意識を取り戻したとき、鷹取雅史は、自分がどこにいるのか分からなかった。 耳に聞こえる、規則的なモーターの音。 鼻孔に香る、清潔な消毒薬の香り。 だが、それらを確かめるために目を開いているはずなのに──。──なにも……見えない? 慌てふためき、焦りながら自身の顔に触れて、そこに包帯があることに気づく。 鷹取は、必死に記憶を手繰った。──そうだ、爆発の煽りを受けた……。 鷹取は、爆発物処理班に席を置く、エキスパートだ。 急報を受けて現場に赴き、タイマー型の爆発物の処理を行った。 だが、それは一つの爆弾の作動を止めると、連携している別の爆弾が爆発する特殊な仕様をしていた。 気づかず、処理を行ったために、起爆装置が解除された瞬間、建物内の別の場所で爆発が起きたのだ。 響く爆音。 咄嗟に腕を上げて頭を──顔をかばったように思うが……。「痛みはあるかい?」 声を掛けられ、そちらを向いた。 が、視界は真っ暗なままだ。「真鍋?」「そうだ、僕だ。痛みは?」 相棒の声に、どこかほっとした。 暗闇の中で、唯一の繋がりがそこにあるようで、心が少しだけ軽くなった。「……そう……だな、頭が痛むし……、背中も痛い……」「そうか。耐えられないほどなら、緒形先生に言って、痛み止めを増やすように頼むが……?」「いや……、我慢できないほどじゃないな。それより、目が見えない。どうなってる?」「包帯をしているからだろう。ちょっと待っていてくれ。君の意識が戻ったと、緒形先生に伝えてくる」 真鍋が離れていく気配に、鷹取は一抹の不安のようなものを感じた。
Terakhir Diperbarui : 2025-10-30 Baca selengkapnya