文雄と司が仲違いしようが知ったことではないが、表社会を散々掻き回した挙句、今度は裏社会まで巻き込んで荒らすつもりらしい。「如月社長よ。俺たち善信会なんて、あんたたち雲の上の連中からすりゃ、目障りなだけの小悪党だろ。俺たちのことなんか、取るに足らない存在だ」竜海は苦笑いしながら言った。司は少しの間沈黙し、やがてゆっくりと立ち上がった。「善信さんがそこまで言うなら、これ以上無理強いはしないでおこう」竜海はホッと胸を撫で下ろした。「お見送りしやす」竜海は司を店の外まで見送り、ペコペコと頭を下げながら過剰なまでにへりくだった態度をとった。これでは司も、彼に難癖をつけて絡む理由が見つからない。司は薄く笑みを浮かべ、迎えの車が到着するとそのまま乗り込んだ。「出せ」車が発進すると、助手席の早坂秘書が後ろを振り返った。「社長。善信竜海ですが、息子と娘それぞれ一人がおりました。しかし二年前に息子が敵対組織に雲上湾へ沈められまして、今は娘が一人残るのみです。息子の事件の後、竜海は復讐の鬼と化し、立て続けにいくつもの弱小組織を潰しましたが、その過程で善信会もかなりのダメージを受けました。息子を失った痛手のせいか、あるいは年を取って丸くなったのか、それ以降、善信会は抗争を避けてシマを縮小させています。西月商会からの度重なる挑発にも、ひたすら耐え忍んでいる状態です」司は鼻で笑った。「だから言っただろう、善信会はすでに首の皮一枚だとな。昔のような戦闘力はもう残っていない」「では、なぜわざわざ善信会を?」「腐っても鯛だ。その辺の雑魚組織どもよりはよっぽど使える」ただ、その「鯛」には覇気が残っていなかったことは、司にとっても少し期待外れではあった。その闘争心をどうやって再び呼び覚まそうか……司がそう思案していたまさにその時、竜海から着信が入った。「如月社長!む、娘が攫われやがった!」司は一瞬目を丸くし、前席の早坂秘書を見た。早坂秘書はすぐに意図を察し、運転手に飛夢へ引き返すよう命じた。十分後、彼らは再び先ほどの個室で向かい合っていた。修羅場を潜り抜けてきた竜海は必死に冷静さを保とうとしていたが、小刻みに震える手が彼の激しい動揺を物語っていた。「間違いねえ……西月商会のクソ野郎どもだ!」竜海はギリッと歯を食い
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