セレナ・ウィルソン。 それが私の名前だ。 ウィルソン公爵はトリス国四代公爵家の一つとなり、二番目に歴史が古い家だ。 そんな家に私は生をうけた。 容姿は父に似て赤い瞳を持ち、髪は目の色より赤みが少し薄く、癖毛な所がよく似ている。 しかし反対に母には似ているところがないと感じる。 昔は【娘は父に似るのだから気にするな】と両親に言われた。 しかし3歳年下の弟は、母によく似ているが、父にも似ているところがあると私は思っている。 私にとって両親は尊敬の対象だ。 父は王宮で仕事をしつつ、広い領地を管理している。 夜遅くまで仕事をしているなんてよくある事だった。 そんな父を母は精神面でずっと支えていた。 休憩を取らずに働く父に無理矢理休憩を取らせるのが母の役割で、父は母の言う事は比較的聞く。 私は二人が大好きだった……いや…今でも大好きですわ…。 でも私にはそれを思う事も、ましてや言う事なんておこがましい… だって… だって私は… …… 母の本当の子供ではないのですから…。 だけどそんな私を母は本当に大切に育ててくれた。 弟を身籠り自身の体調が優れない時でも、私が熱を出して寝込んでいる隣にいつもいてくれた。 眠れない時によく歌を聞かせてくれた… ――私にはそんな資格がないのに… 母は私を愛してくれた。 ◆◆◆ ある日私は弟と庭でお菓子を一緒に食べようと、厨房に自ら足を運んだ。 ただ、厨房にまさか私がくるとは思わなかったのか、使用人達が数名で話し込んでいた。 そこで私が声をかければ今でも知らなかったことだと思う… だけど私は自身の名前が聞こえてしまい、好奇心からその場に止まってしまった。 その内容は、幼い私に衝撃を与えるほどだった…なにせ自分の出自についてだったのだから。 母は長年子供ができずにいた。 貴族にとって跡継ぎを産み育てるというのは義務である。 もちろん生粋の貴族である母もそれは認識していた。 だからだろう…中々子供ができない母は少しずつ自責の念に押しつぶされていった…。 周りからも子供の事を急かす者もいれば、失礼な事に不仲説を社交界に流した者もいた。 もちろんその者に関しては父は早急に対処し、噂はすぐに消えたのだが… しかし母はだんだん塞ぎ込むように
Last Updated : 2025-10-02 Read more