財務大臣ボルマン子爵が亡くなった。そのニュースが王都に広がり、民は暴動による死傷者ではないと知って胸を撫で下ろす。もし貴族が騒動に巻き込まれて亡くなったなら、誰かが罪を背負うことになる。家族にまで咎が及ぶ可能性もあったのだ。 慎重に行動するべきだ。民の中で、静かにその意識は共有された。「国王陛下、申し訳ないが……働いていただきたい」 いろいろ悩んだ結果、バーレ伯爵は一番簡単で確実な解決方法を選んだ。人手が足りないなら、監禁中の有能な方々に手を貸してもらえばいい。逃げる様子はないし、下手に閉じ込めると今度は暗殺される。状況が混沌としすぎて、手に負えないのが正直な感想だった。「承知した」 グスタフ王は本来、蒙昧愚鈍な王ではない。忙しさに押されて確認を怠ったが、減税や施策を次々と打ち出し、宰相とともに国を動かしてきた。暗殺犯の捜索に専念したいと言われれば、それ以外の業務を引き受ける。 本来、騎士団の仕事に国の運営は含まれないのだから。バーレ伯爵に能力が足りないのではなく、知識と能力、適性の観点から適材適所の状態に戻るだけだ。「ヤン、過去の資料を遡るぞ! 我らの施策を捻じ曲げた輩をあぶり出せ」「かしこまりました。聞きましたか? 各部署の書類を集めてください」 グスタフ王の号令で、宰相ヤンが動き出す。各大臣達も部下に命令を出した。一年ずつ遡り、どこで中抜きが始まったかを探る。それと同時に、晩餐会が行われる食堂を執務室として利用した。 財務大臣ボルマン子爵の暗殺があったのだ。全員が同じ部屋に集まり、飲食も監視し合うのが安全への鍵となる。今までの執務室は個々に与えられていたため、騎士同伴で書類や道具を取りに向かった。その間に食堂のテーブルなどの配置が変更される。 使いやすいよう長テーブルを作業用に使い、長時間の机仕事に合わせて高さを調整した。そのうえで椅子も交換される。他の部屋から運ばれたソファーは休憩用に、棚がないため書類を積むテーブルも持ち込まれた。 着々と準備が進む中、大臣達が部下と書類を伴って戻る。すぐさま確認作業に取り掛かった。監視というより護衛に兵士を
Huling Na-update : 2025-11-11 Magbasa pa