「まずは『助けてください』とだけ投稿して」 僕は彼女に言われた通りにスマホに打ち込んでいく。 手先が冷たい。僕は冷え性だから。 男性の冷え性はあまりメディアに取り上げられないけど、一定数はいると僕は感じている。 少数派への配慮はされない世の中だから、諦めるしかない。 ソファーに二人で座り、僕はそこで指示を受けている。 水色のソファーは、やはり座ると落ち着く。大きいので二人で座ることもできる。 いきなりそんなことを書き出されたらビックリするだろうと僕は内心申し訳なくなった。どうしたの?大丈夫?何かあった? 次々にネット上で返事が返ってくる。 僕は少しホッとする。 いつものように優しい人々の声が聞けたから。「次に『今からある住所を書くのでここに来てください。理由はまだ言えません。信頼出来るのはあなた方しかいません。僕はそこにいるので声をかけてください』と投稿して」 彼女は感情を込めることなく、淡々と話をする。 感情のない人形のような真似をよくできるなと驚いている。 彼女の意図がいまだにわからない。えっ、マジでヤバいやつ?どうする?警察呼んだ方がよくない?むしろここに個人情報載せちゃダメあえて載せるなんて何かあるかも悪いこと企んでるとか?確かにそれはありえるかも事件性あり?怖い ネット上はすごい勢いで話が変わっていく。 炎上しそうな勢いでどんどんコメントが増えていく。 さっきとは少し違う反応が返ってきている。 なんだかおかしい。 どうしてそういう風にとらえるのだろう。 僕の投稿は何かおかしかっただろうか。 僕にはそれがわからない。「律、今からさっきの住所の場所に行くよ。律のことを本当に心配してくれてる人がいれば、駆けつけてくれるはずだよね?」 彼女は立ち上がり、すぐに外に出ていった。「わかった」 僕は急いで上着を羽織ってついていった。 僕はコメントはできなかったけど、心配してくれている人はいると信じていた。 僕の心をずっと支えてくれていたSNSなんだから。 辛い時はいつも励ましてくれた。 そこには目には見えないけれど、確かに信じられるものがあった。 信頼できる他人がいた。 僕の家から近くの公園だったので、その場所にはすぐに着いた。 遊具も少なく、活気がない。 僕たちは唯一ある古びた
Last Updated : 2025-10-21 Read more