった。この肝心な時期に、突然、副社長を天下りさせて、その上、私のオフィスまで明け渡せと言うなんて。じゃあ、私の立場は一体何?

百歩譲って、副社長という肩書きはどうでもいい。でも、彼は分かっているはずだ。この十年、私がどれほど彼を愛してきたか。そして、その愛こそが、今日の桐生グループを築き上げた原動力だったということを。

それなのに、何の相談もなしにこんな仕打ちをするなんて、私のことを何だと思っているの?使い捨ての雑巾?それとも、彼の心の中では、私に地位などひとかけらもなかったということ?

十年間の献身を思い出し、私は諦めきれない気持ち、あるいは、一縷の望みを抱いて、静かに尋ねた。

「理由を、聞かせてもらえるかしら?」

そう言いながら、私は彰吾の目を真っ直ぐに見つめた。会社の役職はどうでもいい。でも、彼の心の中での私の立ち位置だけは、どうでもよくなんてない。

やましい気持ちがあったからか、あるいは罪悪感からか、彼は私と視線を合わせようとせず、核心を避けて言った。

「会社はもうすぐ上場する。より大きな計画、より広大な未来が待っている。副社長というポジションには、香織の方が、より相応しいんだ」

その瞬間、私の心は、まるで氷の穴に落ちたかのようだった。

冷たい。冷たい。息もできないほどに、冷え切っていく。

Palawakin
Susunod na Kabanata
I-download

Pinakabagong kabanata

Higit pang Kabanata
Walang Komento
12 Kabanata
Galugarin at basahin ang magagandang nobela
Libreng basahin ang magagandang nobela sa GoodNovel app. I-download ang mga librong gusto mo at basahin kahit saan at anumang oras.
Libreng basahin ang mga aklat sa app
I-scan ang code para mabasa sa App
DMCA.com Protection Status