Lahat ng Kabanata ng わたくしは何も存じません: Kabanata 21 - Kabanata 26

26 Kabanata

21.適材適所、使える人材は余らせない

 財務大臣ボルマン子爵が亡くなった。そのニュースが王都に広がり、民は暴動による死傷者ではないと知って胸を撫で下ろす。もし貴族が騒動に巻き込まれて亡くなったなら、誰かが罪を背負うことになる。家族にまで咎が及ぶ可能性もあったのだ。 慎重に行動するべきだ。民の中で、静かにその意識は共有された。「国王陛下、申し訳ないが……働いていただきたい」 いろいろ悩んだ結果、バーレ伯爵は一番簡単で確実な解決方法を選んだ。人手が足りないなら、監禁中の有能な方々に手を貸してもらえばいい。逃げる様子はないし、下手に閉じ込めると今度は暗殺される。状況が混沌としすぎて、手に負えないのが正直な感想だった。「承知した」 グスタフ王は本来、蒙昧愚鈍な王ではない。忙しさに押されて確認を怠ったが、減税や施策を次々と打ち出し、宰相とともに国を動かしてきた。暗殺犯の捜索に専念したいと言われれば、それ以外の業務を引き受ける。 本来、騎士団の仕事に国の運営は含まれないのだから。バーレ伯爵に能力が足りないのではなく、知識と能力、適性の観点から適材適所の状態に戻るだけだ。「ヤン、過去の資料を遡るぞ! 我らの施策を捻じ曲げた輩をあぶり出せ」「かしこまりました。聞きましたか? 各部署の書類を集めてください」 グスタフ王の号令で、宰相ヤンが動き出す。各大臣達も部下に命令を出した。一年ずつ遡り、どこで中抜きが始まったかを探る。それと同時に、晩餐会が行われる食堂を執務室として利用した。 財務大臣ボルマン子爵の暗殺があったのだ。全員が同じ部屋に集まり、飲食も監視し合うのが安全への鍵となる。今までの執務室は個々に与えられていたため、騎士同伴で書類や道具を取りに向かった。その間に食堂のテーブルなどの配置が変更される。 使いやすいよう長テーブルを作業用に使い、長時間の机仕事に合わせて高さを調整した。そのうえで椅子も交換される。他の部屋から運ばれたソファーは休憩用に、棚がないため書類を積むテーブルも持ち込まれた。 着々と準備が進む中、大臣達が部下と書類を伴って戻る。すぐさま確認作業に取り掛かった。監視というより護衛に兵士を
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22.変わっていないことが嬉しい

 叔父や騎士団一行が「帰りたい」と叫んでいた頃、何も知らないロイスナー公爵家は穏やかな日常を取り戻していた。 王都から帰った翌日は宣言通り、お昼過ぎまでしっかりと休む予定だ。楽な寝台馬車でも、街道で揺られる移動は体力を消耗する。同行した侍女達も二日間の休暇を与えられた。王都邸から本邸へ戻れば、侍女の手は足りている。交代で休暇を取っても、支障なかった。 家令アードルフは、公爵夫人ミヒャエラから宝飾品を受け取る。二人で開いて中を確認し、頷き合って専用の部屋へ片づけられた。欠品がないか確認する作業は、信頼の上で成り立つ。万が一の紛失や盗難があった際、事前の作業一つで使用人を疑わずに済むのだ。 普段使いする装飾品は、各自の部屋へ運ばれる。ガブリエルの部屋もそのまま残されていた。王太子の婚約者に決まってから、一度も戻れなかった部屋。懐かしさに「うわぁ、久しぶりだわ。変わってない」とガブリエルの目が輝く。 数年のことなのに、高さが合わなくなった机や椅子が擽ったい。「セシリオに言って、手配してもらいましょう」 ミヒャエラの提案に、ガブリエルは素直に頷いた。新しい家具ではなく、この家具を手直ししてほしいと伝える。以前は特に思い入れのなかった机も、不思議と大切に思えた。「あなたがそうしたいなら構わないわ」 受け入れたミヒャエラに、ガブリエルは満面の笑みで応える。隣にある自室で着替えたラファエルが合流し、笑いながらベッドに飛び込んだ。到着した日の夜は、家族だけで食事をした。「ずっと、こうしたかったの」「ええ、知っていたわ。ごめんなさいね」 王太子妃教育で、毎日大変だった。年下のラファエルに合わせて、母ミヒャエラは食事を済ませてしまう。遅くに帰ってきた娘と、父ヨーゼフが食卓を囲んだ。従兄のケヴィンが同席することもあったが、家族四人が揃うことはない。 ガブリエルはそれが悲しかった。好きでもない相手、それも自分を嫌って意地悪をする人と婚約している事実も。将来そんな相手と暮らすことになる現実も。すべてが嫌でたまらない。訴えてどうにかなる問題ではないと知っていたから、我慢していただけ。
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23.あの子の耳に入れないでくれ

