離婚届を握りしめ、私は法律事務所へ向かう。この四年間――ソフィア・モレッティとして、街で最も強大なマフィア一族の後継者ジェームズ・モレッティの妻として過ごした四年間は、今日終わる。中に入っても、担当の弁護士は書類から視線を上げようともしなかった。「離婚の手続き、お願いします」書類を机に置いて伝えると、弁護士はやっと私を見上げた。乱れたポニテに色あせたジーンズ、リュックは肩にかけたまま。彼の表情がこわばった。「すみません、離婚ってのはな、気まぐれで申し込むもんじゃないんですよ」彼がまともに取り合わないのも無理はなかった。私は確かにうっかり違う事務所に迷い込んだ女子大生のように見えた。四年も人妻になっていた者には、とても似合わない姿だった。だが、それも想定内だった。「どうか判子を押してください。夫のサインは問題ありません」と、私は冷静に言った。……モレッティ家に戻ると、不自然なほど静かだった。ゲートで立っている警備員も、私が通っても目もくれなかった――ジェームズの世界では、私はもはや見えない存在なのだ。私はまっすぐジェームズの書斎へ向かった。ドアは少し開いていて、中から笑い声が聞こえた。そして、ある香りがした。トリュフの香りだった。ジェームズは家中に匂いがこもるのを嫌うと言っていた。ニンニクも魚も、匂いの残るものは一切駄目だと。だが今、部屋には上品な白トリュフの香りが濃厚に漂っていた。これは、本命の者だけが楽しめる特権だ。ドアを押して中へ。そこには私の夫、ジェームズ・モレッティがいた。その机にくつろいでいる姿は、私の前では見せないものだった。その横には幼なじみのヴィッキー・ロッシが寄り添っている。彼女が離婚してこの街に戻ってきたのはつい最近のことだった。彼女はトリュフをたっぷりのせたパンを彼に食べさせていて、その指が微妙に長く触れた。ジェームズは私に気づいて、その笑顔が一瞬で消えた。「ソフィア、早いな」って冷たい声で。ヴィッキーが振り向くと、赤い唇をほころばせた。「あら、ソフィア!ちょうどおやつを食べていたところなの。二人分しかないんだけど、よかったら…」「結構です」ピカピカに光るマホガニーの机に書類を滑り込ませると、張り詰めた空気の中、紙の音が不自然に大きく響いた。ジェームズはウイスキ
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