私の誕生日。その日に婚約者から贈られたのは、スーパーのポイントで交換したという、薄っぺらなゴム手袋だった。その同じ夜、彼はオークション会場で、初恋の女のために一億円の値がつく宝石を競り落とそうとしていたらしい。当然、私は怒った。けれど彼は言った。「俺の金で生活させてやってるんだ。家事くらい完璧にこなして当然だろ?これは結婚前、お前が俺の妻にふさわしいかどうかの最後の試練だったんだぞ。ああ、本当にがっかりだよ」あまりの言い草に、私の方から別れを叩きつけてやった。彼は待ってましたとばかりに、その足で初恋の女にプロポーズしたそうだ。それから五年、私たちは、眩しい太陽が照りつけるリゾートアイランドで、再会を果たした。……国内最大と謳われるプライベートリゾートアイランド。タラップから現れたのは、一組の華やかな男女。オートクチュールのマーメイドドレスを完璧に着こなした堀川志津香(ほりかわ しずか)の腕を取り、宮根幸樹(みやね こうき)がエスコートする。その姿は、たちまち周囲の視線を釘付けにした。「これはこれは、宮根社長。あなたも今回のチャリティーディナーに?会社を継いでわずか五年で、競合を次々と打ち負かしたとか。まさしく若き成功者ですな」集まったゲストの一人にそう声をかけられ、幸樹は余裕の笑みを返す。「チャリティーなど建前でしょう。皆さんのお目当ては、『例の投資家』……違いますか?」一同が、その言葉を肯定するように小さく頷く。今回のチャリティーパーティーの主催者は、一人の大物投資家だったから。別の誰かが、今度は志津香に露骨な賛辞を送る。「こちらが噂の……いえ、宮根夫人でいらっしゃいますか?実にお美しい。宮根社長もさぞお幸せでしょう」志津香はこれみよがしに幸樹の腕に絡みつき、口元を隠してクスクスと笑った。「まあ、まだ『夫人』ではないんですの。今回のプロジェクトが成功したら式を挙げると言ってくれたんですよ。しかも、それはもう盛大な結婚式ですわ」その言葉に、幸樹の目に一瞬、暗い影がよぎる。だが、彼はすぐに完璧な笑顔を貼り付けた。「所詮は紙切れ一枚のことですから。お互いの心に、確かな絆さえあれば十分ですよ」そのセリフに、私は少し驚いた。五年前、私と別れた幸樹は、即座に志津香へプロポーズしたはずだ。翌日にはメディアが大々的に
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