 アードルフから事前に聞いていたこともあり、主だった使用人達は『前回』を知っていた。記憶を持つ者は全体に少なく、覚えている内容も処刑のことは抜けている。こちらでの日常が突然途切れ、女神の言葉を聞いて知った。その後、新しく戻った人生を歩み始めた感じだろうか。 状況がわからぬまでも、ケヴィンやカールも『前回』の存在は知っていた。あの時期、二人は領地にいた。公爵家と父の話を聞き、馬を駆っていたところで記憶が途切れている。おそらく間に合わないまま、途中で女神が介入したのだろう。そう結論付けた。「つまり、記憶の有無だけでなく……内容も個々に違うのか」 ヨーゼフが唸るように呟く。アードルフは、判明している事実を手帳に書き記した。いずれ、彼の手帳が役立つ日が来る。今はまだ穴だらけのパズルも、すべてのピースが埋まる日を信じるしかなかった。女神の想いや考えを、人が推し量ること自体が不遜なのだから。「まず承知しておいてもらいたい。ガブリエルだけが記憶を持たない。まだ話す時期ではないが、親である私かミヒャエラから説明するつもりだ。それまであの子の耳に入れないでくれ」「承知いたしました」 代表してアードルフが答える。『前回』に関する記憶の共有をした使用人達の幾人かが、ここで涙を零した。本邸の侍女頭アブリルもその一人だ。孫のように愛し見守るお嬢様が、罪人扱いされて処刑された。さぞ怖かっただろうと泣いたのは、つい数日前だ。アブリルには、やり直した記憶が残っていた。 罪状や処刑についての詳しい記憶はなく、屋敷の廊下を歩いていて立ち止まったところでやり直しとなった。女神の言葉は届いている。だから大事なお嬢様が恐ろしい目に遭ったことは承知していた。その記憶を持っていないことは、お嬢様への恩情なのではないか。アブリルはそう捉えた。 女神アルティナ様は、お嬢様を助けて下さった。あの愛らしい笑顔が曇らないよう、恐ろしい記憶を消したのだ。手を組んで祈りを捧げた。もう一度お嬢様に仕えることができる幸運と、公爵家の皆様が無事であることへの感謝を祈りに込める。王都邸の侍女長イレネも、隣で手を組んで祈っていた。「小公爵様は、記憶をお持ちなのですか?」
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24.王都脱出の荷馬車の後ろも長い列

 がたごとと揺れる馬車は乗り心地が悪い。荷馬車なのだから当然だが、護衛の騎士が気遣う視線を寄越した。ロイスナー公爵家王都邸の執事を務めるブルーノは、今日二回目の休憩を指示した。荷馬車には、王都邸から運び出した様々な品物が載っている。 貴金属類は主の馬車で出発した。残された荷物が、数十台の荷馬車となって連なる。その後ろに、王都を逃げてきた一団がいた。休憩のたびに、ブルーノは馬車や使用人の状況を確認しに回る。騎士の一人が同行した。故障個所や不具合があれば、申告するよう命じていく。 青空は白い雲がいくつか浮かび、それでも雨の降る様子はない。この分なら、領地に入るまで天候は持ちそうだ。あと三日もあれば、領地の端に到達するだろう。そこから先は、路面が改善される。 街道自体は国の管轄でも、実際に管理するのはそれぞれの領主だった。そのため領主の裁量次第で、路面状態が変わる。雨で轍が出来ても放置する領主もいれば、丁寧に舗装して草刈りまで行う領主もいた。その差で、進行速度が大きく変わる。 王都から公爵領までの間に、三人の領主がいた。王都に近い子爵家はきちんと整備をしており、大雨の後に小石を撒くなど対策が成されている。侯爵家と伯爵家は、街道に手を加えることはなかった。ただ領地を横切るだけの道と認識しているらしい。 この街道を整えるだけで、商人の行き来が増えて領地が潤うというのに。主人であるヨーゼフの采配を見て知るブルーノは、やれやれと首を横に振った。王都から離れるほど、道が悪くなっていく。先月の大雨の影響で、轍は深く車輪を取られて滑る状況だった。「こちらの車輪は、もう限界です」 大きな穴に落ちたのか、歪んで木が割れていた。荷馬車の車輪は木製が多く、割れると修復できずに交換となる。後ろに機材や交換用具を積んだ荷馬車がいるため、職人が大急ぎで作業に入った。休憩時間は予定より長くなるだろう。ならば食事を取らせるか。「各自、交代しながら食事を済ませてくれ。次の町は止まらずに通過する」 ブルーノの指示で、侍女がお茶の支度を始める。一般的な旅の食事は、干して乾燥させた肉や魚、野菜を煮るスープとパンのみだ。お茶を配り始めたことで、使用人達も
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25.増え続ける謎に叫びたくなる

