あの後、時哉たち父子三人から何の音沙汰もないまま数日が過ぎ、梨央の首都での第二号店がオープンした。三人は開店祝いの花を贈った。梨央が目が回るほど忙しく立ち働き、小さな勇人も客の応対を手際よくこなしているのが見えた。三人も店に入り、手伝いを申し出たが、梨央に追い出されてしまった。挫折感を味わっていると、長身で冷ややかな雰囲気をまとった一人の男が彼らとすれ違って店に入っていった。時哉は無意識のうちに眉をひそめ、振り返った。「梨央」男が声をかけた。その冷たい声にはどこか優しさが含まれていた。梨央は無意識に顔を上げ、その目に笑みが宿った。「あなたも来てくれたのね」桐山蓮也(きりやま れんや)は、自然に梨央の隣に立ち、彼女がやっていた商品の整理作業を引き継いだ。二人は視線を交わして微笑み合い、梨央は客の応対へと向かった。勇人が蓮也の姿を見つけ、嬉しそうに駆け寄ると、彼の足に抱きついて甘えた。「蓮也さん!会いたかったよ!」三人の間の雰囲気は温かく自然で、まるで仲睦まじい家族そのものだった。目の前の光景は時哉を深く打ちのめした。彼は息を呑み、拳を無意識のうちに固く握りしめた。悠樹と拓海も目を赤くし、拳を握りしめて店に飛び込もうとしたが、時哉がいち早く、それを制止した。三人は車の中に残り、その場から離れなかった。蓮也が加わったことで、梨央はずいぶん楽になったようだった。勇人も手が空き、彼女の周りをうろついていた。勇人は忙しそうに働く蓮也の姿を見つめ、梨央の手を引いてしゃがませると、彼女の耳元に顔を寄せ、いっちょまえな口ぶりでささやいた。「お母さん、いつになったら蓮也さんの気持ちに応えるの?早く結婚すればいいのに」梨央は笑って彼の鼻先をつまんだ。答えはしなかったが、蓮也を見つめるその目には優しさがあふれていた。今日は梨央の誕生日だった。蓮也は二人きりでロマンチックなディナーができるよう、フレンチレストランの個室をあらかじめ押さえておいた。勇人はすでに梨央の実家へ送られていた。個室の中、二人は仕事や日々のことを語り合い、時折、視線を合わせては微笑み合った。その雰囲気は自然で甘いものだった。蓮也はナイフとフォークを置くと、美しいギフトボックスを取り出し、ダイヤモンドのネックレスを取り出した。「梨央。今日で僕た
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