 王都の商店が一斉に店じまいを始めた。その連絡は、誰もが予想した話だった。『前回』を知っていれば、王族への不信が先に立つ。国王が寝込んでいたかどうかは、民には関係なかった。無実のロイスナー公爵家が、冤罪で処刑された事実だけが広がっていく。 自分達もいずれ殺されるのでは? そう考えた一部の貴族が領地へ引き揚げ始めた。続いたのは、貴族の庇護を受ける商会だ。数か国を旅する大商会も、他国の支店へ財産や商品を移動させ始めた。「税金の軽減だ。中間で抜かれていた分を、そっくり返すと言え」 商人達を引き留めるための政策を打ち出す。グスタフ王の命令で、宰相ヤンが指示を発した。財務を担当するボルマン子爵が亡くなったことで空いた椅子を、王弟イザークが埋める。計算に強いイザークの参加で、ひとまず政は動き出した。 ほっとしながら、バーレ伯爵アウグストは犯人捜しに乗り出す。毒殺の範囲を調べるため、王宮に残っていた毒見達が残ったスープを確認した。匂いや色で判別できない場合、口に含んで吐き出す方法で作業は進められた。これに関しては専門家が必要な分野だ。「国王陛下を含む、全員のスープから同じ毒が発見されました」 キノコから抽出された毒を濃縮せずに混ぜた。スープ皿に盛られた量の半分も飲めば、致死量に達するとの見解が出る。つまり、あの監禁状態の重鎮すべてを片付けようとした人物がいたのか。ぞっと背筋が寒くなるアウグストだが、副官アンテス子爵ヴィリは冷静だった。「団長、まだ絞れませんね」 顔を突き合わせた騎士からも、様々な意見が出ている。全員を殺そうとした説、一人を狙ったがカモフラージュで全員に盛った説、どの器が誰に届くかわからずすべて混入させた説、かく乱を狙っただけで誰が死んでも構わなかった説。他にも微妙に違う説が並んだ。中には誰も飲まないと踏んだ説もある。「結局、毒を盛った人物の目的は不明のままか」 混乱が深まっただけのようだが、少なくとも人の命を軽視する相手だという覚悟はできた。アウグストは騎士達にさらなる証拠集めを要請する。そこで、思わぬ言葉が聞こえた。「そういえば……客間の備品は基本的に全部同じと聞きましたが、片付けに
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26.騎士団長への仕事禁止令

 毒による暗殺犯の行方だけでも手一杯なのに、さらに便箋が行方不明? 何が書いてあったかもわからない。重要な情報だったら取り返したいが、もし落書きだったら? 家族への遺書だった可能性もあるじゃないか。唸りながらアウグストは、探さない理由を口にする。「わかりました! 団長は少し休んでください。明日の朝まで仕事禁止、いいですね!?」 大きな声で話を遮断され、ヴィリが手を挙げる。合図に応えて、部下の騎士が両脇からアウグストを拘束した。まるで罪人のように連れ出される。状況が理解できず、きょとんとしたまま騎士団長は退場となった。「では私が指揮を執ります。団長への報告は明日のお昼以降にしてください」 ヴィリの一方的な宣言にも、部下達は大きく頷いて了承を示した。というのも、アウグストは元々考えるより先に体が動くタイプだ。こういった頭を使う事件は苦手どころか、天敵だった。どんどん能力が落ちるとわかっている。 さらに悪いことが続き、アウグストが眠れていないらしい。女神のやり直しで記憶を持って戻ったアウグストは、後悔と怒りに苛まれていた。両手両足の自由を奪われて転がり、兄の一家が壊されていくのを見ているしかできない。その怒りは身の裡を焼いた。 どうしてもっと早く動かなかった。無理にでも自分の意見を通せばよかった。今からでも王族を全滅させるべきでは? 民を止めたことも今になれば後悔しかない。苦しめて殺すなら、すぐにでも取り掛かれる。そう思うが、実行すればあの連中と同レベルと気づいて動けなかった。 動きたい本音と留めようとする理性、両方がせめぎ合って混乱の中にいる。目を閉じれば、処刑の光景が浮かぶのだろう。アウグストにとって、あの悪夢はまだ終わっていない。ゆえに、眠ることが出来ずに夜も見回りを買って出る状況だった。「もし動こうとするなら、殴って気絶させなさい。私が許可します」「は、はい」 そこまで切羽詰まった状況だが、本人は体力があるので大丈夫と思っているところがある。息子のどちらか片方が協力してくれたら……ヴィリはそんな思いを抱くが、すぐに自ら否定した。ロイスナー公爵家の守りを崩せない。 王家や国の立て直しなど
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